鶴屋は外無双、一本背負いを決めるもヴァンは背中を譲らず
試合は、鶴屋の組みのプレッシャーのなか、序盤からシングルレッグを切ってバックにも回らせなかったヴァンが攻勢に。鶴屋の見切りはいいが後ろ重心の怖さに欠ける打撃に対し、ヴァンは三日月蹴りを腹に効かせて、外を取ってのジャブ・ストレートの右の打撃で前に。
鶴屋にとっては喧嘩四つで受けたローブローが不運であったが、下がらされたなかでのシングルレッグを頭を下げられ切られたこと、レスリング時代からの得意技である外無双、一本背負いで投げたものの押さえ込めず、極めにも繋げられなかったことで厳しい展開となっていった。

【写真】三日月蹴りのみならず再三のローブローは鶴屋の体力を削った (C)Zuffa LLC/UFC
1Rの外無双は、ヴァンに背中をつけさせたものの、ヴァンは巧みに足を効かせてフックガードから左を差して背中を譲らず立ち上がりに成功。
そして最大のチャンスだった2Rの一本背負いは、袈裟固めから得意のVクロスに繋げられる展開だったが、上半身寄りの鶴屋の押さえに、ケージ際のヴァンは、左足でケージを蹴って一気に内側を向いて首をずらして立ち上がりに。
その際で鶴屋はすぐにバック狙いに移行したが、左腕で差し上げていたヴァンは腰を金網につけながら立ち上がり、鶴屋に足をかけさせずに正対。鶴屋の顔を剥がしてクラッチも組ませずに突き放している。
それでも鶴屋は組み続けることを止めず。3Rのローブロー後にシングルレッグからドライブ。頭を出してヴァンに尻まで着かせて右足まではかけているが、左の小手も強いヴァンは鶴屋のボディロックにも脇を潜らせず、右を差し上げて突き放している。
すでに体力を使っているなか、スタンドでヴァンの前手を触り、必死に右に回り左ストレートを振って、カウンターをもらったものの前に出られたことは今後に繋がる動きだった。また、テイクダウンディフェンスに進化を見せているヴァンを外無双、背負い投げで投げて決定的なチャンスを作ったことは、近年ヴァンと対戦した選手には出来なかった動きだった。
📸ジョシュア・ヴァン🆚鶴屋怜
— UFC Japan (@ufc_jp) March 9, 2025
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それでも、この試合でテイクダウンディフェンス85%を記録したヴァンは鶴屋について、「投げについては驚いてないよ。まだ僕の柔術も見せていない。驚いたのは彼が決して諦めない選手だったということ。それは分かっていたんだけど。同じアジア人選手として誇らしいと思ったよ」と、気持ちを折ることなく、組み続けた姿を称えている。
打撃巧者であるヴァンを相手に大きな被弾をせずに3Rを戦った鶴屋。しかし、レスラーが組むためには立ち合いで圧力をかけることが必須だ。今後、サウスポー構えのスタンドでどう作るか。
そして、鶴屋の強みであるグラップリングでいかに押さえ込んで削り、極めに至るか。今回決めた投げ技も今後、研究されて引き手を簡単には取らせない状況も出て来るだろう。押さえ込まれずバックも取らせない──それはフライ級のストライカーと呼ばれたヴァンの進化でもあった。
「負けたら全て無くなるんじゃないかって怖かった」と吐露した初の敗北の味は苦かったが、心配は杞憂だった。課題は明確だが、そこを積み上げるのが難しいのもMMAだ。6月に23歳になる鶴屋にとって、世界最高峰の舞台で戦いながら進化していく姿に注目だ(※追記 鶴屋に勝利したヴァンは6月28日の『UFC 317』でブランドン・ロイヴァル戦が決定)。




