MMA
インタビュー

【RIZIN】サトシとクレベルが「静岡いわたPR大使」に任命。市長から委嘱状と大使の名刺が手渡される──W王者の原点とは?

2025/01/25 16:01
 大晦日『RIZIN.49』で、ライト級王座4度目の防衛に成功したホベルト・サトシ・ソウザと、フェザー級王座を奪還したクレベル・コイケが、所属するボンサイ柔術がジムを構える静岡県磐田市から、「静岡いわたPR大使」に任命された。24日、草地博昭市長から委嘱状と大使の名刺が手渡された。  地元ゆかりの著名人が市の魅力を発信する同大使において、サトシとクレベルは、柔術アカデミーでの指導と、MMAの試合を戦うことで「スポーツのまちづくり」を掲げる磐田を国内外にPRする。 (C)BullTerrier  18歳で来日し、同市に住むサトシは、今回のPR大使の任命に「父が創設したボンサイ柔術の手伝いをするため、18歳の時に来日してから磐田市に住んでいます。今回の就任をとても嬉しく思っています。私は、仲間や子どもたち、そして磐田市の方々に支えられ、国内外の大会で優勝し、格闘家になることができました。今後も『静岡県磐田市』を世界へと響かせるとともに、磐田のために恩返しができたらと思っています。磐田は格闘家だけでなく、ジュビロ磐田もありスポーツの熱気があります。私もスポーツで子どもたちに夢と勇気を与えたいです」とコメント。  また、来日後、20年間住んでいた磐田を「第二の故郷」と言うクレベルは、大使の委嘱前から同市の市章を縫い付けた柔術衣で入場するなど磐田に深い愛着を持っている。今回のPR大使任命に「スポーツは人生を変えられることを子どもたちに伝えていきたい」と話した。  本誌『ゴング格闘技』NO.336では、サトシとクレベルの対談を掲載。両者の目線で、大晦日の大一番で何が起きていたのかを明かし、今後についても語っている。  そこでサトシは、コロナ禍の2020年横浜大会のメインで一本勝ちした後、リング上にクレベルを上げて、日本のファンに紹介したことについて、「あのときは、こうして二人でベルトを獲っているとは思っていなかったでしょうけど」と問われると、「いいえ、ずっとそこは自信がありました。あのときから、クレベルがフェザー級の誰が相手でも勝てるしチャンピオンになると確信して紹介していました」と疑うことなくクレベルの実力を信じていたという。  一方のクレベルも「出稼ぎから来た自分たちは、ほかの選手と異なり“エピソード・ゼロ”から始まっている。たからこその違う味がある」と険しいルートを登って来た自負をのぞかせていた。  16年前に磐田の工場で、ソウザ兄弟たちとともに働き、夜に柔術を学んでいたクレベル。同い歳のサトシの柔術の強さに憧れ、より強さを得るために、サトシより先にMMAを始めている。  そんな2人の“弟”を、浜松・磐田のボンサイ柔術を通して、道を示してきた長兄マウリシオ・ダイ・ソウザの言葉を、今回本誌から一部、特別に紹介したい。 [nextpage] マウリシオ・ダイ・ソウザ「サトシとクレベルのやり場のないエネルギーが、柔術に昇華された」 サトシの兄ダイが、クレベルと出会ったのは出稼ぎ工場行きのバス。ヤンチャな少年と心優しき弟は、いかに柔術と向き合い、王者となったのか。 ──ダイ先生は、出稼ぎ先の工場へ向かうバスの中でクレベルと一緒だったそうですね。 「あ、その送迎バスを今朝も見ました。“あれで通っていたんだな”と思ったところですよ。一応定刻は早朝6時のバスなのですが、いつもクレベルは6時ちょっと過ぎに現れてバスの一番後ろの席に座るとものすごい大音量でラジオを聴き始めるんですよ(笑)。私は音楽を聞いていたので、イラッときて彼のところまでいってぶちのめしてやろうかと思ったんですけど(笑)。バスでみんながウトウトしているところにクレベルは『みんな、おっはよー!』とか『元気ぃ?』って声をかけまくってて。大音響のラジオとともに。そういう感じでとりたてて話したりしたことはなくて、自分としては内心『いつかコイツを懲らしめてやりたいな』なんて思っていたんですよね(笑)。  いつぞやに、私が柔術を教えていることを聞きつけたクレベルの方からやってきたわけです。突然自分の横に座ってきたから、その時自分は“おっ、コイツ、やる気か? よしブッ飛ばしてやる”と心に決めたんですけど(笑)、彼はおもむろに『柔術を教えてほしいのですが… …』と。当時は自分のジムが無くて武道館を借りて教えていたんですけれど、クレベルが『先生、あなたと練習するには練習料はいくらかかりますか?』と聞いてきたので、『いいよ、君はサービス。お金はいらないよ』と返したんです。とにかくちょっとお灸を据えてやりたいって気持ちがあったから『ぜひ来てくださいね』といって畳の上でフルボッコにしました(笑)。そこから練習を始めるようになって、自分もプロとして普通に教えていて、それからはクレベルは工場行きのバスでいつも私の隣に座るようになって、会話もするようになりました。もうその時は全然問題なくなっていました」 ──そんなクレベル選手がサトシ選手とともにベルトを巻きました。感慨もあるのではないですか。 「何を置いてもね、あの子はひたむきで一生懸命頑張る子なんです。あらゆる敗北があった上で今のあの子はいるし、いつもひたむきに自分の夢や目標を追いかけてきた。これこそがまさしく柔術というスポーツのあるべき形だとあの子を通して実感しています。何か困難な問題を抱えた人々を受け入れ、規律を叩き込む。それは技術的な意味だけではなくて、正しい道へと導いていくこと。それこそが武道、マーシャルアーツの本質であり、それが柔術家としての私の矜持です。クレベルのかつての幼さと乱暴さ──それを決して私は悪とは言いません──そういう何かやり場のない大きなエネルギーが柔術とリンクしたんですよね、それはサムライスピリットのようなものと言ってもいいのかもしれない。  そしてこれはサトシも同じなのです。サトシにとってそのやり場のないエネルギーというのは、父親の喪失による悲しみです。どうしても父のことで感情的になってしまうそのエネルギーを柔術によって昇華する。悲しみそのものをエネルギーにしてはいけません。それを、柔術を通してプラスに働く力へと変換する。それこそが武道だと思います。クレベルはヤンチャだけどとっても心根の善い子だし、自立心があります。そういう子が、柔術とともに精神修練をして自分の持つエネルギーをプラスに換えて、優れた選手へと育ちました。ボンサイファミリーのみんなが、私にマーシャルアーツとはこういうものだと教えてくれています」
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