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2024年12月14日(日本時間15日)米国フロリダ州タンパのアマリーアリーナで開催される『UFC Fight Night: Covington vs. Buckley』(U-NEXT配信)のメインイベントにて、ウェルター級で6位のコルビー・コビントン(米国)が、9位でUFC5連勝中のホアキン・バックリー(米国)と対戦する。
メインカードのマネル・ケイプvs.ブルーノ・シウバに並んでトリを飾るコビントンに本誌がインタビューした。
1年前の前戦でレオン・エドワーズを相手に「1Rで足の3箇所を骨折」しながら5Rを戦い抜いていたコビントンは今回、『UFC310』にスライド出場したイアン・マチャド・ギャリーの代わりに、バックリーの相手を急遽、務めることになった。
2020年10月に、ハイライトリール史上に残るジャンピングソバットでインパ・カサンガネイをKOしたバックリーを相手に、いかにアメリカン“カオス”は戦うか。
公式会見で、7試合連続のヘッドライナー出場となる理由を「ダラスでイベントに参加していたら、『ヒーローが必要だ』と連絡があった。俺はいつでも準備万端であることに誇りを持っている男なんだ。彼らは僕にこのイベントのヘッドライナーを務める機会を与えてくれた。他のファイターたちは文句を言うのが大好きだ。“UFCは自分のプロモーションを何もしてくれない”と。俺は『おい、ならば外に出て自分を宣伝しろよ』と言うだろう。それが僕にできたことだ。自分を宣伝し、自分を売り込み、道なき道を進むことを恐れなかった。いつもみんなに言っているんだけど、友達を作ることじゃなくて、お金を稼ぐことなんだ。そして12月14日、俺はファンのために素晴らしいショーをするつもりだ。アリーナを完売させる。会社に自分の価値を示し、自分が究極の会社人間であることを示し、いつでも頼れる存在であることを示すんだ。急な話でも関係ない」と語っていたコビントン。
“トラッシュトーカー”のNCAAディビジョン1オールアメリカンレスラーは、本誌の取材にも冷静に次戦を語り、日本でのレスリング合宿を通した印象も語ってくれた。
パーティーも行かないし、酒も飲まない。どんな機会にも常に準備できているようにしているんだ
──かつてはATTにいたコヴィントン選手ですが、今回もMMA MASTERSで練習されたのですか。
「知っていると思うけど、俺は前のチームから離れなければいけなかった。彼らは他の選手の面倒を見なければいけなかったからね。シンガポールに行ってからベガスに行って、結構忙しかったんだ。急に決まった俺の試合のトレーニングに時間を割くことがなかなか難しかったし、彼らにも家族がいるから。俺が家族との時間の妨げになる事も避けたかった。彼らを尊敬しているしまだ友達だ。だけど新しいコーチを準備する時だった。
ナイジェリアからアルバートって言うボクシングコーチを雇った。本当に素晴らしいコーチだよ。それからKSW2階級王者のロベルト・ソルディッチを連れてきたんだ。今はONE Championshipにいるから知っているよね。彼は素晴らしい選手で、俺のメインのトレーニングパートナーを務めている。柔術と柔道とレスリングのスパーリングをする。他にも何人かいるんだけど、今はまだ明かせないんだ。ファンへのサプライズでもあるから。ただ俺がトレーニングの方法をこの試合の為に変えた事は事実だ」
──いまは明かせないコーチは打撃のコーチ?
「グラップリングのコーチだ(※チェール・ソネンと後に明かす)。グラップリングは常に俺の真ん中にある。自分がいつも一番中心に置いているものだ。俺はレスリング出身なのを知っているだろう? 人生でずっとレスリングをしてきたんだ。俺がどこから来ているかというのは忘れたくない。まず始めに俺はレスラーなんだ。それからその次に格闘家なんだ。毎試合俺はグラップリングを重要視する、そしてハイプレッシャーをかける事を。グラップリングは常に俺にとって一番重要なんだ。特にバックリーみたいな相手と戦う時はね。本当に爆発力がある選手で良いストライカーでもある。打撃が重い。その重い打撃は当たらないように避けなければいけない。そのうえで相手を疲れさせる。ヤツの筋肉を乳酸で満たすんだ。それからフィニッシュをする」
──イアン・マシャド・ギャリーの代わりに急遽、バックリーと戦う試合がフロリダであることはあなたにとって、意味が大きいでしょうか。
「自分にとってとても大きな意味がある。自分の地元の縄張りを護る事は自分にとってとても光栄なことだ。俺はここから3時間ほどのマイアミに住んでいる。初めて自分の地元で戦うんだ。フロリダにはもう15年住んでいるからもうフロリダが地元だと思っている(※出身はカリフォルニア州)。この大会のメインイベントになれたことは本当に光栄だし、ファンや友人たちがすぐ来れるのはとても嬉しい。世界を横断しなくていいんだから。試合の日に家からチャチャっと来て応援ができる。とても優遇されていると思うよ」
──エドワードとの前回の試合はポイントゲームになり、コヴィントン選手は得意のテイクダウンを取る事に苦労しました。あの試合から修正したことは?
「あの試合から一番大きく学んだのは、あのレベルの試合を怪我をした状態で戦うのはかなりタフだってことだ。最初の30秒で蹴りを出したときに相手のヒジに当たった。その時点で3箇所骨折していたんだ。いつものようにペースも掴めなかったしテイクダウンが出来なかったし、プレッシャーをかける事も出来なかった。俺は痛手を負っていたんだ。真の実力が出せていなかった。
そこから学んだことはもっと“ポケットの内側”に入らないといけないということ。もっと中に入って相手にレスポンスさせないといけない。もう少し上手くやらないといけないし、ああいうキックは控えなければいけない。ヒジやヒザや腰に入ると足がやられるからな。足には沢山の骨があるから。だからそれを理解して次はもっと気を付けると思う。同時にもっとプレッシャーはかけていくつもりだ。そして自分の得意なところにもっていく事」
──その「得意な部分」では、レスリングベースのバックリーとは強みが似ています。相手より優っていると思うところは?
「まず熱い気持ちと勝利への執念だ。ヤツはまだ5Rを戦った事がないと思うし、メインイベントも初めての経験だろう。彼のキャリアの中ではこれまでで一番のスポットライトを浴びる瞬間になるだろうし、俺のような選手と戦うという事も初めてだ。彼は若いしハングリー精神も持っている。勢いがある選手だ。ただそういう状況が続けば続くほど自分に運が向いてくるんだ。とにかくプレッシャーを与えてヤツが生き延びれるかを見てみよう」
──オレゴン州立大学時代に、NCAAディビジョン1のオールアメリカンに選出されたあなたのフォークスタイルレスリングと、ハイスクールレスリングのバックリー選手とのスタイルの違いは?
「コントロール比率かな。レスリングでは“ライディング”と言うんだ。俺はどうライドするかを分かっている。彼はいいテイクダウンを獲ったりはするが、爆発力のあるアスリートだからね。ただヒップのコントロールをするという事は知らないだろうし、(身体に荷重をかけて)ライドすることも出来ないだろう。コントロールポジションから実際どのように落としていくかは分からないはずだ。実際にテイクダウンしてサブミッションの恐怖を与える事については、彼は俺ほど上手くないはずだ。俺は柔術でも黒帯だが、奴は柔術家じゃない。スキルセットはまるで違うと思うよ」
──一方で30歳のバックリーにはパワフルなテイクダウンもあります。MMAは年齢のピークが35歳という説もありますが、36歳を迎えたいまどのように感じていますか。
「まだ絶好調なプライムな状況だと思うよ。実際俺は身体を相当ケアしてきている。規律正しく生活をしているし食事も気をつけている。そんな環境で一年を通して過ごしている。パーティーも行かないし、酒も飲まない。どんな機会にも準備は常にできているようにしているんだ。今回はショートノーティスで試合を受けたが、常に準備はできている。今の俺は最高潮だと思うよ。それを今週末世界に証明させたい」
──頻繁にパーティーや式典に出ているイメージがあったのですが、それはダウンタイムのときで、そこでも飲酒などはしていないのですね。このインタビューであなたはとてもロジカルに話して、ナイスな対応なのですが、なぜファイトウィークではあんなに激しいトラッシュトークをするのでしょう?
「(微笑しながら)このスポーツを見る人達は楽しみたいだろう? このスポーツで金を稼いで成功するには覚悟を決めてPPVを売っていかないといけないんだ。だから仕事なんだよ。ショービジネスだ。だからカメラの前で俺が見せるのは、俺が自分のキャリアで必要だと、そして金を稼げると思う自分を見せるんだ。というのも、格闘技は金を稼げる期間が決して長くない。だから自分の為に充分に金を蓄えて選手を引退した後も充分やっていけるようにしたいんだ」
──そんな役割を、先週のメインイベンターである朝倉海もこなしていました。あの試合をご覧になっていたらどう感じましたか。
「あぁ、試合を見たよ。いつも彼が発揮している100%を出し切れなかったんじゃないかな。彼もまた爆発力のあるアスリートだ。そしてとてもワクワクさせられるファイターだ。RIZINで戦ってた時の海の試合を見るのがすごく好きなんだ。とても素晴らしい選手だし、KOを量産するエキサイティングな選手だ。だから海が試合をするときはいつも見てたよ。もうちょっとレスリングとサブミッションディフェンスを強化できたら、UFCの王者に確実になれる。
俺は日本を本当にリスペクトしているんだ。高校の時にレスリングの交換留学で日本に行ったんだ。日本の生徒達とレスリングしてホストファミリーの家にステイしていた。その時に日本の文化を色々と学んだし、本当に日本人に対して愛とリスペクトを持っているよ。良いレスラーをたくさん輩出しているし、日本の文化は本当に規律と名誉と尊敬に溢れている」
──日本のファンへメッセージを。
「愛とリスペクトを皆さんに。いつも応援をありがとうございます。
今、夢を追いかけている人は頑張ってほしいし、キャリアを積み重ねている人達も決して諦めずに常に努力を続けて欲しい。いい事は必ず起きるから。俺の試合を見てくれて本当にありがとう」