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2024年10月26日(日本時間26日23時)、アラブ首長国連邦アブダビのエティハド・アリーナにて『UFC 308: Topuria vs. Holloway』(U-NEXT配信)が開催される。
メインイベントでイリア・トプリアvs.マックス・ホロウェイの「UFC世界フェザー級選手権試合」が行われるアブダビ大会。コメインでは、ミドル級で元王者のロバート・ウィテカー(3位)が、MMA13勝無敗・UFC7連勝中のハムザット・チマエフ(13位)と対戦する。
▼ミドル級 5分5R
ロバート・ウィテカー(豪州)26勝7敗(UFC17勝5敗)185.5lbs/84.14kg
ハムザット・チマエフ(スウェーデン/ロシア/アラブ首長国連邦国旗)13勝0敗(UFC7勝0敗)※UFC7連勝中 186lbs/84.37kg
当初、6月のサウジアラビア大会で組まれていたこのカードは、チマエフが直前で体調不良により欠場。ウィテカーは代役のイクラム・アリスケロフを1R KOに下していた。今回、4カ月を経てアブダビで5分5R戦として、仕切り直しされる。
チマエフは、2023年10月のアブダビ大会以来の復帰戦。当初パウロ・コスタ戦が組まれていたが、コスタが直前で欠場し、ウェルター元王者カマル・ウスマンがミドル級で緊急参戦。チマエフが判定2-0で勝利している。
ウィテカー「俺と一緒に25分間全力疾走したいなら、駆け抜けようぜ」
──元々、ハムザトとの試合は6月に予定されていましたが、彼が試合をキャンセルして、今回が2回目のキャンプになります。アリスケロフ戦を挟んだものの、同じ相手に対しての長い一つのキャンプのように感じたでしょうか。それとも一度リセットして、少し休んでからまた準備に入ったのでしょうか。
「俺はキャンプ中、特に相手にフォーカスしすぎることはないんだ。トレーニングを相手に合わせて調整したり、試合で使えるテクニックを練習したりはするけど、完璧なゲームプランを立ててるわけじゃない。だから、前回も試合直前に相手が変わっても、うまく対応できたんだ。俺たちは柔軟にトレーニングを進めるようにしてるからね。今年はかなりアクティブに動けたし、充実したキャンプだったよ」
──過去には怪我などで休養することもありましたが、今年はすごくアクティブに試合をこなしていますね。この1年、健康を保ちながら大きな試合を次々とこなしてきましたが、手応えはどのように感じていますか。
「素晴らしいよ。本当に恵まれた状況にいると思う。できる限りアクティブでいたいんだ。過去には怪我や他の事情で思うように試合ができなかったけど、トレーニングやジムの外でのことを改善してきたおかげで、今の状態があるんだと思う」
──ハムザトが今回も試合に出られないんじゃないかと心配も?
「その心配はしていないよ」
──ハムザトはトレーニングキャンプを変え、科学的なアプローチを取り入れて、以前のように疲労困憊しないようにしてると言っていますが、今回の彼はいつもと違うと思っていますか。
「正直、あまり彼について考えてないんだ。みんなから彼について質問されるけど、頭の中にはほとんどいない。ただ、彼が最初から最後までハードでアグレッシブにくるのは間違いないと思ってる。それに備えて、今回の試合が俺にとって最もハードなものになると思って準備してきたよ。最初の5分、10分は全力疾走するような激しい展開になるかもしれないし、それが5ラウンドまで続くかもしれない。俺は25分間全力で戦う覚悟ができてる」
──あなたのコーチが「ハムザトはロバートの足を狙い、ロバートは彼のアゴを狙うだろう」と言ってたけど、前回の試合と同じように、今回もフィニッシュを狙っている?
「そうだね、前回の試合と同じように、今回も相手を狩るつもりだよ。俺はこの試合でハンターだし、捕食者だ。彼を追い詰めて、仕留める機会を狙い続けるつもりだ」
──豪州パースでドリカス・デュ・プレシが勝利した後、「誰が次のタイトルマッチ挑戦者に相応しい?」と聞かれた時、彼は質問を遮って「ロバート・ウィテカーが相応しい」と言っていました。しかし結局、彼はショーン・ストリックランドと戦うことになり、あなたはハムザトと戦うことになった。このことについてどう思っていますか。
「全く気にしてないよ。自分でコントロールできないことを気にしても仕方ない。俺は試合をするためにいるし、それが俺の仕事だ。家族のために働いて、食卓に並べるパン代を稼ぐのが俺の責任だからね。そのために、今ここにいるんだ」
──あなたの試合が組まれると、なぜかタイミングよくUFCが豪州大会を発表することが多い。2025年2月の豪州大会についてどう感じていますか。
「なんでそうなるのか分からないけど、みんな同じ質問をしてくるんだよね。でも、クリスマス直後に試合があるならちょっと微妙だな。気持ちは半々って感じだ。クリスマスがあるし、正直、家族にも少し休む時間が必要だと思ってるんだ。俺がキャンプをやるのはもちろん大変だけど、家族も俺に付き合ってくれてるからね。今年は久しぶりに多くの試合をこなしたから、家族も結構『トレーニング漬けの父』に耐えてきたんだ。『トレーニング漬けの父』はあまり楽しいもんじゃないからね」
──別のインタビューで「今回のキャンプは人生で最高のものの一つだ」と言ってたけど、前回の試合の準備が今回にも繋がっていると感じていますか。
「前回だけじゃなく、この1年間だよ。ドリカスに負けて、ちょっとした目覚めがあったんだ。ジムの中でも外でもいくつか変化を加えた。それで、座って考え直して、さらにハードにトレーニングをしたんだ。今まで以上にね。その結果が今年の試合でどんどん出てきたと思う。試合を重ねるごとに成長して、自信もついてきた。これまでの勝利から得た自信を持って、今回の試合にも全力で臨んでる」
──ハムザトの試合は、相手を早くフィニッシュするか、ガス欠の判定決着が多い。彼は「初めての5ラウンドでもペースを最後まで保てる」と言っているけど、どう思いますか。
「まさにそれを試してやるつもりだよ。俺は25分間、全力でいく。彼が俺と一緒に25分間全力疾走したいなら、駆け抜けようぜ」
──UFCで家族思いのファイターとしてよく名前が上がるのは、あなたとスティペ・ ミオシッチ。家族があなたの大きな部分を占めてるのに、どうやってそれを一旦切り離して試合に集中し、また家庭に戻れるのでしょうか。
「俺にとっては、モチベーションや目標を再定義することが大事だったんだ。UFCに長くいると分かるけど、俺みたいにずっと高いレベルで戦い続けてるファイターってあまりいないだろ? それができたのは、自分の目標を再定義し、モチベーションを見つけられたからだと思う。
キャリアを始めた時は、まだ子供もいなかったし、途中で子供ができたことで人生が一変した。子供を持つ人なら分かると思うけど、すごく大きな変化だよね。でも、多くのファイターはその変化に苦しむんだ。成功していた頃のやり方を変えたくないんだよ。俺も同じで、変えるのは好きじゃないけど、家族のために必要な変化をしてきた。大切なものが何かを理解して、優先順位がはっきりしてるんだ。要するに、俺は何のために戦っているかを理解してるんだよ。家族のために戦ってるんだ。だから、戦うために家族との時間を犠牲にするのは意味がないんだ」
──あなたは豪州もニュージーランドも背負って戦っていますが、母国から離れたUAEで戦う気分は?
「俺は自分が住んでいる国に誇りを持ってるし、育った国にも誇りを持ってる。そして、生まれた国にも誇りがある。俺の血に流れるマオリの血も誇りだし、オーストラリア人であることも誇りだよ。俺に注目が集まることで、常にリスペクトを持って行動し、国のために良いロールモデルになるよう心がけているんだ」
──あなたはキャリアの中で数々の大物と戦い、歴史的な試合を戦ってきたけど、将来の殿堂入りについてどう思っていますか。
「殿堂入りっていうのは、いわばキャリアの最後に色を添えてくれるご褒美みたいなもんだよね。俺のキャリアの大きな原動力は、自分の技術を完璧に近づけて、史上最高の格闘家の一人になることだったんだ。そういう意味では、もう達成したとも思ってるけど、まだその道を進んでる最中なんだよ。俺のピークはまだこれからだと感じてるし、今やっとリズムに乗ってきた感じがする。でも、殿堂入りっていうのは、俺が成し遂げてきたことがちゃんと認められてるってことの証だ」
──これまでの試合の中で、どの試合を殿堂入りさせたいと思う?
「ヨエル・ロメロとの2戦目だね。あれは俺の人生をかけた試合だった。すごくいい試合だったよ。他にどの試合がいいか考えるのは難しいけど、あの試合は本当にハードだった」
──多くのファイターがトレーニングキャンプ中のリラックス手段としてビデオゲームをプレイしているけど、あなたはいかがですか。
「俺はキャンプ中だけじゃなく、いつもビデオゲームをやってるよ。24時間365日……まぁ、子供たちと妻が許してくれる限りね。ビデオゲームはただのリラックスの手段じゃなくて、俺の一部なんだ。それに、ゲームに集中してると食べ物のことを考えなくて済むだろ? 今もゲームをしていないから、かなり腹が減ってるよ(笑)」
──デメトリアス・ジョンソンもビデオゲームをよくしていますが、彼と対戦するならどのゲームをやりたい?
「俺はあまりオンラインゲームをやらないんだ。子供がいるとオンラインゲームをやるのは無理なんだよ(笑)」
──ハムザトの前に、あなたが無敗の相手と戦ったのはイズラエル・ アデサニヤ(2019年10月、ウィテカーが2R KO負け)でした。対戦相手が無敗だということは気になりますか。
「いや、誰だって無敗の時期はあるからね。俺はあまり戦績を気にしないんだ」
──今回の試合は5ラウンドですが、あなたが5ラウンドを要求した?
「いや、なんでそんなことするんだ? 5ラウンドは3ラウンドよりずっと大変だよ。俺はこれまでたくさん5ラウンド戦ってきたけど、正直言って楽しいものじゃない。ただ、今回はこうなっただけだと思うよ。でも、俺は試合に出るんだ。3ラウンドでも5ラウンドでも、10ラウンドでも、どんな試合でもそれに向けてトレーニングして準備して、試合に臨むだけだよ」
──ハムザトはウスマン戦やバーンズ戦の終盤でガス欠を起こしていた。あなたと5ラウンド戦うのであれば、あのままでは通用しないのでは、という意見もあります。
「彼はこれまで、試合開始直後から攻撃的なスタイルで成功してきた。ガス欠を起こしても、最初の数ラウンドで圧倒的に支配していたから、試合に勝ってきたんだ。でも、俺は彼のベストバージョンを期待してる。最初からハードに来て、最後まで持ちこたえるだろうと想定してる。それに備えてトレーニングしてきたよ。1ラウンドを乗り切ったら俺の勝ちという風には考えてない。ガス欠を起こさないベストな状態のハムザトと戦うつもりで準備しているよ」
──ハムザトは「ロバートは負け方を知っている。自分は無敗だから負けを知らない」と言っていた。ハムザトと戦ったファイターは、彼が試合開始と同時にタックルに入ってプレッシャーをかけてくるのを知ってたけど、勝てなかった。あなたが勝つには、何が武器になるでしょうか。
「俺の経験だよ。俺は自分のやり方に自信があるし、これまで彼が戦ったどのファイターとも違う。そして、もしかしたら、俺が負けを知っていることが逆に強みになるのかもしれない。負けたくない理由があるし、そんな現実を受け入れたくないんだ。だから、彼にもその苦さを味わわせてやるよ」
──もしハムザトとカマル・ウスマンの試合が5ラウンドだったら、どちらが勝ったと思いますか。
「難しい質問だけど、ウスマンが盛り返しただろう、とだけ言っておくよ」
──あなたはもう10年近くもミドル級トップ戦線で戦っている。前の世代、自分の世代、そして今やハムザトのような次世代の選手とも戦ってる。どうしてそんなに長くトップに居続けられたと、ご自身では思いますか。
「前にも言ったけど、それは目標やモチベーションを再評価して、人生の変化に合わせて自分を変えてきたからだと思う。多くのファイターは、成功したやり方を変えたくないんだ。でも、10年前の俺と今の俺は全然違う人間なんだよ。そして、その変化はいい方向に向かってると思う。今は10年前よりもずっといい父親になったし、これからももっと良くなっていくと思うよ」
──具体的に変えたことの例を挙げるとしたら?
「多くはメンタル面の変化だね。目標やモチベーションを見直して、本当に何が自分を駆り立てているのかを理解することが大事なんだ。言葉で『何が自分を動かしているか』って言うのは簡単だけど、それを心で感じて、本当に理解してなきゃ意味がない。あとは、フィジカルな面でもいくつか変えたことがあるよ。例えば、ソフトドリンクを飲まないようにしたんだ。それがどれくらいの違いを生むのかは分からないけど、強くなった気がするよ。だってソフトドリンクがすごく飲みたいんだけど、我慢してるからね。それで強くなったんだと思う(笑)」
──モチベーションを見直したと言っていたけど、今のあなたを突き動かしているのは?
「家族だよ。責任という言葉を使うけど、その本当の意味が分かるなら、かなり重い言葉だよね。俺の責任は、試合日にケージに向かって、ハムザトと25分間全力で戦うことだ。それをやり遂げる前に、この国を離れるつもりはない。家族のために俺はここにいて、その責任を果たすためにいるんだ」