(C)新井丈 ARAI JO
2023年11月、山内渉との大激闘をTKOで制し修斗史上初の世界ストロー級&フライ級同時二階級制覇を成し遂げた僅か1カ月後の大晦日、新井丈の姿はRIZINのリング上にあった。ヒロヤに2R TKO負けを喫し「たくさんのものを失った」と言う、その試合から9カ月。不屈の新井丈が、9.29『RIZIN.48』での南アフリカ2階級王者エンカジムーロ・ズールー戦に向け、復活にかける思いを本誌に語った。
簡単に日本人が出られる大会じゃなくなるのは嬉しい
(C)新井丈 ARAI JO
──(心直の道場破りから続く)大晦日のヒロヤ戦は、丈選手にとっては1カ月のインターバルでフライ級での試合でした。改めてどう捉えていますか。
「振り返ると、自分の打たれ強さを過信しすぎていた部分はあったかなというところです。試合期間も、試合内容や展開に関しても、うん……。ガードを怠った面は間違っていたな、と思いますね」
──丈選手が右を当てて詰めたところに左をもらったのはガードも落ちていて、ちょとラフに詰めてしまいましたか?
「うん……、そうですね、たしかに。ガードも下がってましたしね」
──あの時点までペースは悪くなかったでしょうか。連戦の疲れなどは感じていましたか。
「いえ。ペースや試合展開はいつも通りの新井丈だったし、疲弊もなかったですけど、なんかこう“いまいち捕まえきれないな”というのは感じてはいたんですよね……、うん……そう、ボディは当たっていたけど顔はしっか捕えられてなかったし、ちょっと最後、コーナー側に詰め切れてなかったので、追いかけてはいるけど相手も逃げ続けられるというような。ちょっとうまく行ききってない印象があったっすね、1R」
──試合の映像はあまり見直したくないのが正直なところでしょうか。
「そうなんすよ、あんまり見返せてないですね(苦笑)。でもさすがに見て……反省点は探してやってます。でも何回もは見れないっす、やっぱり(苦笑)」
──それだけ悔しかったということですね。やり返したいという気持ちは?
「あります、あります」
──丈選手との試合の次戦でヒロヤ選手が所英男選手に敗れたことについては大雑把に言うと「何やってんだ」というような感情だったのでしょうか?
「まあ、そっすね(苦笑)。そんな感じです。ここは世代交代しなきゃダメだろって」
──では5月の修斗での石井逸人vs.関口祐冬の結果についてはどう感じましたか?
「ウン。あそこで勝った方とやるんだろうな、というふうには見てたので、理想で言えば、関口くんは自分が直近でやっているので、まあ石井選手のほうが、見ている側もノレる、アツい試合になるのかな? っていうところでそこは期待してたんですけど……。そこに関しても何やってんだよって(苦笑)、石井逸人には思いましたね」
(C)新井丈 ARAI JO
──そんな丈選手ご自身は、大晦日の前から時間をかけて肉体改造をしたいと話されていましたが、大晦日を経てやっとそこに取り組めているという状況でしょうか。
「はい。試合がない期間がこんなに長くなったことはなかったし、KO負けで、激しい練習も3、4カ月くらいしなかったんですね。そのなかで、練習強度が高すぎると身体を大きくするのは難しいなあって改めて感じて。トレーナーさん、栄養士さんにサポートしてもらって体の増量だけに集中して、みるみる人生最高体重を更新して。なんか、楽しかったですね、増量期」
──増量期に寺田健太郎さんのもとへ行かれたのはどのような経緯で?
「阿部一二三選手のトレーナーを紹介できると言われて“これは触れてみたいな”って。うん。ま、短期間でしたけど、ほぼ毎日のようにその期間はパーソナル受けて、やりこみました。既存のフィジカルトレーナーもずっといるんですけど、多少エッセンス、考え方が違うところなんで。やっぱり新しいものを取り入れる機会だなとも思って。得られるものはたくさん吸収しようっていうスタンスで行きました」
──キツい練習後、喉を通らないのに食事は摂らなくてはいけないのは大変ですよね。
「ああ、そうです本当に。増量期、そこに関してはツラかったですね。お腹空いてないのにすぐゴハンの時間がくるっていう」
──最大で何キロまで増えたのですか。
「最大70キロです」
──そこから絞っていく、と。現在(※インタビューは8月下旬に行われた)は?
「いま64キロくらいですね。自分でもどういう身体になるのか、ワクワク、ドキドキしながらやってますけど。ただこの1回の期間で完全に1階級分の筋肉を搭載できるかっていうとまあ不可能なので。今後さらに1、2年かけて、試合後にはクールダウンして身体を休める期間をつくって、その期間に再度増量。今回いろんな人に関わって得た知識を詰め込んで、試合ごとに少しずつ筋量を増やして行きたいと思っています」
──スパーの手応えはいかがですか?
「戻りたての頃に関しては“重っ!”って思いました。ですけど、しっかりそこは頭と身体の使い方を切り替えて調整していけば、戻りましたね。それに理論的に言うと、筋肉量が増えると出力が増えるので、絶対にスピードも増えるはずらしいんですよ。身体を大きくして遅くなっているっていうのは、トレーニング段階で言ったらボディビル寄りになっているとか、身体の使い方がそういうものに慣れてしまっているだけなんですよね。本来は力を出すことのできる筋肉は増えているのだから、スピード、瞬発力みたいなものも上がるはずなんですよ。それを変換していくトレーニングを意識すれば、戻りましたね」