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【RIZIN】平本蓮と朝倉未来は「陰性」──禍を転じて榊原CEOが起ち上げる「新RIZINアンチ・ドーピング・プログラム」が見据える未来とは?

2024/09/06 03:09

罰則強化と意識改革、そして全結果公表と抜き打ち検査へ

 今回の騒動は、ファンにファイトスポーツへの不信感を抱かせる出来事だったが、日本格闘技のアンチドーピングを、大きく前進させるきっかけになるかもしれない。

 榊原CEOは、「当日の検査だけでは中立が保たれない、公明正大に行われない、選手の意識が高まらない、ということであれば抜本的なルールを見直す。当然、経済的な負担もマンパワーもかかると思いますが、中立で独立した組織体系でないといけないので、一定の決意と経済的な負担は当面RIZINがさせていただく中で、これまで以上に検査体制を厳しくする。そういう形のドーピング規定の見直しと新しいドーピングポリシーの策定に入ります」と宣言する。

 新しいドーピングポリシーは、具体的には罰則の強化による選手の意識改革。そして今後、検討されるのが王座戦以外のドラッグテスト結果の公表と、大会日以外の“抜き打ち検査”の実施だ。

 実際、RIZINでは、すでに出場選手の1/3からランダムに尿検査を行い、ドーピングチェックで「陽性」反応があった選手には、程度により罰則や以降の出場停止処分も行ってきた。その全選手の結果を、契約を変えて開示していくことも今後は検討される。

「やはり辱めを受けるということが、選手のドーピングに対する意識を変えさせることになるのであれば──選手たちの未来を考えて今までは非公開にしていますが、──これからはサスペンドの期間も考え直すべきだし、経済的な罰則も見直すべきだと思います」と、榊原CEOは言う。

 そして「抜き打ち検査」を少しでも増やすことが抑止力に繋がるのでは、という本誌の問いにも「検討する項目のひとつで、除外することはないです。抜き打ち検査もやっていきたい。先生方を中心に何か方法論を考えてやれたらいいかなと思います」と前向きだ。

ビジネスになることが、システムを進める

 ただし、そこには、実務面と経済面でハードルがある。だが、ピンチをチャンスに変えるのが榊原CEOだ。現在は米国の検査機関・SMRTL(スポーツメディカルリサーチ&テイスティングラボラトリー)に空輸しているドラッグテストが、日本でビジネスになれば、そこに取り組む団体や企業が増えるだろう。

「日本のプロスポーツのなかで、なかなか“ここの検査機関に行けば徹底的なドーピング検査をしてもらえる”という機関が無いんですね。だから、そういう機関をこれから独立してRIZINのなかで先生方とアクションを起こすことが礎となって(いくかもしれない)。どの団体も海外選手も中立に公平に調査できるのか、は簡単な話ではないですが、目指すところはそこまで行きたいと思っています。ほかの競技(のテスト)も請け負えるような組織に進化させられるような意識を持って」と、RIZINが率先して第三者機関としてのドーピングチェックシステムを構築していく意欲を語る。

 MMAPLANETからは「日本スポーツ協会(Japan Sport Association/JSPO:旧日本体育協会)に加盟している団体と加盟していない・加盟が認可されていない団体との差や、WADAやJADAなど統括組織があることによって、格闘技団体のドラッグテストへの壁があるとしたら、日本企業でWADAやJADAに加盟していなくても同レベルの検査を安価に行える可能性はあるか」という質問が諌山医療部長にあった。

「現状でRIZINはじめコンタクトスポーツで、日体協みたいなスポーツ組織に属するということはないのは、皆さんご存じの通りなのですけど、我々医療部とししては、RIZINがそのスポーツのレベルまで目指したいとやっています。ドーピングではプロ野球しかり、Jリーグしかり、そこまでしてないのは経済的な問題かと思う。そこは主催者である榊原CEOに頑張っていただきたい」(諌山氏)

 実は、日本にもWADA認定のドーピング検査における検体分析機関(WADA Accredited Laboratory)が存在し、東京五輪2020では、株式会社LSIメディエンスのアンチドーピングラボラトリーが、約8400検体(尿 約6800検体、血液 約1600検体)の分析を行っている。大会期間中は278名(LSIから90名、海外のWADA認定分析機関から49名、国内の大学から139名)が、24時間体制で分析を行い即日報告、さらに遺伝子ドーピング検査、乾燥血液スポット分析といった最先端の分析手法を世界で初めて採り入れたラボラトリーとしても有名だ。

 そこまでいかずとも比較的安価に尿検査を行えるラボと提携し、検査要員を確保できれば、格闘技団体のみならず、日本のほかスポーツ団体が利用する可能性がある。

 JMOC(日本 MMA審判機構)は出来た。JSPOに格闘技団体が入れないのならば、各団体が協力し、日本版アスレチックコミッション、日本格闘技版アンチ・ドーピング機構を作るタイミングが来ているのかもしれない。2029年秋にも国内初のカジノ施設が誕生するなか、スポーツベッティングが解禁されれば、試合の公正さを保つ機関はマストとなる。

 既報通り、フルコンタクトスポーツであるファイトスポーツは、直接ダメージを与えるという点で、ドーピングで自身が得るもののみならず、対戦相手が失うものも大きい。

 今回の王座戦のドラッグテスト結果は「陰性」だったが、ドーピングとは何か、なぜドーピングがいけないのか、それを出来る限り防ぐために何が必要なのかは、引き続き本誌でも考えていきたい。

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