平本は「陰性」だが「アウト」
ドラッグテスト結果については「陰性」ながら、平本の一連の行動について榊原CEOは「アウト」と評した。
「WADAの基準(『世界アンチドーピング規定 2024禁止表国際基準』日本語版)からすると平本選手が意図か意図的ではないにかからわず、ドーピングに引っ掛かる薬物を入手していた時点で、ルールによってはアウト。現状のRIZINのルールではそこまでの規定がないので、今回の件をドーピングに該当という裁定はできないが、今後ルールを改定することによってそういう企てをしただけでもアウトになる側面がある。平本選手には猛省をしてほしいし、本人も誤解を招く行動をしたことは反省もしている。普段の生活から食物でもサプリメントでも疑ってかかること。安直な行動は慎んでほしい」と、強い口調で断じている。
また、平本が試合前の右ヒザ負傷時に、赤沢とは別のフィジカルトレーナーに勧められて、回復を早める注射を自ら尻に打ったという告白について問われた諫山部長は、「そのことは聞いておりますが、日本では医師以外で注射行為はできないし、ちょっと信じられない話」と困惑し、その薬の内容について問われると、「平本選手からのサプリのTUE申請はありませんので、全く想像することすら憚れる」と明かしている(※患者やその家族が医師の適切な指導管理の下に在宅自己注射を行うことは、医師法に違反しないものと解されている)。
「TUE申請」とは、治療使用特例(Therapeutic Use Exemptions : TUE)として、『禁止物質・方法』を治療目的で使用したいアスリートが申請して事前に認められれば、特例としてその『禁止物質・方法』が使用できる手続き。TUEが認められなかった場合に、その『禁止物質・方法』の使用を続けた場合、アンチ・ドーピング規則違反となる。
平本の場合、14万円以上をかけて購入した“サプリ”は開封も使用もせず、ヒザ治療用の薬は医師法に反する自己注射をし、その薬は、TUE申請をしていなかったことになる。
榊原CEOは、これらの説明について「まあ疑惑ですよね。“買ったけど飲まないって、本当?”って思うのが人間だと思います、正直。でも決めたルールで裁くしかないっていうのも現実です。だから今後、こういう疑惑を持ちたくないし、“ウチの選手は真っ白だ”と言い切りたいし、平本選手に関してはそれを飲んだか飲まないかは誰も分からないじゃないですか。当然“朝倉信者”とか朝倉未来の関係者からすると“ムッチャ怪しいじゃん、絶対飲んでるよ”って思っても仕方ないと思います。でもこれは水掛け論だし、僕らが決めた競技ルールのなかで現状、裁く以外にはないです」としながらも、「今後、彼は疑惑や疑念と戦うことになります。それは、クリーンな身体で戦うことで証明していけばいいと思っていますが、彼のキャリアのなかで7月28日に朝倉未来に勝ったと大手を振るって燦然と輝く物ではなくなったというのは事実です」と、疑いの厳しい視線にさらされながら、自身の実力を証明していくしかない、とした。
「朝倉未来が不憫でならない」(榊原CEO)
榊原CEOは、今回の騒動のなかで引退表明した朝倉未来に対しては、「ここは個人的な、プロモーターとしての立ち位置から逸脱する可能性があるんですけれど」と前置きし、忸怩たる思いを吐露した。
「2015年に旗揚げして朝倉未来がRIZINに出場して6~7年。RIZINの中で彼の活躍に一喜一憂し、彼の戦いに心を震わせた、7月28日も4万8千人のファンがあれだけの熱狂の中で朝倉未来の試合を見届けたわけです。
彼は格闘家としても人生を懸けて、引退を懸けて戦った試合が心無いこと、ドーピング疑惑で泥を塗ってしまったこと、汚してしまったこと。これが引退試合だと言うのは本当に悔しいです。未来が不憫でなりません。本当に悔しい。だからこの結果を招いたことは、全てにおいて最終的には主催者である私の責任だと思っていますし、この場を借りて朝倉未来にはこれが最後の試合になったことにはお詫びもしたい」と、ときに声を震わせながら謝罪した。