MMA
インタビュー

【ONE】おたつロック誕生秘話から1年4カ月ぶりの復帰戦まで──和田竜光「DEEPの前田吉朗戦の時に……」「バリエーションは増えています」

2024/07/04 21:07
 2024年7月6日(土)タイ・バンコクのルンピニースタジアムで開催される『ONE Fight Night 23: Ok vs. Rasulov』(U-NEXT配信)のONEフライ級で、和田竜光(日本)がシェ・ウェイ(中国)と対戦する。 【写真】両者計量およびハイドレーションテストをパス(和田135lbs / 1.0061、シェ133.5lbs / 1.0074)  2021年10月に竹中大地、2022年1月にワン・シュオを判定で下し、 2022年6月にカイラット・アクメトフに判定負けも、2023年3月にアーネスト・モンティーリャにリアネイキドチョークで一本勝ち。以降、契約が切れていたことで試合から遠ざかったが、今回、晴れてのFight Nightシリーズ出場で継続参戦が決まった。  カーフキック以前の長倉キック、デメトリアス・ジョンソンに仕掛けたおたつロック、MMAムエタイ&柔道とクリエイティブな技で40試合を戦ってきた和田は、1年4カ月ぶりの試合で何を見せるか。 おたつロックは押さえ込みの一つ、そこから極め技に繋げていく ――今回の試合に向けた練習環境はこれまでと変わりないですか。強化した部分なども。 「そうですね、とくに変わったことはなくて、いつものTRIBE TOKYO MMA、ロータス世田谷、TRI.H studio、角海老宝石ボクシングジムですね。特に強化した、ということは一切無くて。もちろん相手をイメージして“こうなったらこうかな”というのはありますけど、変わった対策などはありませんね」 ――和田竜光選手といえば“おたつロック”ですが、先日の平良達郎選手の試合で一気にその名が世界に広まって。たしかおたつロックにはそもそも様々なバージョンと派生形がありますよね。 「そうですね、3つですかね。まず、おたつロックの入りと、あと入ってからの形、4の字にフックを組んで足裏にというのと、あとはそれで相手が対応してきたときに移行する押さえ込み。それから最近だとツイスターをやったりとか、おたつロックというのはあくまでも押さえ込みの一つ。そこから極め技に繋げていくという流れなので」 ――バックテイクから足の入りのセットアップがあって、ヒザを狙うというよりポジショニングコントロールからツイスターなどの極め、トラックポジションにも移行できる。そもそもあのが形が生まれた瞬間というのは……。 「生まれた瞬間は覚えていないんですけど、元を言うと、僕があのバックをやりだしたのは、23歳のときにDEEPで前田吉朗選手に負けて、そのときに4の字バックからバックチョークで負けたんです。これはいいなと思って。それからけっこう採り入れるようになって、そこから、いつ見つけたのかは分からないんですけど、4の字バックから『おたつロック』と呼ばれるようになったというか、僕が呼び始めたんです(笑)。最初はもちろん名前はついてなかったんですけど、これはいいなって、だんだんやり始めていろいろな人に仕掛けて、『これどうなってるんですか?』みたいな感じで、他に周りに誰もやっている人もいなかったので、こりゃ俺が最初にやってるなって気づいたって感じですね」 ――なるほど、あのとき前田吉朗選手がボディトライアングルから二重がらみをして、最後は和田選手をリアネイキドチョークで極めた。その試合から和田選手が採り入れ、変化を加えて、あのデメトリアス・ジョンソン戦で大きく脚光を浴びた。 「おたつロックからツイスターとかも途中から見つけてよくやるようになって、いろいろな人が真似してくれて、TRIBEの後藤丈治だったり、黒部(和沙)くんが修斗で極めたりしてくれて、ありがたいです。僕が練習でやっていることを広めてくれてというか、いい武器にしてくれて」 ――黒部和沙選手が澤田龍人選手を極めたとき、会場で長南亮代表にTRIBEの十八番ですね、と聞いたら「あれはワダタツだよ」って。 「はい。ありがたいです。練習でやるから黒部くんもよく聞いてくれるので」 ――そして、平良選手がアレックス・ペレスに極めて煽ったことで、最後は負傷した。アルジャメイン・スターリングが「ヘンゾロックはよく使うけどあそこからの怪我は──」と発言しましたが、かけられると分かりますが、対角に足を入れるだけでなく、おたつロックでの煽りは相当負荷かかりますね。 「そうですね。あれけっこう起こり得る事故なんですけど、狙ってあれで極められるかというと、相手の対応もあるので。ただ、ああいう事故は起こりやすい動きではありますよね。アルジャメインも、『それで一本取れるんだったら俺も使うぜ』みたいな感じだったんですけど、相手のリアクション次第でああなっちゃうよと。タップ遅かったら怪我するよ、みたいな感じですね」 [nextpage] もしかしたら俺って衰えを知らない超人なのかもしれないって ――なるほど。ところで和田選手はもともと極真空手と、高校から始めた柔道で山梨で上位だったとか。 「優勝はしたことなくて、最高で60kg級で準優勝したんですけど、山梨県の高校の柔道のレベルってそのときめちゃめちゃ低かったので。僕、柔道は本当に弱いですね。中学生とかに普通に合同練習とかで負けてたりしたので、柔道の実力はマジで無いです(笑)」 ――それで吉田道場というのも興味深いですけど、その競技でトップ中のトップがいるなかで、和田選手は首相撲からの崩しや蹴り、カーフキックもカーフキックと呼ばれていない頃から使われていて、そういったひらめきは、17年MMAをやっていて今でも和田選手の中にあるのでしょうか。 「まあそうですね。カーフは長倉(立尚)キックからで、ほかもたまに見つけるんですよね。“これいい”みたいな感じで。これやると相手が嫌だなとか、なんかこれ取れたなみたいなことがたまにまぐれから、流れの中で取れたりすることはある。それが狙って毎回出せたりすると、技術として使えるものかな。意識して染み付いていくと技になるということが過去に何回かあって。その一番代表的なものがおたつロックなんです。あの形からツイスターをやる人ってそれまでいなかったんですけど、おたつロックからツイスターだと振り向きにくい。それも“あれ、なんか取れたな”から、“じゃあもう1回やってみよう”で、またしばらくして取れたりして。“これやっぱ取れるじゃん”ってなってきて、技になる」 ――なるほど。ポジショニングの一つから極め技に精度が高まっていくと。おたつロックもまだ進化しそうです。 「そうですね。おたつロックからやる流れだと、さっきのツイスターがけっこう良くて、ツイスターの角度とかポジションが流れていったときの極め方のバリエーションが増えてきています。ツイスターを狙って相手が動いてきたときのチョークの入れ方とか、バックを警戒して動いてきたときに、相手の動きに合わせてチョークの入りのバリエーションとかが増えているという感じですかね。“新しい、この名前の技が増えました”とかじゃなくて、入れるタイミングとか誘導の仕方とかが前よりもパターンが増えてきたなという感じです」 ――それは楽しみです。いかにそのポジションに入るか、そしてそこからどう誘導するか。そしてそれはもちろん対戦相手あってのことになります。今回の対戦相手のシェ・ウェイ選手を和田選手はどうとらえていますか。 「ストライカーなことは間違いなくそうなんですけど、彼が負けた試合とかも見せ場を作ったりとか、判定で勝ったような試合を落としたり溶かしてたりとかするんですが、実力がある選手なのは間違いなくて。今ランキング入りしている選手たちの、本当に少しだけ下にいるくらいの、僕もそのくらいかなと思うので、ちょうど同じくらいの選手としての現状の価値、ちょうどいい相手かなという感じですかね」 ──練習仲間の若松選手からも印象は聞いているでしょうけど、シェ・ウェイ選手はオーソでもサウスポーでも戦えて左フックも強い。ジムをチンタオからタイに変えて、打撃のみならずレスリングとグラップリングの技術も伸びているそうです。動画を見返すと、上組みも強く簡単じゃないなと思いました。 「こういうのってやっぱり触ってみないと分からないところがあって、たぶん強いと思うんですよね、打撃出して切ること。切るのが強い人もいるし、寝てから力強い人とかもいるから、触ってみなきゃ分からない。それもちょっと楽しみだなと。力が強いとか、簡単にテイクダウンできないだろうなとか、立たれるかもというのも頭に入れて試合したいなと思います」 ――1年4カ月ぶりで試合勘はどう出るか。これまでのキャリアでも最も長いブランクになりますね。 「そうですね。怪我したときももうちょっと復帰は早かった気はするので。でも今回は“復帰”というか、僕はいつでも試合できる準備がこの1年4カ月ずっとあって、いろいろあって今このタイミングになって、ようやくできるかなという感じなので、いっぱい練習もできたという意味では、自分のレベルは上がっているかなという気はします。それこそおたつロックとかも理解度は自分の中でもやるごとに増えていくし、対応されたときのこっちの対応とかバリエーションも少しずつですけど増えています。経験値はやっぱ年々上がっているなと思います」 ――となると、ブランクの不安よりも試合を渇望する……。 「まあ“飢え”ですね。とにかくこれが仕事なんで、この間仕事がなかったというのは自分にとってはもう大変なことなので“ようやっと試合だな”という。相手がどうとかよりも」 ――戦いの場が自分の仕事場だと。そこであらためてONEに決めたのは? 「やっぱりDJがいるということがデカいなと思いますね。この階級に関しては、DJがいる時点で世界一の団体なんじゃないですかね。フライ級以下の階級、ストロー級も世界一だと思いますし。僕が今ここにいる、この団体でこの階級でチャンピオンになったら『世界一』って言ってもいい。UFCのチャンピオンよりもDJのほうが強いなと思いますし、日本人も強い人いますけど、DJのほうが強いんじゃないかなっていまだに思うので、その点ですごい価値のある大会だと思います」 ――この階級での目標は? 「今はベルトが欲しいです。DJとは1回やっているので、今はまあいいかなというのもあって。とりあえずベルトを取りたいので、ランキングに入らないと」 ――DJ戦では、あのおたつロックを仕掛けて、こかしてツイスターも狙っていた。これまでも和田選手にお話をお伺いすると、あのDJ戦で一度“自分は上がっている”という言葉も聞かれました。そんななかで「ベルトを」という言葉に感銘を受けて……。RIZINではカイ・カラフランスに勝って、DEEPで神龍誠に勝利しベルトを獲ってONEに参戦した。コロナを経て、今のONEのフライ級で試合をするモチベーションというのは? 「そうですね……。いろいろなところでも言うんですが、僕はONEにすごい感謝しているところがあるので。本当にONEで契約してもらっていなかったら格闘技続けていたか分からない。“もういっちょやるぜ”と思えたのは、やっぱりONEのおかげというのがあるので、ONEでやりたいなというのと。あと、さっき言ったように、この階級に関しても、俺より下の階級に関しても強い選手がいるから、目指していきたいというのはあります。やっぱり海外で、対外国人と戦う面白さとロマンというか。自分の格闘技の旅路のなかで稼ぐという意味ももちろんありますし。楽しみながらやれています」 ――試合が決まらない中も日々、練習してきた中で、MMAへの深まりも感じていると。 「そうですね。これも本当によく、今回一緒に来てくれた釜谷(真)さんとかとも話したんですけど、やっぱMMAに関していうと、技術というのはどんどん上がるんです。やれることもいっぱいあるし、体力が落ちたなとかも今のところ感じてなくて、大きな怪我があるまではどのくらいできるんだろうなって。“もしかしたら俺って衰えを知らない超人なのかもしれない”って、今ちょっと思えるくらい、身体も元気で練習も出来ているので。ただ、試合で結果が出なくなったときとか、今までやられてこなかったようなことが試合とかで何度か続いたりすると、やっぱりそれって衰えなのかなと感じることが出てくると思うんです。そのときまでは行けるところまでは行ってみたいなという、どこまで行けるのかという自分へのトライも楽しんでできているところですね」 ――それはTRIBEやロータスのトップ選手、そして若手との練習の中でもいまだに感じているということですね。 「そうですね。TRIBE、若手もいっぱい強い子が出てきていますし、その子たちとチンチンにやられたりとかしない俺もまだいたりするので、まだまだいけるなという確認もできるし、もちろん強い人とやって、チンチンにやられて、こういう人がいるからもうちょっと成長できるなって思えることもある。だから、やられても・やっつけても、まあまあ自分の成長だとは今は思えていますね。元気に身体が動く限りは」 ――最後に今回、日本からもU-NEXTで見るファンに向けて、和田選手の中で、こんな自分の戦いを見てほしいということがあれば。 「そういうのはちょっと苦手なんですけど(苦笑)。見てほしいところは、“こいつがどんな風な戦い方をするのかな”というのは、まあ寝っ転がりながら楽しんで見てくれたらいいなとは思います」 ──和田選手らしいです。しかしお話を聞いてますます試合が楽しみになってきました。これから計量も大変ですが、試合期待しています! 「楽しみにしていてください!」
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