ヘンゾロックからおたつロック、そして──
このフィニッシュに、元UFC世界バンタム級王者のアルジャメイン・スターリングは、「“オタツロック”をグーグルで検索したけど、オモプラッタの動画しか出てこない。教えてほしい。僕はBJJの黒帯だが、これ(オタツロックでダメージを負わせる)が本当なら、間違いなく武器庫に加える。マット・セラと僕は何年もこれを“ヘンゾ”と呼んでいるが、これによる怪我は見たことがない」と驚きのコメント。
かつてヘンゾ・グレイシーが得意としていた対角のヒザ裏でのコントロールに、和田竜光が多用するボディトライアングルを合わせた“おたつロック”で、まるで猛牛をロデオのように乗りこなした平良は、「落とされる心配はなくて、得意な形だったので、あの形からグラウンドに持っていこうというのは試合前から松根(良太・代表)さんと話していました」と、作戦のうちだったという。
また、試合前に沖縄で平良と合同練習し、本誌『ゴング格闘技』で対談を行った同門の扇久保博正は「試合前からどちらがランカーか分からないくらい、平良選手が落ち着いていた」と、気合十分のペレスに対し、入場で笑顔も見せていた平良の落ち着きぶりに驚き。
スタンドでは、「ペレス選手が頭を下げるので、そこにアッパー、ヒザ。無理に詰めて来られたら首相撲ヒザ。あれはペレス選手がやり辛かっただろうなと。左フック、右フックの外からの攻撃を当てるしかなかった」と、ペレスが立ち技でも手詰まりになっていたと指摘した。
また、フィニッシュについては「2R、タイミングを見計らってタックル、バックテイク、おたつロック。あそこ、スタンドでペレスは守ろうとしたと思うけど、あのおたつロックをされた側が怪我するのはたまにある話で、ペレス選手の足も速攻、腫れてましたね。あれも見事な技」と、片ヒザを固定された形での立ったままの防御をさせなかった平良の巧さを評価。「パントージャとぜひ見たいなと思いました」と、かつて自身も対戦した現王者とのタイトルマッチが見たいとした。
ペレスの異変に気付き、2発目の拳は止めた平良。勝利は確かだったが笑顔は無かった。
「(ペレスの身体が)“伸びた”と思って“俺のタイムだ!”ってなって、パウンドをまとめようと思ったときの怪我だったので、嬉しかったというよりも、ちょっと残念な気持ちにもなりました。ちゃんと仕留めたかったなって」と、フィニッシュを語っている。
平良は王座挑戦圏内にいる
5位のペレスを下した平良は、13位から何位ジャンプアップするか。フライ級タイトル戦線を見渡すと、5位以下にもチャンスがあることが分かる(※追記・6月18日に平良はフライ級5位にランク)。
王者パントージャに続く1位はブランドン・ロイバル。2位はそのロイバルにスプリット判定で敗れたブランドン・モレノ。そしてその両者は昨年パントージャにいずれも判定で敗れている。UFC5連勝中のアミール・アルバジが3位につけているが、2月のモレノ戦を負傷でキャンセル。
そして4位のカイ・カラフランスは、5月に王者パントージャと好勝負を展開したスティーブ・エルセグと(9位)との試合が8月に決まっている。5位のペレスは平良に敗れてランクダウンは確定的。
そして前述の通り、6位のモカエフと7位のケイプが7月に対戦する。そのモカエフがペレスに「判定」で勝ったこと。また、8位のマテウス・ニコラウがペレスにKO負けしていることを鑑みると、ペレスをフィニッシュした平良は5位、あるいは8位にランクアップしても不思議ではない。それは、王座挑戦圏内にいることを意味する。
2017年9月23日のさいたまスーパーアリーナ大会以来、6年9カ月ぶりに日本人選手のUFCメインイベント出場を実現させ、勝ち名乗りを受けた平良。次は、止まっていたUFC日本大会を、この24歳が再開させるのかもしれない。
「チャンピオンを倒して、日本に、沖縄にベルトを持ち帰ります。そして、UFC日本大会を持ってきます!」──会見前のU-NEXTによる平良達郎インタビューは以下の通りだ。