JASMINE「ボートでは国体に出場して、U-18の日本代表候補に選ばれました」
「そうです。お父さんが日本人で、お母さんがフィリピン人です。意味は分からないのですが、フィリピンでおばあちゃんから『JASMINE』と呼ばれていたので、リングネームにしています」
――一般的にハーフというと身体能力が高いと言われてますけど、ご自身でもそう感じますか?
「フィジカルやパワーはあると思います。普通の男性よりも手が大きいので、高校の時の握力は65ありました(笑)。靴のサイズは測ってもらったら24.5なんですけど、甲高と幅広なんで26.5、ナイキだと27を履いてます(笑)」
――普通に大きいですね。何かスポーツ歴はありますか。
「中学の時に陸上で100Mハードル、砲弾投げ、リレーをやっていました。高校進学するときに何か新しい競技に挑戦してみようと思って高校から始められるスポーツがボートだったんで、中学の先生にお願いしてスポーツ推薦でボート部のある高校に進学しました。ちなみに100Mハードルと砲弾投げで県体に出場し、ボートでは高校1年の時に関東で優勝し、高校3年間は埼玉選抜で国体に出場して、U-18の日本代表候補に選ばれました」
――それで握力があったんですね。
「そうですね。あと、ボートは足を使う競技なので、脚力だけでなく背筋もありました。ボートにはシングルスカルという1人乗り、ダブルスカルという2人乗り、一人舵手(コックス)付きの4人漕ぎのクォドルプルという種目があり、それを私は全てやっていました。やっぱり体幹がないと沈(ちん)といってボートから落ちてしまうのですが、私は一度も落ちたことはないです。ちなみに全国ローイングマシン大会(全国エルゴメーター大会)で日本一でした」
――当時の夢はオリンピック出場ですか?
J「一応、大学進学の時も推薦で入れるという話もあったんですけど、もう好きなことをやりたくて、オリンピック出場とかも全く考えたことはなかったです(苦笑)」
――キックを始めたのはどういう理由からですか?
「出産して40kgも太ってしまい、有名な医者から『こんな太った妊婦を見たことない』と言われて、半年後の検診でも『絶対体重は戻らないよ』と言われたことで、火が付いちゃって(苦笑)、「『絶対はありません!』と言って、26歳の時にフィットネスで今とは違うジムでキックを始めて6カ月ぐらいで40kg落としました。そして、トレーナーになってアマチュアの試合に出るようになって、今所属しているポゴナクラブに入会して、アマチュア3戦全勝してプロになりました。そのうちの1試合は1R59秒くらいで右のワンパンで失神KO勝ちしましたね。それも16オンスで」
――アマチュアの試合で!? どうしてプロになろうと?
「全くなるつもりはなかったんですけど、コロナの時期でアマチュアの試合が全くない時に、プロでのオファーがあり、人生一度きりなんでリングに上がる機会もそんなにないからやっちゃおうというノリで、2020年10月に『Krush-EX』でプロデビューし、プロ3戦目でNA☆NA選手に勝ってWMC日本女子バンタム級王者になり、5戦目で七美選手に勝ってIPCC日本女子スーパーバンタム級王者になりました。まさか自分が2度もタイトルマッチを経験して、ベルトを巻くとは思いもしなかったですね」
――やはり陸上やボートで培ったフィジカルの強さがキックでも活きたわけですね。
「そうですね。他の女子選手よりはフィジカルの強さはあると思います。ボートは足、背筋を使う競技なので首相撲の展開になっても女子選手に回されてこかされることはないですし、強い前蹴りも打てるので早くからスポーツをやってて良かったなと思います。出稽古に行ってもあとは80kg近い女性やMMAの選手とボディブロー対決をやっても一回も倒れたことはないですね」
――ネット情報によると、スパーリングで男性のアバラ骨を折ったことがあるとか?
「タイミング良く前蹴りやミドルが入って折ってしまったことはあります(苦笑)」
――まだプロ5戦とキャリアは少ないながらも二本のタイトルを獲っていることで、まだまだ伸びしろはありそうですね。
「こう見えてメンタルが弱いんです(苦笑)。とりあえず綺麗な顔のままリングを下りたいということしか考えてないです」
――次は初のタイ人選手との対戦になりますね。
「映像を見たら手足が長いという印象を受けました。あと、首相撲の展開が多い選手でしたが、私はそういう展開になっても負けない自信はあります。ムエタイをやっている以上、いつかタイ人と戦ってみたいという気持ちはあったので、勝つための準備はしています」
――世界女子ムエタイの機関として活動するWMA(ウーマン・ムエタイ・アソシエーション)の日本支局のメンバーとしてBOM・中川夏生代表、RWS JAPAN・佐々木洋平代表が女子ムエタイの日本普及のために活動することが認められたことで、今回の試合はWMAスーパーバンタム級戦として行われることが決定しています。
「そうですね。かなりの実力者の今回の相手に勝ったら、10月のBOMで世界タイトルに挑戦させていただくお話をいただいてるので、ここは絶対に落とせません。以前よりも上がりましたが、ムエタイはまだ世間的に認知度は低いので私が世界タイトルを獲ることで広めていきたいですし、ムエタイは若い子だけがやっているのではなく、母親でもここまでやれるんだという誰かの刺激になれたらいいなと思っていますね」
――お子さんにも世界のベルトを巻く姿を見せたいですか。
「息子は今小学3年生なんですけど、ムエタイを始めた理由が、息子を産んでからカッコいいママになりたいという気持ちもありました。最初にWMCのベルトを獲った時に息子から『カッコ良くて最高のママだよ』と言ってくれた時は、やっていて良かったなと。あと、最初に息子にベルトを巻かせてあげたら『仮面ライダーのベルトよりもカッコいい』と言ってました(笑)。息子には『いつも帰りが遅くなっちゃってごめんね』と言ったんですけど、『頑張ってるのは僕が一番分かっているから全然寂しくないし、これからも頑張ってね」と言ってくれて、さらに練習にも身が入るようになりました」
――いいお話をありがとうございます。
「もう年齢も年齢で引退ももうちょっとなので、限られた時間の中でたくさんタイトルマッチに挑戦して1つでも多くベルトを巻けたらいいなと思います」