GLORY Heavyweight Grand Prix2024年3月9日(土・現地時間)オランダ・ゲレドーム※U-NEXTにてLIVE配信
▼メインイベント(第11試合)Heavyweight Grand Prix決勝戦 3分3R×レヴィ・リグターズ(オランダ/GLORY世界ヘビー級2位)=112.9kgTKO 2R 2分59秒 ※右ローキック〇リコ・ヴァーホーベン(オランダ/GLORY世界ヘビー級王者)=122.8kg※ヴァーホーベンが優勝。
GLORYヘビー級グランプリの決勝戦は、優勝候補のヴァーホーベンとリグターズで争われることとなった。ヴァーホーベンはここでも花道をダッシュしてリングインした。
1R、ヴァーホーベンはジャブを顔面とボディへ打ち分け、接近するとヒザを突き刺す。リグターズは左右のハイキックでけん制しつつ、ローを蹴って来るヴァーホーベンに右ストレートを狙う。ヴァーホーベンの右ローに大きくバランスを崩すリグターズ。サウスポーになるリグターズだが、オーソドックスに戻るとサウスポーになったヴァーホーベンは、左インローからの右アッパーでダウンを奪う。ヴァーホーベンは右ロー、接近するとヒザで左足を蹴る。防戦一方となるリグターズへヴァーホーベンが右フックでダウンを追加。
2R、リグターズは左右フックを叩きつけるが、ヴァーホーベンはローを蹴ろうと詰めてくる。しかし、右ローを蹴ろうとしたヴァーホーベンへリグターズが起死回生のバックハンドブローでダウンを奪う。かなり効いている様子のヴァーホーベンだったが、すぐに右ロー、左インローで反撃。ヴァーホーベンはジャブから左右フック、右ストレート、そして左前蹴りでリグターズを追い込み右フックでダウンを奪い返す。
もう一度バックハンドブローを繰り出すリグターズだが、今度はヴァーホーベンが防ぐ。右ロー、左インロー、さらに右インローを奥足へ蹴るヴァーホーベン。最後はボディへのジャブ連打から右ローを蹴ったところでリグターズが力尽きて座り込むようにダウン。TKOでヴァーホーベンの優勝が決まった。
優勝賞金50万ドルと優勝トロフィーを受け取ったヴァーホーベンは「バックハンドブローは見えなかった。リグターズに拍手をお願いします。素晴らしい相手だった。2人とも2試合していたから互いに足が痛かったと思う。自分は効率的に戦った。グランプリは次元が違うくらい辛かったよ。自分にとってはケーキにイチゴを乗せたようなもの。10年かけて積み上げたものが完成した。今後のことはまだ分からない」と、疲労困憊ながらも笑顔を浮かべて勝利者インタビューに答えた。
[nextpage]
▼コ・メインイベント(第10試合)GLORY世界ライトヘビー級王座統一戦 3分5R×ドネギ・アベナ(スリナム/正規王者)=95kg判定2-3 ※48-47×2、47-48×3〇タリク・カバベ(モロッコ/暫定王者)=94.6kg※カバベが正規王者となり初防衛に成功。
アベナは2015年9月にプロデビューし、2017年のA1WCCチャンピオンズリーグトーナメントで決勝まで勝ち上がった。GLORYには2018年12月から参戦し、2019年6月にはGLORY世界ライトヘビー級王座に挑戦したがタイトル奪取ならず。ここからGLORYで4連敗を喫するも2022年10月に当時ライトヘビー級3位のフェリペ・ミケレッティに判定勝ち、2023年2月にセルゲイ・マスロボイエフにTKO勝ちで王座を奪取した。しかし、6月のカバべとの初防衛戦を前に食中毒となり急遽欠場。11月にモハメド・トゥチャッシーの挑戦を退けて初防衛に成功している。戦績は27勝(7KO)9敗。
カバベは2015年スーパーコンバット・ワールドグランプリ・ヘビー級トーナメント優勝の実績を持ち、2018年6月からは『ONE』に参戦。4連勝してONEキックボクシング・ライトヘビー級王座に挑戦したが、ローマン・クリクリアにTKOで敗れた。2021年1月からはGLORYに参戦し、ヘビー級でリコ・ヴァーホーベンやアントニオ・プラチバット、ライトヘビー級でマスロボイエフといった強豪たちに4連敗を喫したが、2023年3月にダニエル・トレドにTKO勝ち。6月にアベナへのタイトル挑戦が決まっていたが、アベナの欠場でスクランブル出場となったモハメド・アミンをKOして暫定王座に就いた。戦績は49勝(28KO)10敗1分。
当初、両者は2023年11月の『GLORY COLLISION 6』で王座統一戦を行うはずだったが、今度はカバベが急遽欠場となって中止。両者の対戦は2度の延期を経てついに決着の時を迎える。
1R、ボディを攻めていくアベナは右カーフも蹴る。前へ出てくるカバベにはインローを蹴ってバランスを崩す。前へ出るカバベにアベナはローやミドルを蹴り、ヒザを突き刺す。カバベが入って来るところへ右ヒザからの右フックをクリーンヒットさせるアベナ。さらにヒザを突き刺す。アベナが回り込みながらの攻撃を上手く当てていった。
2Rも前に出るカバベにアベナは右カーフ、左ボディ、左フック。右へ回り込みながらの左の攻撃がよく当たる。アベナがカバベの脇を潜ってバックを奪うような動きから左アッパーを打つが、後頭部への打撃があったのかカバベが後頭部をおさえて倒れ込む。これにカバベのセコンドが激怒してリングに入ってしまい、揉め事となったがアベナに注意が与えられて試合再開。カバベは怒りの突進から右ストレート、右フックをヒットさせてアベナをコーナーへ追い込んだ。
3Rも前へ出るカバベにアベナは左ロー。突進を続けるカバベにアベナは右ローを狙い撃ちにし、カバベは転倒を繰り返す。それでもパンチを出し続けて前へ出るカバベの左フックがヒット。アベナの飛びヒザ蹴りにも右フックを合わせる。さらに右ローでアベナの身体が泳ぐ。ローキックの痛めつけ合いの様相を呈してきた。
4R、アベナは距離をとりたいが、カバベは左右フックを出しながら前へ出る。ロープに追い詰めての連打で一度はアベナにダウンがコールされたが、アベナの右腕がロープに絡まった状態での打撃だったためダウンは取り消された。再開後、カバベが左右フックと右ローで追い込んでいき、カバベの攻勢が目立つ。カバベの右ローに大きくバランスを崩すアベナ。
5R、フック&アッパーで攻め込むカバベにアベナは右ローとヒザ。コーナーに追い込まれたアベナだが、体を入れ替えて左右フックを見舞う。左右のボディはカバベ。前へ出るカバベに左右フックを見舞うアベナだが、カバベも右ストレートで反撃。互いにローを蹴り合い、アベナはヒザ、左ボディも。
前へ出て攻め続けたカバベ、左のパンチとヒザを当てていきローでダメージを与えたアベナ。消耗戦となった一進一退の攻防は3-2のスプリットデシジョンでカバベが王座統一に成功した。
カバベは「みんな、俺は全力を出した。みんなも全力で戦争を止めよう。このためにたくさんの練習をしてきた。これからもGLORYを背負っていきたい」と勝利者インタビューに答えた。
[nextpage]
▼第9試合 ミドル級 3分3R×イワン・ガラス(チリ/同級6位)=85kg判定0-5 ※48-49×5〇イリアス・ハムーチェ(モロッコ/同級10位)=84.8kg
1R、ハムーチェは左右ローと左右ミドルを蹴っていき、ガラスにパンチを出させない。ならばとガラスも右ローを蹴る。ハムーチェがワンツーを打ち込むと、ガラスは「もっと打ってこい」と挑発。ガラスの右カーフで足が流れるハムーチェは右ローを蹴り返すが、ガラスがスネブロック。ガラスはハムーチェの足を指差して「痛かっただろ」とさらに挑発する。左フック2発から右アッパーを繰り出すガラス。
2Rも左右ミドル&ローを蹴っていくハムーチェに対し、ガラスはガードの上からでもワンツーを叩き込む。ガラスはワンツーから左ボディ、ハムーチェは左フックからヒザ蹴り。両者ともワンツーが届く至近距離でパンチを打ち合う。しかし、両者ともブロックが固く顔面クリーンヒットが奪えない。ハム―チェの蹴りがポイントとなったか。
3R、ハムーチェは左右ロー、ガラスは左右ボディ。両者至近距離で打ち合いを続ける。互いにブロックで相手のパンチを受けていたが、ガラスの左ボディでハムーチェがあからさまに下がって行き、ガラスは攻撃をまとめにいく。ガラスが左ボディを打って試合終了。
判定は5-0でハム―チェが勝利したが、ガラスは判定に不服そうだった。
[nextpage]
▼第8試合 Heavyweight Grand Prix準決勝2 3分3R〇リコ・ヴァーホーベン(オランダ/GLORY世界ヘビー級王者)=122.8kg判定5-0 ※30-26×5×ナビル・ハチャブ(モロッコ/GLORY世界ヘビー級8位)=157.1kg※ヴァーホーベンが決勝戦へ進出。
1回戦でベンジャミン・アデグブイに判定勝ちしたハチャブと、ソフィアン・ラドウーニに判定勝ちしたヴァーホーベンが準決勝で対戦。かつて、ハチャブはヴァーホーベンの試合を客席で見ていて憧れていたという。ヴァーホーベンは花道をダッシュで駆け抜けてのリングイン。
1Rが始まると同時にハチャブは左右の連打で前へ出る。そして近付くと相手に身体を預けるようにしてコーナーへ押し込む。離れるとヴァーホーベンが左右の三日月気味の前蹴り。前に出るハチャブはヴァーホーベンがロープを背負うと左右フック。左三日月を突き刺すヴァーホーベンだが、ハチャブの腹に効くのかどうか。ハチャブは近付くと身体を預けるクリンチでヴァーホーベンを削りにかかる。
2R、ヴァーホーベンは左インローからヒザをボディへ突き刺す。前へ来るハチャブをアッパーとフックで迎え撃ち、ヒザへつなぐ。そしてここでハチャブにはホールディングで注意が与えられた。ジャブを顔面とボディへ放つヴァーホーベンは三日月、ハイキック、前蹴り、ワンツー、ヒザとハチャブにヒットさせていく。スピードを重視した打撃でヒットを重ねるヴァーホーベンにハチャブはまたもクリンチしてしまいついに減点をとられる。
3R、ジャブを突き続け、前蹴りとハイキックを放つヴァーホーベン。ハチャブがクリンチしてくるとヒザを蹴り、離れると右ストレートでハチャブを仰け反らせる。左右の三日月気味の前蹴りとジャブで距離をとりつつ、右ローを狙い撃ちにするヴァーホーベン。右ストレートから右アッパー、そしてヒザ蹴り。さらに左ミドルを蹴るヴァーホーベン。
判定を待つ間に、ヴァーホーベンとハチャブのセコンドが揉め事となり、ハチャブのセコンドがヴァーホーベンにハイキックを見舞おうとしたことからヴァーホーベンが激怒。リング上には多くの人間がなだれ込み大混乱となり、騒然となった。
かなり長い時間揉め事が続いたが、ハチャブの戦い方には付き合わず、自分の戦い方を貫いたヴァーホーベンが判定待ち。リグターズの待つ決勝戦へ進出した。
勝利者インタビューを受けたヴァーホーベンは「(試合は)俺にとって簡単なこと。アイツはレフェリーが俺を贔屓していると因縁をつけた。ジャマル(ハチャブのセコンド)は追放するべきだ。選手に手を出すなんて許せない」と怒りをぶちまけた。
[nextpage]
▼第7試合 Heavyweight Grand Prix準決勝1 3分3R〇レヴィ・リグターズ(オランダ/GLORY世界ヘビー級2位)=112.9kg判定5-0 ※48-47×5×バフラム・ラジャブザデ(アゼルバイジャン/GLORY世界ヘビー級7位)=99.3kg※リグターズが決勝戦へ進出。
1回戦でウク・ユルジェンダルに先制のダウンを奪われながらも逆転KOに成功したリグターズと、元ヘビー級暫定王者タリク・"クッキー"・オサロを破ったラジャブザデの準決勝。
1R、17cmの身長差をものともせず、ラジャブザデはスピードを活かしてのワンツーから飛びヒザ蹴り。さらに回転の速い左右フック。リグターズはジャブと右ロー。リグターズの飛びヒザ蹴りが胸元にヒットし、バランスを崩したラジャブザデが転倒してこれがダウンに。ラジャブザデは両手を広げて肩をすくめ、抗議するが受け入れられず試合続行。両者とも急に見合いとなったが、リグターズが右ストレートを放つとすぐにラジャブザデが左右フックを回転させる。右カーフを蹴るラジャブザデ。リグターズのインローがローブローとなるが、ラジャブザデの方にブーイングが浴びせられる。
2R、リグターズが二段跳び蹴りを顔面にヒット。ラジャブザデは左右フックを回転させるが、リグターズの顔の手前で空を切る。ラジャブザデが懐に入り込むと、リグターズは首相撲からのヒザ蹴りに捉える。かと思えば思い切り右フックを振り抜く。
3R、もう後がないラジャブザデは左右フックを回転させるがクリーンヒットは奪えない。リグターズはジャブ、右ストレート。リグターズはブロックを固めて無理して打ち合わない。ラジャブザデが入り込むとクリンチ。しかし、そのクリンチを振りほどくようなラジャブザデの右フックがヒット。リグターズがフラつき、ラジャブザデが距離を詰めて右フックを打っていく。明らかに息が苦しそうなリグターズ。ラジャブザデは距離を詰めて左右連打からボディへの飛びヒザ蹴り。これでリグターズが転倒し、立ち上がるのが遅れたためダウンがコールされる。リグターズが立ち上がったところで試合終了。
判定は5-0でリグターズが勝利も、場内にはブーイングが渦巻く。ラジャブザデがコーナーに登って勝利をアピールすると逆に大歓声が沸き起こる。地元でのブーイングに戸惑いながらも、リグターズは「タフな試合だった。俺が2Rとって俺の勝ちだ」とアピールした。
[nextpage]
▼第6試合 GLORY世界ライト級タイトルマッチ 3分5R〇ティジャニ・ベスタティ(オランダ/王者)=69.6kg判定5-0 ※50-45、50-44×4×エンリコ・ケール(ドイツ/挑戦者・同級1位)=69.7kg※ベスタティが5度目の防衛に成功。
海人の挑戦を退けて日本にもその名を轟かせたGLORY世界ライト級王者ベズタティが5度目の防衛戦に臨む。挑戦者は同級1位ケール。
王者ベスタティは2016年からGLORYに参戦し、 ストヤン・コプリヴレンスキー、シッティチャイ・シッソンピーノン、マラット・グリゴリアンには敗れるも高い勝率で、2021年9月には王座決定戦でエルビス・ガシを破りGLORYライト級王座に就いた。同王座は2022年5月にジョシュ・ジャンシーをKO、同年10月にコプリヴレンスキーにリベンジを果たして2度の防衛に成功。2023年3月には同時二階級制覇を狙ったGLORY世界フェザー級王者ペットパノムルンの挑戦もKOで退け、3度目の防衛に成功。8月には海人を判定で破り4度目の防衛に成功した。戦績は25勝(9KO)4敗。
挑戦者ケールは2013年6月にMixFightフルムエタイミドル級世界王座(-72.5kg)とISKAオリエンタルルールミドル級世界王座(-75kg)を獲得し、2014年にはK-1 GLOBAL主催のK-1 WORLD MAX CHAMPIONSHIPトーナメントで優勝を果たした。2019年1月からは『ONE』に参戦し、フェザー級キックボクシング・ワールドグランプリにも出場したが準々決勝でジャバル・アスケロフに敗れている。ダビット・キリアとタイフン・オズカンに連敗を喫し、ONEを離脱。2023年12月のGLORYでアルマン・ハンバリアンを左ミドルキックで戦闘不可能に追い込みTKO勝ちすると、リング上でベスタティに挑戦アピール。ベスタティもリングに上がって激しい舌戦を展開した。戦績は53勝(31KO)15敗2分。
1R、サウスポーのケールは左ストレートを伸ばしながら前進、ベスタティはテンカオで迎え撃つ。右ローを蹴るケールをベスタティはジャブで迎え撃ち、右ハイを軽くヒットさせる。さらに突き刺すような前蹴り。頭を低く下げながらパンチを打つケールに、ベスタティはヒザを突き上げる。さらに右ミドルで突進を止め、さらにテンカオと前蹴り。徹底的にボディを攻めていった。
2Rもパンチを出しながら前へ出ようとするケールをテンカオで迎え撃つベスタティ。右の突き刺すような前蹴りが面白いように決まる。その前蹴りをフェイントにしてのテンカオも突き刺す。ベスタティが顔面前蹴りからの足払いでケールをコカすと、立ち上がったケールは『ちょっと待ってくれ』というようなゼスチャーを見せ、試合を止めてしまったためダウンがコールされる。ケールは左目がほとんどふさがってしまった。
3R、左ローを連打するケールにベスタティは右フック、左フックからの右アッパー。ベスタティは左手を伸ばして距離をとり、前蹴りやミドルでも距離を作る。ベスタティは右ハイキックを連発し、右フックも連発。再び足払いでケールをコカしたベスタティだが、今度は注意を受ける。
4R、ケールの左ストレートをかわし、テンカオを突き刺してベスタティ。右の三日月気味の前蹴りも突き刺す。ケールの攻撃はかわし、一方的に蹴りを当てていくベスタティ。ワンツー、左ハイキック、前蹴り、飛びヒザ蹴りとベスタティがケールを痛めつけるだけのラウンドとなった。
5R、ケールの連打を鮮やかにかわしながらベスタティはパンチを当てていく。離れれば右の前蹴り。打っては回り込み、また打っては回り込む。最後は左右フックを連打して余裕を見せつけ、ベスタティがテクニシャンぶりを見せつけて試合終了。
ほとんど相手に触れさせることなくパーフェクトな試合運びで完勝したベスタティ。「いい気分だ。体調が悪く病院に行ったが試合をキャンセルするわけにはいかなかった。試合は遊んだ。余裕に見えたかもしれないけれど、簡単な試合ではなかったよ」と、体調が悪かったと告白した。
[nextpage]
▼第5試合 Heavyweight Grand Prix1回戦第4試合 3分3R〇リコ・ヴァーホーベン(オランダ/GLORY世界ヘビー級王者)=122.8kg判定5-0 ※30-27×5×ソフィアン・ラドウーニ(フランス/GLORY世界ヘビー級5位)=104.5kg※ヴァーホーベンが準決勝へ進出。
ヴァーホーベンは、2021年の『GLORY COLLISION 3』でのジャマール・ベン・サディック戦以来、GLORYのリングから遠ざかっていた。ヒザの負傷により、2023年初めの復帰戦はお預けとなったが、11月にGLORYにカムバック。暫定王者オサロとの王座統一戦に勝利した。
バダ・ハリ、グーカン・サキ、ベンジャミン・アデグビュイ、ピーター・アーツ、エロール・ジマーマンなど数々のレジェンドに勝利し、キックボクシング界の頂点に上り詰めた34歳は、GLORY史上最多の王座防衛記録(11回)を持ち、現在16戦無敗という驚異的な記録を10年近くも続けている。戦績は61勝(20KO)10敗。
ラドウーニは2018年にAFMTナショナルタイトル(-91kg)、2019年にWKNヨーロッパ王座(-95kg)、2022年6月にはWAKO世界王座(+94.1kg)と3つのタイトルを獲得。2023年3月にGLORYに初参戦すると、距離をとったテクニシャンぶりを発揮してランカーのナビル・ハチャブから判定勝ちを収めた。5月にはアデグブイから勝利を収めてGP出場権を獲得。戦績は35勝(17KO)2敗1分。
1R、大歓声に迎えられたヴァーホーベン。サウスポーのラドウーニにサウスポーに構え、ラドウーニがオーソドックスになるとヴァーホーベンもオーソドックスになる。頻繁にスイッチするラドウーニにヴァーホーベンは鋭い前蹴りを突き刺し、サウスポーからの左ロー。オーソドックスになっての右カーフ。ヴァーホーベンは左右ローと三日月蹴り、ワンツーからつかんでのヒザと最後にしっかりとポイントを取りに行った。
2R、ラドウーニはジャンピングミドルキックを放つが、ヴァーホーベンは軽くかわす。距離を詰めたヴァーホーベンはつかんでのヒザ蹴り。離れると左三日月蹴りからの左ヒザ蹴りとボディを攻めたかと思えば、右ローを蹴る。ヴァーホーベンはヒザ蹴りが突破口と見たか、パンチの連打で距離を詰め、ヒザを突き刺す。右ミドルを蹴ると見せかけて右ストレートをヒットさせるヴァーホーベン。ラドウーニもスーパーマンパンチからの足払いでヴァーホーベンを転倒させる。
3R、ヴァーホーベンが右クロスをヒットさせ、そのまま組んでのヒザ蹴り。ラドウーニの左ローに右ストレートを合わせるとラドウーニがフラつき、すかさずハイキックからパンチをまとめるヴァーホーベン。突き刺すようなボディへの前蹴りを嫌がり、下がるラドウーニへヴァーホーベンが右ストレートをヒット。パンチから組んでのヒザ、離れると左右の突き刺すような前蹴りとヴァーホーベンの一方的なペースに。ラドウーニは後退を続け、左ミドルを蹴るがヴァーホーベンを崩すことは出来ず。
ヴァーホーベンがテクニシャンぶりを発揮して完封勝利。疲労の色が濃いことが気になるが、ハチャブの待つ準決勝へ駒を進めた。勝利者インタビューでは「彼は強いキックボクサーだったし、ハチャブに勝っている。次もダメージを避けてその先を目指す」と優勝を宣言した。
[nextpage]
▼第4試合 Heavyweight Grand Prix1回戦第3試合 3分3R〇ナビル・ハチャブ(モロッコ/GLORY世界ヘビー級8位)=157.1kg判定5-0 ※29-28、30-27×4×ベンジャミン・アデグブイ(ルーマニア/GLORY世界ヘビー級9位)=119.3kg※ハチャブが準決勝へ進出。
トーナメント最重量のハチャブは“ザ・タンク”の異名を持ち、134kgの巨漢ながらよく動く。2023年2月のGLORY初参戦ではウク・ユルジェンダルに勝利も、2023年3月の2戦目ではソフィアン・ラドウーニに敗れた。6月にウラジミール・トクタシノフを判定で破り、12月の予選でニコラ・フィリポビッチに判定勝ちで出場権を手にした。バダ・ハリとは同門。27勝(4KO)4敗1分。
アデグブイは空手、ボクシングを経験して2011年3月にプロデビュー。2012年にはK-1 GLOBALと契約し、10月に東京で開催された『K-1 WORLD GP FINAL16』に出場して勝利している。『SUPERKOMBAT』を経て2014年6月からGLORYに参戦し、リコ・ヴァーホーベンのヘビー級王座に2度挑戦するがいずれも敗れている。2020年12月にはバダ・ハリにKO勝ち。2022年8月はジャマル・ベン・サディクにKO負け。2023年5月にはGP出場を懸けてソフィアン・ラドウーニと対戦したが、判定負けを喫した。戦績は35勝(20KO)7敗。
1R、巨体を躍らせて前に出て行くハチャブが右ストレート。アデグブイはテンカオを突き刺し、下がりながらも右ストレートを当てる。右へ回り込むアデグブイだがハチャブはその足についていき、コーナーへ詰めての連打。ジャブで距離をとろうとするアデグブイは右ミドル、前蹴りから右ストレート。それでもハチャブは距離を詰めての左右フック、ワンツーでアデグブイを下がらせる。場内からはハチャブコールが沸き起こる。
2R、アデグブイのジャブ、ワンツー、前蹴りをモノともせずブロックを固めて前へ出て行き、ワンツー、右フックを浴びせるハチャブ。アデグブイはヒザをアゴまで突き上げるがハチャブはギリギリのところでかわす。
3R、右へ回り込もうとするアデグブイだがハチャブはすぐにコーナーへ追い詰め、ワンツーを繰り出す。ハチャブの突進にスタミナを奪われたか、覇気がないアデグブイはハチャブの右カーフで転倒。ハチャブは右アッパーを突き上げ、左右フックを打つ。ハチャブがこのラウンドで多用するクリンチからの押し込みに、アデグブイは体力を削られているようだ。左右フックを打ち、身体を預けるように押し込むハチャブ。
試合終了と共に大歓声が沸き起こり、ハチャブはその歓声に応える。判定はその通り、ハチャブの完勝となった。
[nextpage]
▼第3試合 Heavyweight Grand Prix1回戦第2試合 3分3R×タリク・"クッキー"・オサロ(ナイジェリア/元GLORY世界ヘビー級暫定王者)=124.7kg判定0-5 29-28×2、30-28、30-27×2〇バフラム・ラジャブザデ(アゼルバイジャン/GLORY世界ヘビー級7位)=99.3kg※ラジャブザデが準決勝へ進出。
オサロはGLORYデビューイヤーにKOに次ぐKOという驚異的なパフォーマンスを6度披露し、新たなプロモーション・スターとなった。ヘビー級4人トーナメントでは、準決勝でムラト・アイグンをKO。2023年6月の『GLORY COLLISION 5』のメインイベントではアントニオ・プラジバットを破壊的なKOで破り、暫定ヘビー級王座を獲得している。11月にヴァーホーベンとの王座統一戦に臨んだが、判定で敗れた。身体ごと打ち込むアッパーが主武器。戦績は25勝(13KO)3敗1分。
ラジャブザデは4年ぶりのGLORY復帰戦となった2023年5月、ルイス・タバレスを1Rで右ハイキックKOし、存在感を示した。8月のグランプリ予選トーナメントではモハメド・アミンにTKO勝ち、ユルジェンダルに判定勝ちで優勝。戦績は65勝(58KO)1敗。
1R、最軽量のラジャブザデはスピードを活かしていきなりの右ハイキック。オサロはジャブを突き、左ミドルを蹴る。飛びヒザを放つラジャブザデは、右カーフも狙い撃ち。オサロの左右フックをブロックするが、身体が左右に揺れる。ラジャブザデの左右フックにオサロが右ストレートを返す。手数でラジャブザデが上回った。
2R、オサロが右ストレートで入って来るところへ左右フックを回転させるラジャブザデ。左フックで2度ヒットを奪う。ミドルの蹴り合いからまたもラジャブザデが左右フックを回転させてオサロを下がらせる。オサロの右ストレートに右アッパーを合わせるラジャブザデ。さらに右フックをヒットさせてオサロを下がらせると顔面へ前蹴りを叩き込んだ。
3R、ラジャブザデの右フックを受けて転倒するオサロ。気合いの声を発しながらワンツーを放つが、ラジャブザデを捉えることが出来ない。オサロの左右フックはラジャブザデがダッキングでかわす。右カーフ、ジャブでオサロを下がらせるラジャブザデ。オサロのパンチは頭を振ってかわし、無理に打ち合わずクリンチに持ち込む。右ストレートからの左フックを決めたラジャブザデは、オサロの左右フックの返しをしっかりダッキングでかわし、パーフェクトな試合運びで試合を終えた。
まさに小よく大を制す(とはいえラジャブザデも100kg近い)戦いぶりで元暫定王者を破り、ラジャブザデが1回戦を突破。リグターズの待つ準決勝へ駒を進めた。
勝利者インタビューを受けたラジャブザデは「とても嬉しい。予定通りだ。俺が優勝する、俺がチャンピオンだ!」と高らかに宣言した。
[nextpage]
▼第2試合 Heavyweight Grand Prix1回戦第1試合 3分3R〇レヴィ・リグターズ(オランダ/GLORY世界ヘビー級2位)=112.9kgKO 2R 1分52秒×ウク・ユルジェンダル(エストニア/GLORY世界ヘビー級6位)=113.9kg※リグターズが準決勝へ進出。
2020年12月にGLORYデビューしたリグターズは、3度のKO勝ちを収め、一躍トップクラスに躍り出た。2022年10月に現GLORY世界ヘビー級暫定王者タリク・オサロに判定勝ち。2023年10月のGLORYグランプリ ヘビー級特別予選でイオン・タブルチャンヌに初回TKO勝ちで出場権を手にした。戦績は15勝(7KO)1敗。トーナメント出場者の中で最長身。
“ブルドーザー”の異名を持つユルジェンダルは、2023年5月の試合で破壊的なパワーパンチによる1R KO勝ちを収め、その実力を皆に見せつけた。8月の「 GLORYヘビー級グランプリ予選トーナメント」でも1回戦でEnfusion世界ヘビー級王者マーティン・テルプストラを初回KOしたが、決勝戦でバフラム・ラジャブザデに判定負け。しかし、10月にバダ・ハリをTKOで破り出場権を獲得した。刑務所入りしていた過去も持つ。戦績は20勝(16KO)8敗。
1R開始と同時に打ち合った両者、ユルジェンダルが右フックをテンプルにかすめてダウンを奪う。立ち上がったリグターズは右カーフキックを蹴っていく。いったん落ち着いたユルジェンダルはジャブから右カーフ、リグターズはジャブを突き、ワンついーを打つ。ユルジェンダルの連打の途中に大きな右フックを合わせに行くリグターズ。圧をかけるユルジェンダルが強烈な左右フックで、ガードの上からでもリグターズの巨体を揺るがせる。ラウンド終了直前、リグターズが左右フックでユルジェンダルをグラつかせた。
2R、リグターズが前蹴りから左ハイキックに同じような軌道で蹴りを変化させる。ジャブ、右カーフ&右ローで追い詰めていくリグターズは、右カーフで意識を下に向けさせての右フックでダウンを奪う。立ち上がったユルジェンダルだが足元が明らかにフラついており、リグターズが逆転KO勝ちに成功した。
[nextpage]▼第1試合 Heavyweight Grand Prixリザーブバウト 3分3R×ミハウ・ブワウジエヴィッチ(ポーランド)=114.9kgTKO 2R 2分55秒 ※右フック〇チハド・ケペネック(トルコ)=110.4kg※ケペネックがリザーバーに決定。
昨年12月に対戦し、前回はケペネックがスプリットデシジョンで勝利している。
1R、両者左右ローを蹴り合い、ケペネックは左右フックを思い切り振り抜く。ブワウジエヴィッチはパンチから左ミドル、右フックからの左ローで奥足を蹴る。ブワウジエヴィッチのワンツーからの右フックに大きく後退するケペネック。一時防御にまわったが、すぐにケペネックは回復して前へ出る。ボディを叩いていくケペネックは前蹴りでもボディを攻める。
2R、ケペネックが前へ出て右ローを蹴り、思い切り左右フックを振り抜きボディも打つ。ブワウジエヴィッチはガードを固めて打たせるとワンツーを打ち返すが、ケペネックの左フックで大きく頭が動く。仕留めに行くケペネックが右アッパーを突き上げ、さらにフックで頭を揺らすとまたも左フックからの右アッパー。これでダウンを奪う。ラッシュをかけるケペネックが左右フック連打の右フック2連打でダウンを奪いKO勝ちした。