2024年2月23日(金・祝)東京・後楽園ホール『RISE 176』の見どころを伊藤隆RISE代表が語った。インタビュアーは元K-1プロデューサーの中村拓己。
RISEは白黒しっかりつける大会
――今日はRISEの公式YouTubeチャンネルの企画で、2月大会の見どころをインタビューさせていただきます。2月23日『RISE 176』のコンセプトや見所をお伺いしたいのですが、今回の大会はすごく若い選手が多い大会になりましたけど、改めてこの大会がどんな大会になったのかを教えていただけますか?
「21周年目の大会なんですけど、将来を担う若い選手を集めました」
――いろいろマッチメイクのタイミングもあったと思うんですけど、偶然こういうメンバーが2月に揃った感じなんですか?
「そうですね、ビッグマッチが3月17日にあるのですが、昨年も旗揚げ記念日は若手中心のマッチメイクをしました。それですごくいいイベントができたので、今年も昨年と同じようなマッチメイクをしてみたいと思いました」
――こういう記念の大会で未来を担う選手たちで一つの興行ができるという事はいろんな思いもあると思うんですけど、その辺はどうですか?
「やっぱり数年後には彼らがRISEのメインを張ってくると思うので、そういう意味でも2月23日はやる意味がありますね」
――昔の大会や歴史を振り返ると、若い選手とかまだあまり日の目を見なかった選手たち、あとは地方の選手とかそういった選手たちを積極的に呼んで試合を組んでいた印象があります。その辺は伊藤さんも意識されていたんですか?
「若い選手とか地方とかは特になくて上がってきた選手たちがたまたま地方で、若い子たちはアマチュア大会の『RISE Nova』があって、その後また育成の試合があってRISEに出るので、エスカレーター式に上がってくるシステムになっていて、その中に関西の子や地方の子がいたって感じです」
――伊藤さんもいろんな選手たちを見てきたと思うんですけど、今の若い選手の特徴とかよく目につく所っていうのはどんなところにありますか?
「とにかく上手いなっていうのはあります。今はいろんな選手の試合を映像で見て学べるし、練習の仕方もあるでしょうし、いろんな情報がいっぱいあるじゃないですか。その部分でいろんな吸収するものがあるんじゃないかな」
――例えばアマチュアの試合とかを見てて「もうこんなレベルなんだ」って驚くことはありますか?
「本当にもう子供なんかすごいですね。僕らの時代のレベルとは雲泥の差です」
――みんなプロになれるぐらいの感じですか?
「今の子達は僕らの時代だったらデビュー戦でタイトルマッチ出来るレベルですよ」
――そういう上手さもある中で、さらに最近思うのが少し前は上手いというかポイント取るのが上手い選手が多かったところに、最近倒せるとかKOする力を持った選手たちも出てきたのかなと思うんですけど、その辺は感じますか?
「数年前までは本当に上手い選手で、でも倒せないっていうのが多かったです。ここ最近はそこにプラスして倒していく、RISEが求めてるものに対して答えてくれる選手が増えてきました」
――それは単純なパワーではなく戦う姿勢ということでしょうか?
「リスクを背負うことによって倒せると思うんですけど、そこを行けるかどうか。そういう選手がお客さんを感動させられると思うんですけどそういう選手が増えてきましたよね」
――さっきのシステムだけじゃなくてRISEの戦い方みたいなものも、若い選手や今の選手たちに浸透してる感じですか?
「RISEは白黒しっかりつける大会だと。もちろんKOが良くて判定だったらダウンの1個、2個。昨年の試合が180弱あったんですけど、そのうちKOが68試合ぐらいあって、3試合に1回はKO決着なんです。そういうイベントなのでその部分も選手たちは理解してるのかなと思います」
――じゃあダウンだけで言ったらもっと?
「もっとすごいですよね」
――そういう中で去年RISE NEW WARRIORSトーナメントを2階級でやりましたけど、あの2階級を見て伊藤さんはどんな感想を持ちましたか?
「未来が見えたなと思いました。まだ本当に10代から20代前半。25歳以上の選手たちは普通はまだ若手なんですけど、RISEの中ではもう中堅から上のクラスの年代になるんですね。いずれ若い世代の子達も身体が大きくなるでしょうし、階級も上がってくるでしょうし、RISEの主力選手になってくるのかなと。あとファンがすごいんですよ、女の子のファンが。普段は細くてちっちゃいけど、試合すると強いっていうギャップなんですかね。彼らが出るとやっぱ会場の雰囲気も変わっちゃいますし面白いですね」
――ビジュアルがみんないいじゃないですか。やっぱり見られることとかもみんな意識してるんですかね?
「それはあるんじゃないですか。それがプロとして大切なので。選手によっては女子高生のファンとかたくさんいるんですよ。後楽園のエレベーターホールのところで出待ちをしてるので、昔僕らの時代にはなかったなって(笑)」
――それはちょっと意外でした。どうしてもファンがついてくるのはもっとキャリアを重ねてからっていうイメージだったんですけど、今の子たちは露出の回数とかSNSとかで注目されるんですかね。
「『推し』なんじゃないですか。私の推しの選手みたいな。だからもう最初からこの子を推すみたいな感じでずーっと追っかけてくるんじゃないですかね」
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数島は試されている
――今そういうRISEの流れがある中で2月大会はメインイベントが数島大陸選手とクンスック選手の試合ですけど、数島選手は昨年10月にチャンピオンになって、今回タイ人との対戦というところでまずこの試合を組んだ意図を教えてください。
「先ほど話したように2月23日は若手中心の中で、若手の中で今トップが数島なので、チャンピオンになって第一戦ですごい重要だと思います。彼自身が我々やファンに求められてるものに応えられるのか、そういうところをしっかり見たいです」
――伊藤さんから見て数島選手の良さや特徴ってどんなところにありますか?
「やっぱり攻撃的なところと倒せるところじゃないですか。非常に攻撃的で倒しに行く姿勢があるので、そういう選手がトップに立ってるというのは非常に良いことだと思います」
――相手がタイ人の選手っていうところでは、ファイターとしてもチャンピオン一発目の試合でこういう強敵が相手という部分もテーマがあると思うんですが、ここはこういう相手を当てようと思ってたんですか?
「いろいろ考えたんですけど数島もある程度の相手とやってる中でトップなので、ちょっとチャレンジマッチというか。あの階級だとやっぱり強いのはタイ人なのでそれでやらせてみようかな。試されているというのもわかるだろうし、そういう試合をしてもらいたいなという我々の気持ちもあります」
――競技者としてもタイ人と真剣勝負の中で戦うのは成長に繋がったり、一つのターニングポイントになると思います。伊藤さんも現役時代にタイ人と戦うということはどうお考えですか?
「ターニングポイントというより数島はタイ人とはあまりやったことないと思うので、戦績も彼の3倍4倍あるので。その時に彼がどこまでのものを出せるかだと思うんですよね。キャリアとしてはすごくいい経験だし。ここの結果次第で彼の今後の方向性というか、スパって行っちゃうとバッていく可能性もあるし、苦戦したらそこを修正していかなきゃいけないし、テストマッチじゃないですけどそんな感じで私は見てます」
――この試合ももちろんですしここから数島選手がどうなっていくかっていう。
「それを彼自身に試合で見せてもらいたいなって思いがあります」
――タイ人とやる意味では長谷川選手とサンチャイ選手もありますけど、この試合は伊藤さんから見てどうですか?
「サンチャイって非常にテクニシャンで相手の光を消すのが上手なんですよ。長谷川はどっちかというと攻めなので、前回トーナメントの決勝で負けてしまいましたけど、ここでどれだけ成長してるのかを見たいです。長谷川にとってはサンチャイは非常にやりづらいですよ。ぶつかってくれないので。その部分で長谷川がどういう風に対応するかを見たいです」
――数島選手の場合は勝ってこういう相手にチャレンジするという試合で、長谷川選手は負けてまたチャレンジという意味では、負けた選手がここから這い上がってくるかって部分でも注目ですか?
「彼のこれからの復活ストーリーと言いますか、将来的にはタイトルにチャレンジしていくと思うので、そういうところをやっぱり見届けたいですね」
――同じ日本人vsタイ人という部分でこの2人の試合を見比べられるかなと思うんですけど、その辺で二人も競って良いものを見せてほしいですか?
「それはもちろんです。お互いどっちが良い試合できるかっていうのがあるので、それはいい試合した選手が勝ちですよね。やっぱり我々と、もちろんお客さんにも魅せる。参戦選手もそうですけど、私たち『RISE』とも戦ってほしいですよね、『伊藤見てろよ!』みたいな」
――対戦相手に対してだけじゃなく主催者に対しても勝負というか。
「こういう相手じゃない、もっとすごい相手だと。この選手とやって勝ってしまったらもっと強い相手をぶつけないといけないじゃないですか。日本人とやらせられないレベルだなとかそういうのを見せてほしいですね」
――そういう意味ではいろんな意味でそこの中に勝負があるわけですね。他にも今大会で言うと塚本選手とJIN選手の試合だ、末國選手と麗也選手の試合、安本選手も年齢的にはまだ若い選手ですし、他のカードの中で伊藤さん的に特に注目している試合はありますか?
「やっぱり塚本、安本です。期待された部分もあったんですけど伸びきれていない、2人とも良いところまでは行ってるんですけど、イマイチ伸びきれていないじゃないですか。だからこそ若手の中で思いっきり輝いてもらえたらと思います。選手それぞれいろんな理由がありますけど、やっぱり期待されてる選手ではあるんじゃないですか。その中で何かが止まってるんですよね。それが何かは分かりません、思いきりなのか彼ら自身の考え方なのか、何かが引っかかってるような気がします。それを取り払うような試合をしてもらいたいです」
――やっぱり若くて勢いがあってもその状況によっていろんなシチュエーションも違うから、そういったところでそこを超えられるかどうか、それぞれみんな課題やテーマが分かれてる大会なんですか?
「塚本と安本の2人以外にも選手はいますけど彼らもまさに同じようなテーマですね」
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2月23日を見て3月17日を見た方がいい
――2月大会もそういった選手が集まる中、3月の「RISE ELDORADO」にも若い選手たちたくさん出るので、そういった選手たちについてもちょっと触れていただきたいと思っていて、花岡竜選手、陽勇選手、田中佑樹選手も2000年以降に生まれですし、松本天志選手や那須川龍心選手、有井渚海選手と松下武蔵選手、この辺もまだ全然若い選手たちですけど、大会は違いますけどこの選手たちはどういう風に見てますか?
「もちろん2月23日同様期待してますし、近い将来彼らもRISEのトップに立つと思うんですね。特に対抗戦に出した陽勇と田中、彼ら自身も全勝で新人王を経験してて、ある意味ここは彼らが2、3ステップ上がるためのマッチメイクです。龍心と松本天志はお互いリターンもあるけどデメリットもいっぱいあるので、ある意味厳しいマッチメイクなのかな。でも勝負ってそういうものなので、ビッグマッチらしい試合が組めました。有井と松下は前回2人とも負けてるんですけど、僕はいつも言ってるんですけど『負けたら終わり』じゃなくて、やっぱりいい試合したら負けてもどんどん試合を組むよって。前回2人とも本当に良い試合したのでそういう意味でもこの2人のマッチメイクを組みました」
――新人王の2人は対抗戦の相手のこともあったと思うんですけど、試合のテーマって部分では彼らにもちょっと刺激を与えるというか?
「ここで刺激をもらってそれをクリアして一気に行く選手っているじゃないですか。そういう部分を見たいですね」
――この辺の世代とか上の選手って化ける瞬間って見ててやっぱりありますか?
「あると思いますよ。まさに対抗戦ですし、龍心も今くすぶってますけどもしかしたら松本天志を倒すことが出来たら上に行くかもしれないですし、色んな仕掛けをかけてるっていう感じですね(笑)」
――各選手にここを勝ったり良い試合すると何か変わるんじゃないかっていう。
「どうなるかわからないけどそこに仕掛けを置いています」
――でもそういう仕掛けを置いて試合を組んでると見てる伊藤さんも予想してない結果だったり内容だったりで跳ね方する選手もいるんじゃないですか?
「それがYA-MANです。YA-MANはオープンフィンガーやるまでは全然注目されてない選手だったんで。元々オープンフィンガーも彼のためやったわけじゃなくて、対抗馬として彼を入れたら彼が跳ねました」
――いわゆる青コーナー側で使ったと。
「そうです」
――先ほどの2月も含めてこの中からこの試合を経て選手がどう変わっていくか、そういった意味でも2月、3月いろんなマッチメイクがある中で、あえて若い選手に期待することとか、こういう試合を見せてほしいっていうものはありますか?
「今の子達って育ちがいいというかRISEのファイターは良い子ばっかりなんですよ。良い意味でもっともっとガツガツギラギラしてほしいです。オラつけとは言わないですけど、もっとガツガツとギラギラしてほしいというか、そういう部分では塚本なんかそうですけどそれで実力が伴ったら素晴らしくなるだろうし、安本なんかももっともっとギラギラガツガツしててもいいのかなって。そういうのが見てて面白いじゃないですか」
――そういった物って持って生まれたもんなんですか?
「持って生まれ持ったものもあるだろうけど、もっと自己主張するべきですね」
――例えば天心選手とかはやっぱギラついてたんですか?
「野心というんですかね、欲がすごいというか。これやったら次これ、また次これって、クリアしていくんですよ彼は。ここをクリアしたらこうしようっていうのを有言実行していく。それをクリアしていけばどんどん試合内容だったりいろんなことが変わってくるじゃないですか」
――伊藤さんからしてもこうなりたい!とかこうしてください!ってどんどん言う方が試合の組みがいもあるんじゃないですか?
「わからない部分もあるじゃないですか。最近僕すごい選手と話すようになったんですけど、そういうのも必要だなと思いました。話すと上手く意気投合できるというか」
――じゃあ若い選手たちはもっと野心を持って?
「もっともっと野心を持ってギラついてほしいです」
――あとは僕の立場であえて聞きたいことだったんですけど、上に選手がいると若い選手って「自分たちはこのぐらいでいいかな」みたいなちょっと遠慮がちなところもあるのかなと思っちゃうんですけど、もっと若いとか下の世代じゃなくて「自分たちが主役だ」ぐらいの気持ちを持って戦ってお客さんにも見せていってほしいという気持ちはありますか?
「もちろんですよ。やっぱり上の選手を食わないとダメですね。試合は順番もありますけど、やっぱりその中で一番いい試合したやつがメインだと思うので、ある意味野心というか思いですよね。絶対もう来年にはここのチャンピオン食ってやると、そういう選手がたくさん欲しいです」
――そこも含めてやっぱりこの選手たちはまだ若いですし、ずっとこれからも戦っていくと思うんですけど、いずれ彼らは何年後かにはRISE ELDORADOのメインとか、そういう選手たちになっていく可能性を持ってると思いますか?
「それはもちろんです。間違いなくなりますし、先ほど2月23日の話をしたけど昨年もそうですし今年も若手中心でやってますけど、ここに出てる選手たちが数年後多分ELDORADOに出てますし絶対そこのメインになってくると思います。2月23日はそれもセットで見た方が絶対楽しいです。青田買いじゃないですけど、やっぱりRISEは後楽園大会を見るからこそビッグマッチが面白いので」
――それで言うと年齢とかキャリアもありますけど田丸辰選手とかもう本当に1年後2年後にこういう選手になったわけじゃないですか。決して今の選手たちにとっても現実味がないことじゃないですよね。
「彼は先日22歳になりましたけど、まだ22ですから。20代前半でトップでやってるので、だからみんなにチャンスがあります」
――トーナメント優勝してから発言とかも変わってきましたよね。
「一時いろいろとグラついてたけど、なんて言うかチャンピオンとしての意識が変わったんですかね。雰囲気も変わってましたし頼もしくなりました」
――今後に繋がるっていう意味でもやっぱりこの選手たちのライバル関係とか勝ち負けとかがすごいストーリーに繋がっていくじゃないですか。感情移入するという意味でも今のうちから見といた方がやっぱりいいですよね?
「2月23日を見て3月17日を見た方がいい。そうすると本当にこれとこれがライバルだったり、こっちに勝ってるけど、こっちの負けたやつに勝ってるとか色んなストーリーがあるので、そこも本当に楽しめます」
――ここまでたくさんお話聞いてましたけど改めて2月大会に伊藤さんが期待すること、選手たちにも期待すること含めてどんな大会になってほしいと思いますか?
「やっぱり各選手に自分の存在を大いにアピールしていただきたい。『俺がRISEを引っ張っていく』そういう選手に出てほしいです」
――試合順はありますけどさっき言われたみたいにやっぱり良い試合する、存在感を見せた選手がMVPでありやっぱりメインになると思いますし、主役をみんなで争ってほしいですか?
「全員が主役になるチャンスがあるってのも忘れてほしくないです。先ほど言ったように『良い試合したやつが主役だよ』です」