頭のいいMMAプラス、野生的な攻撃の両方を楽しんでもらえたら
──さきほどの課題そのものは対戦相手に限らずということですが、それも含めて対戦相手がブレディ・ヒースタンドからカルロス・ヴェラに変更になったことは、準備において影響はどれくらいありましたか。
「対戦相手は変更になりましたけど、4週前とか、そんなにショートノーティスってわけではなかったので、ちゃんと準備は出来ました。ただ今回相手のスタイルがすごく“異質”なので、最後まで何が飛んでくるかわからないっていう意識は持って戦います」
──「異質」というのはヴェラのあのテコンドーやカポエイラの回って飛んでくる蹴りやサブミッションなどでしょうか。
「テコンドーも含めたら格闘技キャリアとして30年以上やっていると思うので、ヘタクソに見えるけど、絶妙にやられないようなスキルとかを持っている印象です。そのなかで彼なりの足技を活かしたスタイルを得意として、テイクダウンはあまり気にせず下からの仕掛けで首と足を使って、プレッシャーをかけてくるというゲームだと思うのですけれど、もちろん彼がこれまで対戦したような相手に、自分のスピードだったり爆発力を持っている選手は多分いないと思うので、その辺りでサプライズを起こせる自信はあります」
──中村選手はサウスポーからの蹴りが、テイクダウンにおいても相手の上体を上げさせることで起点になっているように感じます。組む展開のなかで、いかにアプローチするか。スタンドにおいて何か強化してきたことはありますか。
「スタンドにおいては、自分の今まで通りのスタンドゲームを展開しようとすると多分、良くないことが起こる相手で。回ってきたり。その辺は角度と位置取りの──“自称天才タケさん”が言ってくださっていて、この位置はダメとか。その視点からも入っていますし、うまく入れて準備してきたものはあります、自分の攻撃として新しいものはあります。まあそれは言わないですけどね、フフフ」
──それは試合を見てのお楽しみ、ということで。そしてヴェラの得意技のひとつがギロチンチョークです。相手にテイクダウンされて尻を着いてからもセットしてきます。ヴェラはスイッチスタンスですが、あの左手のギロチンチョークは、中村選手にとって右側に頭を出すと危ないようにも感じました。
「あそこは確かに。最初は“まあこんなの、かかんねえよ”と思っていましたけど。エントリーが、多分“あっ、大丈夫だな”と相手に思わせてくるようなエントリーなんですよね」
──はい。何なら時にはあえて相手に脇を潜らせて首を掴んでいるようにも見えました。
「はい。で、こうヌルヌルと入ってくるので、もしそこに入ってきたら絶対に止まらないとは頭に入れています。そのワナにも気付けたので大丈夫かなと」
──ギロチンは前回のガルシア戦でもすぐに二回跳んでエスケープしていましたね。そして足関節は、ジョン・ダナハー、ライアン・ホール、タン・リーらと練習しているようですが……正直、動画が切り取られていてあまりよく分からない。トランジッションに使っているようにも感じます。
「アタックとして見せている展開があまり無いですよね。でも僕がレスラーで試合数もあまり重ねていないということを考えたら、やっぱり作戦立てるのがうまいジム(Fifty/50 Martial Arts Academy)とは聞くので、展開として入れてくることももちろん考えています。それは野瀬(翔平)選手や風間(敏臣)選手とやる前に対策していたものが生きてくると思うし、今回に向けてもやってきました」
──以前、MMAとしてケージのなかで「空間を支配する」ことについて話していましたね。
「そうですね。支配する前に“空間を認知”していなくてはいけない。“ワッ!”と“行くぞ!”となったときに、そこに対して集中する分、“後ろ”のスペースに対しての意識が無くなったりするんですけど、すごくいいときはそれもありつつで、空間を把握し支配する“この空間全部オレのものだ”っていうような感覚があるんです」
──おおっ、それをだんだん掴みつつある、と。
「だからといってそこを使って誘うまでは、まだ完璧ではないですけど、出るかもしれないし、今後やっていきたいことのひとつでもあります」
──どんな戦い方が今回見られるでしょうか。
「頭を使って、組み立てないといけないファイターではあるので、今までみたいにずっとずっとプレッシャーをかけ続けるという展開にはならないかもしれない。という意味では位置取りとかも前よりちゃんと考えているし、頭のいいMMAプラス、そのなかで野生的な攻撃も出ると思います。その二つを楽しんでもらいたいです」