「自分の作戦を先に放棄した者が不利になるのは間違いない」と語っていたアーチュレッタだったが──
一方、エンリケ・バルソラ、キム・スーチョル、井上直樹、扇久保博正と強豪ばかりを相手に、1年間で4試合すべてを3R通して競り勝ってきたアーチュレッタにとっても、タフな状況だった。
これまでKOTCで四階級王者となり、アウェーのRIZINでの3試合でも体重を守って来た元Bellator王者による、2.8kgオーバーは、直前にトラブルがあったことは明らかだった。
「胃腸炎なのか感染症のようでひどく悪い症状だった。熱もあったのと、腰痛があり、飛行機の移動で腰が痛かったのが治らず、腹の調子がどうしても良くなくて、火曜は1日16時間くらい寝ていた」と吐露する。
それでも、アーチュレッタも試合をキャンセルする選択肢はなかったという。
「みんな、たくさん働いて得たお金で、高いお金を出して格闘技を見に来てくれているから、いかなる状況でも投げ出したりしたくなかった。チャンピオンであることも非常に大きく影響していて、大きな責任を伴っていると思っている」
結果、最後の水抜きも出来ず、2.8kgの体重超過。試合前にチャンピオンではなくなり、勝利してもノーコンテストとなる「変則王座戦」に、リカバリー制限が設けられたなかで臨んだ。
試合前に本誌の取材に「自分の作戦を先に放棄した者が不利になるのは間違いない」と勝利のポイントを語っていた元王者は、開始から「50%の減点」を負って、打ち合いの賭けに出ていた。
日本での試合を「“暗いところから出てきて、すごい光を与えられたような、すごい特別な場所だ”と思った。何より日本のファンに会って自分の人生が変わった。彼らが僕にインパクトを与えてくれたんだ。だから“絶対に勝ってファン達のチャンピオンになる”と決めた。RIZINが世界チャンピオンになる機会を与えてくれて、自分がチャンピオンになっているから当然、自分が“RIZINの代表”として振る舞いたいし、“ここは自分のホームだ”という風に思いたい」と、語っていたアーチュレッタは、いかに試合に臨み、いかに敗れたのか。
試合前のトラブルにより、未公開だった部分も含め、「試合前」と「試合直後」の言葉をあらためて紹介したい。