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インタビュー

【PANCRASE】2023年を締めくくるビッグマッチで大沢ケンジが注目したのは!? 王座戦の行方も占う=12月24日(日)横浜武道館

2023/12/23 06:12
 2023年12月24日(日)神奈川・横浜武道館にて、PANCRASE 30周年記念大会Vol.2『PANCRASE 340』(U-NEXT配信)が開催される。  メインイベントでウェルター級王座戦、セミにフライ級暫定王座決定戦、第12試合にバンタム級暫定王座決定戦、第11試合にライト級次期挑戦者決定戦、さらに第9&10試合には女子初代アトム級王座決定4人トーナメント準決勝2試合が並ぶなど、「30周年記念大会」に相応しい豪華カードがクリスマスに行われる。  このビッグマッチを前に、大会を配信するU-NEXTが、解説を務める大沢ケンジ・和術慧舟會HEARTS代表に注目試合のピックアップと、その見どころを聞いた。マモル予想と併せてチェック! 「アマ世界王者を相手に、松井斗輝がどう打撃で立ち合うか注目」(大沢) 注目試合①▼第5試合 フライ級 5分3Rムハンマド・サロハイディノフ(タジキスタン)※2022 IMMAF世界大会フライ級優勝松井斗輝(パラエストラ柏)8位 「松井選手はめちゃくちゃ注目している選手。ボクシングで、全国3位でしたよね? そういう好成績を残しているのはもちろん、蹴りもあるから打撃がパンチに限らないというのと、組み技がめちゃくちゃ伸びていて、試合を見ていて“こんなに組みができるんだ、訓練されているなあ”という印象を持ちました。やはりパラエストラ千葉ネットワークで組みをしっかりやってきているのだなと思います。この試合の勝敗がどうあれ、必ず将来的に上にくる選手ですね。対戦相手のサロハイディノフ選手はIMMAFのチャンピオンで組み技がめちゃくちゃ良く、しつこさもある。パンクラスデビュー戦も、秋葉太樹選手をねじ伏せて一気に取ってしまいました」 ──サロハイディノフ選手の組みの特徴は? 「タジキスタンの選手で、やっぱりロシア系というのかな、サンボっぽいボディロックであったり上の方の組みが強い感じですね。パワーもあります。ただ、その得意の組技も触ってからは強いけれど、触るまでの作り方を見ると、松井選手なら押し込まれる前の段階であれば切れるのではないかと思います。  まだ未知数な部分もありますけど、アマチュアの試合もさらっとチェックした限りだと入りがゆっくりだし、走りながら押し込んでくるような感じだったので、あれなら脇を差して、切ることができそうです。今8位の松井選手が、ここでサロハイディノフに勝てるのであれば、1位の伊藤盛一郎選手にも勝てるんじゃないかと期待しちゃいますね。“対世界”で自分の位置を測る意味でも、いい経験になると思います」 ──対策という点では、同階級で現キング オブ パンクラスの鶴谷怜選手がスパーリングパートナーであることも大きいでしょうか。 「それはめちゃくちゃ大きいと思います。組み技からしっかり組み立てることをジムとしても重視していると思うし、それがみんなできるチームのなかで揉まれたストライカーが、ここでアマチュア大会ではあれど世界の頂点に立ったタジキスタンのナンバーワンと戦うわけですから。そして松井選手は打撃でビビらせることができるのが大きいですね」 PANCRASE336 大塚智貴 VS. 松井斗輝 ──サロハイディノフ選手の打撃についてはどのような印象ですか? 「そんなに怖さはないですね。どうしても組み主体の選手だな、と。荒っぽいけど、ちゃんと振ってはきますよね。“組むための打撃”だと言っても、倒せないパンチをちょこちょこと出されても怖くないじゃないですか。そういう選手も実際にいるけれど、サロハイディノフ選手の場合は当たったら倒れる、殺傷能力のある振り方をしてそのなかで組んでくるので、相手にしっかりパンチにも対応させて、つまりガードを上げさせて、そこから入ってくる。だから簡単な打撃ではないです。ただね、やっぱり荒っぽいっていうのは、つまり初動があって、打つ前に打ってくるのが分かるんです。頭だったり、肩だったりが振れることで何を打ってくるかは分かるので、合わせやすい。ただ、組む動きとパンチの動きが同じ、という点が松井選手にとっては厄介かもしれない」 ──打撃と組みの軌道が同じであると、そういう相手と戦う時の考え方としては……。「そこには違いが出てきますね。距離を取ってタックル外すというやり方になるのかな、自分なら前に出させますけど。振ってくる前にどんどん下がらせて近い距離でブンブン振って“入ろうという気にさせない”ようにする。距離を取って、タックルは外して打って離れるという感じで行くと、合わせるのは苦手かもしれないです。  ちなみに僕としては距離を取るような打撃は最近難しいと思っていて。UFCとかもそうですけど、もう、みんなが詰めるようになって、離れていく相手に対して距離を潰すようになっている。足を止めて近い距離で打ち合ってそのなかでタックル入るとか。たとえば堀口恭司選手のようなステップも、パッチー・ミックスにぐわっと距離を詰められたりして長い距離で打撃の勝負するのはしんどくなり始めていますよね、あくまでトップどころ相手だと、ですけど」 ──今回の試合の注目点としては松井選手の距離設定でしょうか。 「そう。もし松井選手が長い距離で勝負しようとすると、タックルとパンチが同じ振りで来られた時にどう処理するかなというのがポイントだと思いますね、ガードが引っ張られるかもしれない。長い距離でやった時に、パンチだと思っていてタックルだと絶対に押し込まれてしまうと思うんですよね。ただし、相手に反応したらパンチを当てて倒せる可能性も高いので、そこを見極められるのかどうか。  練習相手に鶴屋くんや扇久保(博正)くんがいる環境だから心配ないとは思いますが、いざ試合となったときに、これまでの6戦からは一気に、標高が上がるような感じはありますね。判定になるんじゃないかなとは思っています。勢いで行くよりは相手を見ながら、爆発力で行くよりも相手が手詰まりになってタックルに入りづらくなっていく……というような展開になるのでは」 PANCRASE332 佐々木亮太 VS. 松井斗輝 [nextpage] 「フェザー級に地殻変動を起こす好カード! 高橋が序盤にどれだけカーフを当てられるか」(大沢) 注目試合②▼第7試合 フェザー級 5分3R高橋遼伍(KRAZY BEE)14勝7敗キム・サンウォン(KOREAN TOP TEAM)#8位 11勝6敗1分 「高橋遼伍くんとしては多分、トップでやれる自信を持ちつつ、新天地で自分の力を示したいと思っての今回PANCRASE参戦だと思うので、そこで当てられた相手としてキム・サンウォン選手って最高じゃないですか!?『ROAD TO UFC』初戦でSASUKE選手をカウンターの右で倒しているし、準決勝でイー・ジャーと善戦しました(※判定でキムが惜敗)。PANCRASE初参戦では名田英平選手に完勝しています。高橋選手とキム選手が継続参戦することになるのだとしたら、なかなか他団体や他の国とのレベルを測る物差しがなくなっていたところだったPANCRASEのフェザー級は地殻変動を起こしますね。ウチの中田大貴とやっても面白いのはもちろんですし、ファン目線で非常に楽しみな一戦です」 ──両者オーソドックス構え。高橋選手の必殺技のカーフ・キックが炸裂しますか。 「カーフはめっちゃ当たるんじゃないですか! ただちょっと……狙い過ぎてしまって、見過ぎてしまっているところは気がかりです。いろいろな流れのなかでのカーフというよりは、カーフを意識させて右を当てるとか、カーフをジャブのように使っているような感じがします。カーフをあんまり意識しないでほしいですね、他をやりながらカーフ、の方がいい!  試合のリズムがスローテンポになって見ている時間が長くなると、キム選手はSASUKE戦を見ても前半やられていても一発でああやって倒せるので、チャンスを与えてしまいます。ただそれも、カーフが当たれば崩せるわけだから、なんとも言えないところなんですよね!? キム選手には飛び込みの右とかもあるし、遼伍くんはカーフを蹴るために距離をとらずに体を立てているので、パンチをもらいそうだなというのもあるし。そのあたりどちらがどう行くか、注目です。カーフが当たり始めたら断然遼伍くんのペースになりますが、1Rでどれくらい当てられるかですね。だからこの試合は立ち上がりに注目です」 ──今のお話で、カーフは対策されているというのもあって狙い過ぎてしまうのでしょうか。むしろその逆で、当てる自信があるから? 「得意だというのもあるし、カーフが当たる距離にいられる時って、あんまり自分がやられる心配が少ないんですよ。それで遼伍くんは相手に中に入らせたくないから、安全な試合をするためにリスクを背負い辛くなっているのかもしれないです。だから遼伍くんはもうちょい自分から行けるといいかなと。前述の通り、最近のMMAって距離を取らせないようにするし、相手の思考を奪うというか、考える時間をどれくらい与えないかという、やってきたとこ勝負のようなところがあります。いろんな武器を用意していても、そんなの出させないような近い距離で、やってきたところだけで勝負する展開を作る選手が多い。ただキム選手は距離を見たりもするので、キム選手には当たると思っていますけどね」 ──今仰ったように安全圏で勝負するということが消極的だと取られて判定で惜しくも落とすという経験をしています。そこは踏まえてくるだろうと。 「そう思いますけどね。ただ、人間って、染み付ついたクセは抜け辛いですからね……。朝倉未来選手も、カウンタースタイルになっているのを変えられずにみんなにそこをつかれていますよね。運動能力の高い人の多くは、できてしまうだけに、相手の攻撃を見る自信があったりして相手を見る癖がつきやすくて、遼伍くんもそのタイプ。すごく厳しい試合ですよね。といっても、SASUKE選手もやられた場面でミスをしていなければ勝っていたと思うし、願いも込めつつ、これは勝てる試合です」 [nextpage] 「河村が極めるか、透暉鷹が組み伏せるか」(大沢) 注目試合③▼第12試合 PANCRASEバンタム級暫定王座決定戦 5分5R河村泰博(和術慧舟會 AKZA)1位 ※第2代Fighting Nexusバンタム級王者透暉鷹(ISHITSUNA MMA)※第9代フェザー級K.O.P 「河村選手は、寝技はもちろんですけど、ジャブとか打撃の距離感がすごくいいですよね。一方、透暉鷹選手は抑え込む力が強いので、立っている間の打撃では河村選手がコントロールすると思っています。透暉鷹選手は組みがいいので、打撃も振ったりはするけどそんなに怖くないように僕は思いますし、逆に河村選手は組みが強いタイプではないから、この勝負で行くと多分河村選手としてはタックルは切ろうとはしないのでは。行けるところまで打撃で行って、打撃で背中つかされる寸前まで倒しに行く。倒されたら“いいよ、下からで”という感覚ではないでしょうか。  透暉鷹選手はそれでも組みに行くと思いますが、河村選手が下になった時に、上から削る戦い方になる。削って、あわよくばフィニッシュするような感じではないでしょうか。河村選手は佐藤将光戦で引き込んでポジションを譲ってTKOされているので、ポジションを失わないということもないですよね。しっかり寝技でポジションを取らせないというよりは、ポジションを取られてもいいからフィニッシュを狙いに行くという、仕掛けるタイプですね。河村選手の魅力である、前回の決まり手の変則的なダースチョークのように、“あれはそうだったんだ!”と、仕掛けが分かり辛いところがあります。実はもう極まっていたという。知らない間に喉元にナイフを当てられているかのような面白さがあるので、全体的に見ると透暉鷹選手だろうと思わせておきつつ、河村選手のジャブやストレート、さらに寝技の極め力で、入りが分かり辛いという点でもいつのまにか極められているかもしれない」 PANCRASE328 透暉鷹 VS. 亀井晨佑 ──河村選手の極めは、想定しづらいという感じなのでしょうか。透暉鷹選手としてはしっかりトップキープしていれば問題ない? 「想定練習とかはできても、実際どのあたりからこの人は自信を持って極めにきているのだろう? っていうのが、分かりにくいです。基本的に相手にチャンスを与えない組み方もありますから、堅い試合をすれば、透暉鷹選手がドミネートできますが、フィニッシュに行ったところで河村選手に行かれる可能性もあります。どうあれ透暉鷹選手は組み技にめちゃくちゃ自信があると思うし、実際にフェザーの試合で圧倒的な組み力を見せてきたから勝負しに行くと思っています。河村選手が簡単に下を選ぶ展開が続くとトップで削られ、どこかでパウンドアウトという可能性はあります。早い段階で削られちゃうと極める力もなくなりますし。一方で早い段階は河村選手がパンチないし、下から入り際に何かを極めるということは考えられます」 PANCRASE330 透暉鷹 VS. パン・ジェヒョク──つまり5ラウンドあって、ラウンドを重ねていくにつれ、透暉鷹選手が有利になっていくということでしょうか。 「そうですね。フェザー級であれだけ制圧してきた選手で、サイズ的にもバンタム級の減量がキツそうには見えないので、この階級にすぐフィットできそうということも含めて透暉鷹選手が行く気がします。どんどん自分から仕掛けて、組んで、誰でも倒す力があります。テイクダウン能力がものすごくあって、しつこく行けるところが魅力ですよね。“倒せないやついるの?”っていうような。しんどいことをやりに行ける力があるし、自分を押し付けていけるタイプです。相手がこうだからこう、という感じじゃないですよね。多分、というかたとえ話ですけど、彼の場合、デートの時のファッションも常に一貫していて、相手やシチュエーションで変えたりしない気がする(笑)」 [nextpage] 大沢ケンジの勝敗予想は── 【勝敗予想①】▼第14試合 PANCRASEウェルター級王座戦 5分5R林 源平(和術慧舟會IggyHandsGym)王者住村竜市朗(TEAM ONE)挑戦者・2位 「持ち駒の出し方を間違えない住村選手が、押さえ込むか」 「ちょっと分からないですね、この試合は。住村選手が押さえ込むという予想ですけど、林選手もそこはしっかり分かっているし打撃がいいですからね。DEEPのタイトルも獲っている住村選手の持ち駒の相性というのかな、カードの出し方をミスらないタイプですからね。林選手はいつもすごいアツい試合をして面白いし、最近勝てるようになってきたところがありますが、大事なところで落とした経験もあるから、こういうしんどい相手に対しても“これなら本物だ”と思わせてくれるような試合をしてほしい。いまチャンピオンですけど、林選手が本物かどうかを見極めるための好カードだと思います」 【勝敗予想②】▼第13試合 PANCRASEフライ級暫定王座決定戦 5分5R伊藤盛一郎(リバーサルジム横浜グランドスラム/ZST)1位有川直毅(K-PLACE)3位 「しんどいところでやれる、勝負所の強さを伊藤選手が見せつけるか」 「越えてきた修羅場の数とその相手で比べてしまうと、しんどいところでちゃんと取ってきた伊藤選手ですね。有川選手は全体的にスクランブルしながら競り勝つタイプという印象があって強みがめちゃくちゃあるという感じではないから、いいものはあるけれど、勝負所の強さで伊藤選手が押さえてしまうと思います」 【勝敗予想③】▼第12試合 PANCRASEバンタム級暫定王座決定戦 5分5R河村泰博(和術慧舟會 AKZA)1位 ※第2代Fighting Nexusバンタム級王者透暉鷹(ISHITSUNA MMA)※第9代フェザー級K.O.P 「透暉鷹がトップで削り、あわよくばフィニッシュ」 【勝敗予想④】▼第10試合 PANCRASE女子初代アトム級(47.6kg以下)女王決定4人トーナメント 5分3R沙弥子(リバーサルジム横浜グランドスラム)7勝2敗V.V Mei(フリー)21勝15敗1分 「強いベテラン相手に沙弥子選手のアップセットも」 「このトーナメントは、なかなか難しいところがあって、Mei選手とSARAMI選手での決勝になるとしたら、良くも悪くも“やっぱり君たちだったな!”という印象にはなってしまうから、アップセットに期待するところがあって。沙弥子選手には柔道のバックボーンがあるのでテイクダウンされないとして、Mei選手の打撃は短いから、パンチを当てて組むけれどテイクダウンを許さない……という展開がずっと続くのかなというイメージです」 【勝敗予想⑤】▼第9試合 PANCRASE女子初代アトム級(47.6kg以下)王座決定4人トーナメント 5分3Rジェニー・ファン(AACC/台湾)7勝5敗1NCSARAMI(パンクラスイズム横浜)17勝14敗 「SARAMIが体の強さで判定勝利。削ってフィニッシュするかも? ジェニーの一発に注意」 「こちらのアップセットの可能性は、極めのあるジェニー・ファン選手なら……? うーん、でも、SARAMI選手が体の強さで勝るでしょうし、削って、削って最後にフィニッシュすることもあるかもしれない。ジェニー選手が何か一発持っているかもしれないから、そこは注目しておきたいです」 PANCRASE34012月24日(日)「PANCRASE340」5試合の勝敗予想をすべて的中させたみんなで、ポイント山分けキャンペーン実施中!(2023年12月24日(日)13:30まで)
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