一度は引退を決めた金原がリングに戻ってきていい結果を出すというのはすごいこと
──経験といえば、あなたも対戦した40歳の金原正徳選手がクレベル・コイケ選手に勝ちましたが、その試合もご覧になっていますか。
「もちろん見たよ。あの試合はいい試合だったと思う。カネハラが強くなればなるほど、俺がもっと強いって事になるから(笑)、彼が今とても調子よく成功しているのは嬉しく思う。階級を145ポンドに上げて、カネハラはフェザー級で調子が良さそうに見えるね。コイケのグラップリングを封じて、彼自身の試合が展開できたのは良い事だったと思う。
カネハラは俺との試合で、1ラウンドでバックを取っただけど、俺はそこで極められる事もドミネートされることもなかった。カネハラは俺との試合で俺をサブミットできなかったけど、コイケをコントロールできていたっていう事は、それは俺のグラップリングスキルの証明にもなったと思う。もちろんカネハラにバックを取られたという事実もあるし、厳しい時間ではあったけれどもね。
それに……俺との試合で1度は引退を決めて再びリングに戻って来たのは、やっぱりファイターの性みたいなものなんだと思う。引退をしようと思っても、もう一度戻って、そこでいい結果を出せるっていうのは、ファイターとしてすごいことだ」
──そのメンタル面での強さは、今回の両者からも感じます。ビクターは前回の試合で最後のグレーブリーの組みに前転から内ヒール、ニーバーと仕掛けて、それを潰したグレーブリーの肩固めを後転で抜けて、スクランブルで立ち上がり、魂のスプリット判定勝利をモノにしました。
一方でバシャラットもグレーブリー戦のバッティングで相当な出血があったにも関わらず顔色一つ変えずに戦っていました。それは彼のアフガニスタンでの内戦の経験がタフにさせたと言っています。今回の試合でもその精神面の勝負にもなるのでしょうか。
「UFCのケージで戦っている選手はある程度皆、メンタルの強さは持っていると思っている。皆、このケージで戦えるようになるまで色んな事を乗り越えてきて辿り着いているんだ。競技としても、このMMAは色んなバックグラウンドがあると思うけど、中にはそこまでタフじゃない奴もいるかもしれない。だけど“戦う”っていうのは、なんて言ったらいいのかな──すべてが同じ枠に収まるものではない、と思っているんだ。
バシャラットのヒストリーはもちろんタフな事だったと思うけど、それを乗り越えたからこそ、いま彼はここにいるんだろうし、俺だってこれまでに俺だけのいくつもの障害を乗り越えてメンタルの強さを築いてこれた。だから、ファイターは皆、それぞれに精神的に色んな事を乗り越えてきて、いまもそれと戦っている。だから過去の出来事でファイターとしてのキャリアを見定めるべきではなくて、自分で乗り越えたからこそ今があって、過去の自分とは違うんだよ」
──その言葉を聞いて『あしたのジョー』の金竜飛戦を思い出しました。いや、漫画の話はまた今度に(笑)。さて、群雄割拠のバンタム級で、この試合で勝つことはビクターにとってどのような意味を持ちますか。
「願わくばもっと色んな大きな挑戦ができるようになる事だね。それだけだ」
──そのためには、強者しかいないバンタム級でランキング入りですね。
「もちろんだ。すべての試合の勝ち星は、ランキングにも、ファイトマネーにも、人気にもすべてに関わってくる。勝つっていう事が試合では一番大事なんだよ。自分が成長する為にもというのはもちろんあるけれど、実際試合に勝たなければ、自分の成長なんて誰にも関係ないしね」
──ビクター、試合前にインタビューをありがとうございます。日本のファンにメッセージを。
「やぁ、みんな。ビクターヘンリーだよ。UWFの代表選手としてだけじゃなくて、日本のファイティングスピリットとアメリカのファイティングスピリットの両方を持った選手の代表として戦うから、今回の試合も応援してほしい。もしまたUFCジャパンが開催されるなら、俺は絶対カードに入るだろうし、ジョシュも一緒に行くと思う。ジョシュは日本のロイ・ネルソンとの試合で記録を残しただろ?(クリンチ打撃95発)だから、次は自分が日本で記録を残す番じゃないかな。また日本でいつか戦うから!」