2023年8月31日から9月2日(日本時間)、米国ラスベガスのコンベンションセンターにて開催される国際ブラジリアン柔術連盟(IBJJF)ワールドマスター2023に、俳優の岡田准一、玉木宏、芸人のガリットチュウ福島善成が出場する。
「ワールドマスター」は、46マットにて行われる世界最大の柔術の祭典。柔術コン(JIU-JITSU CON)とともに開催され、世界中から1万人を超える柔術競技者やファンが集い、試合が行われる。
ブラジリアン柔術の試合は、「帯色」(白帯、青帯、紫帯、茶帯、黒帯)と「体重」と「年齢」によって分けられており、現役トップが集う18歳から29歳の「アダルト」部門、そして今大会の「マスター」クラスでは、各帯・各体重で「マスター1」の30歳以上から、「マスター7」の60歳以上まで、7部門に分かれている。
岡田は「マスター3茶帯ライトフェザー級」、玉木は「マスター3青帯フェザー級」に、そして福島は、「マスター4青帯ライト級」にそれぞれ出場する。
週6で一般会員とも練習
3人は以前から格闘技を学んでおり、岡田は、『SP 警視庁警備部警護課第四係』をきっかけに格闘技を始め、USA修斗の中村頼永氏に師事し、カリとジークンドーのインストラクター認定を受けるほど。主演映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』では柔術家・橋本知之(CARPE DIEM)との柔術を駆使した戦闘シーンが話題となり、NHK『明鏡止水』ではMCも務めている。柔術では2022年に茶帯となった。
玉木は、15年以上ボクシングをトレーニングし、2019年8月からブラジリアン柔術に取り組み始めた。青帯を巻いて2年ほど。岡田と同じく、橋本知之の指導を受けている。
福島は、2022年のワールドマスターで「マスター3 青帯ライト級」で3位となった強豪。中学・高校で6年間柔道を学び、『QUINTET』を観て格闘技熱が再燃。トライフォース柔術アカデミーで早川光由代表の指導を受け、2023年7月のIBJJFアジア柔術選手権では「マスター4青帯ライト級」で優勝。満を持してのワールドマスター出場となる。
岡田と玉木は、公の試合に出場するのは初。両者ともに一般クラスでも練習を重ねており、今回、ワールドマスター出場を決意した。
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勝つことも負けることも含め、挑戦する姿を
アクションもこなす俳優にとって、実際の柔術大会に出場することは、リスクも伴うが、両者は勝つことも負けることも含め、そこに挑戦する姿を、一般観客のいる前で披露する。
『明鏡止水』で柔術を紹介した岡田は、「ブラジリアン柔術は護身術として勧められます。動きに1個1個の理詰めがちゃんとあるから、全部学べば、誰でもできる」と、その魅力を語る。
また、玉木は『BJJ-WAVE』のインタビューで、「柔術を始めて、精神状態がすごくよくなっていると思います」という。
そして、ワールドマスター出場について、「僕自身が柔術を4年やっていて“楽しいな”“もっといろんな人に知ってほしいな”という気持ちもあるので、少しでもそういう力になれたら、という思いもどこかにあるし、あと半分は純粋に自分自身、チャレンジしたいというところです。名前が出ることでリスクも多少あるかもしれないですけど、それよりも自分のチャレンジをしたい」と、柔術普及の一助となりたいとし、公式の試合で、自身を試したい思いも語っている。
「今回は、ほんとうに初めての試合なんで、当然、怪我なく、とは思ってはいます。試合なので緊張もするとは思いますが、冷静に、いつも通りということを心掛けながらやろうと思っています」「柔術にとってのお祭りのような大会だと思うんですけど、そこを楽しみながら全力で臨みたいと思います」と気負うことなく試合に臨む。
柔術を通してコミュニケーションをとっている
【写真】2023年5月3日の「第9回全日本ブラジリアン柔術オープントーナメント」に出場する橋本知之。(C)橋本欽也/JIU-JITSU NAVI
そんな岡田と玉木を指導する橋本知之(全日本選手権4連覇、パンナム、ヨーロピアン優勝。世界選手権3位)は、本誌の取材に、両者が仕事と両立して、柔術を普段の生活のなかで取り組み、周囲とコミュニケーションを図っているという。
まず、強豪ぞろいの茶帯にエントリーする岡田については、「岡田さんは柔術始めた当初から競技者として上達していきたいという貪欲な姿勢が見えました。役者としての仕事が忙しい中も時間を作って練習に来ているのを見て、凄くタフだし、モチベーションが高いんだなと思いました。今はしっかりブラジリアン柔術の競技者って感じなので、自分のカテゴリーでどういうパフォーマンスを見せるのか楽しみです」と期待。
また、青帯の玉木については、「玉木さんは少しずつ柔術にハマっていった印象があります。少しずつ練習頻度が上がっていき、少しずつ着実に強くなっています。あとこれは岡田さんも同じですが仲間と積極的にコミュニケーションをとって、場の雰囲気をより良くしていると思います。楽しみながら上達していく姿勢は僕自身学ぶところが沢山あります。初めての試合は緊張するかと思いますが、是非いつもの感じで楽しんでもらえればと思います」と、柔術に継続して親しみ、楽しみながら強くなり、試合にまで臨む姿勢を評価し、バックアップしている。
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3人で優勝したらお祝いで──
【写真】2022年の「IBJJFアジア柔術選手権」マスター4青帯ライト級で優勝した福島。(C)新明佑介/JIU-JITSU NAVI
また、既報通り、ガリットチュウ福島は、アジアを制して、2度目のワールドマスターに乗り込む。
2月には「右変形性関節症・右足関節内遊離体」により、初めての手術も行ったが、「順調に回復して踏ん張れるようになり、パス(ガード)するスピードが増し、三角絞め、腕十字と、足を使う技のレパートリーが増えました。あと減量の感覚が掴めてきたので、最高の状態で大会に望めると思います」と、自信をのぞかせる。
8月31日の開幕に向け、「去年は1回戦、2回戦、3回戦とギリギリで勝ち進み、準決勝で有利なポジションだったのに体力と精神の限界で負けてしまいました。今年は体力をつけ、精神力を鍛え抜き、前哨戦のアジア大会も優勝して、決勝は一本勝ちができました。この調子でワールドマスターも、オール一本勝ちをして怪物感を出しまくり優勝します」と、“オール一本勝ち”での優勝を宣言する。
その理由は「そうしないと今回はニュースにもならないと思うので!(笑)」と、芸能界から参戦するライバルたちへの対抗心も。「まさかの国民的スター2人が、揃ってワールドマスターにエントリーは、日本柔術界にとって最大の追い風だと思っていますし、芸能界にも衝撃が走ったと思います。私の存在が消えて無くなりましたが(苦笑)、ものすごく忙しい中、柔術の練習を週6やられていたのは尊敬でしかないです。大切な仕事が控えている中、怪我のリスクもあるし、柔術界・芸能界のえげつない注目の中、試合に出る勇気は本当に凄いですし、カッコイイです。激烈応援させていただきます。私は芸人の端くれですが、3人で優勝したらお祝いでラスベガスのストリップに行きたいですね」と、ベガスの大通りのことを指したのか、大人のショーのことかは明言せずに、3人で祝杯を挙げたいとした。
DJ デメトリアス・ジョンソンもエントリー!
福島を指導する早川代表は、「福島さんは、2年前よりトライフォース池袋で柔術修行を開始されました。入門当初からワールドマスターでチャンピオンになることを目標としていた事もあり、芸人とは思えないくらい、お笑い要素一切なしで真面目に練習に取り組まれています。これはただの話題作りの為にやっているんではないなとすぐに分かりました。そんな柔術に対する真面目な姿勢や心構えは、多くの会員さんから支持されみんなに応援されていますね」と、当初からワールドマスター優勝を目指していたと明かす。
その勝算については、「7月のアジア柔術選手権での優勝も何ら驚くべき結果ではなかったです。残り3週間となったワールドマスターへの鬼気迫る追い込み練習を見ても、必ず優勝してくれると確信しています」と、太鼓判を押す。
果たして、岡田准一、玉木宏、福島善成の3選手は、ワールドマスターでどんな試合を見せるか。
同大会には、元UFC世界フライ級王者で、現ONE世界同級王者のデメトリアス・ジョンソン(米国)も「マスター2茶帯フェザー級」にエントリーしたことが確認されており、ほか選手の試合にも注目だ。大会の模様は、グラップリング専門サイト「FLO GRAPPLING」にて生中継が予定されている(取材協力:JIU-JITSU NAVI)。