挫折した自分でも頑張れている
――さきほど「相手が振ってくるなら組みつくこともできるし、タックルも合わせられる」ということでしたが、アルティガはすごく腰が強いというわけでもない代わりに、様々な組み手を変えるフロントチョーク系を持っています。あのギロチンの対処は、その使い手もいる、ここFIGHTER'S FLOWでは万全でしょうか。
「そうですね。キールホルツにも投げられたりはしてたので。テイクダウンディフェンスがめちゃくちゃ強いというわけではなく、むしろテイクダウンに合わせてギロチンしたりというタイプですね」
――あのギロチンは、パワーギロチンからグリップを変えて、ハイエルボーにしたり、警戒が必要ですね。
「そうですね。鈴木隼人さんにもいつもかけてもらって。まずはそこのポジションに入らないこと。顔の位置だったり、胸を合わせる位置だったり、ギロチンを食らうポジションを細かく把握して。それにあのギロチンって、けっこう相手が疲れてちょっと雑になったところに、ギロチンを合わせるのが得意なんですよ」
──たしかに、初回からいきなりではなく中盤以降に極めてますね。
「けっこう打撃でプレッシャーをかけて、相手が嫌々タックルに入って来たところにギロチンを合わせたりするので、やっぱりそういう場面でも雑にならないというのは大事ですね」
――なるほど。今回の試合、女子フライ級3位の渡辺選手にとっては、7位のランカーとの試合になります。再び上位戦線にというところで惜敗して、負けられない試合が組まれた。今回の試合をどう位置付けていますか。
「やっぱり自分が前回負けているので、相手を選ぶ権利もないですし、自分よりランキングが下ですけど、強い選手なので。強い選手を相手に、挑戦者のつもりで戦うという気持ちですね」
――今月号の『ゴング格闘技』本誌では、神龍誠選手と、セコンドの上田貴央代表と鼎談をしていただきました。その中で、渡辺選手は、「Bellatorのベルトを獲ることを考えています。それはベルトが欲しいわけではなく、『世界一』になりたいということで、Bellatorのベルトを獲ればそのトップの一人になれる」と発言されていました。というときに、もう一つの頂のUFCの女子フライ級もご覧になることはありますか。
「はい。見ます。全部チェックしているわけではないですけど、U-NEXTさんで見れるので」
――その中で、自分だったらと考えることもありますか。
「ありますね。アレクサ・グラッソ選手がチャンピオンで、元王者のヴァレンティーナ・シェフチェンコ選手が1位。自分だったらどこまで行けるかなとか、Bellatorでチャンピオンになったら、マイケル・チャンドラー選手みたいに行くこともあり得るのかなと思って。『世界一』になるためにも今回の試合に勝って、Bellatorでもベルトが欲しいなと思って見ています」
――今回の試合でどんな試合を見せたいですか?
「やっぱり自分のことを知らない人とかもいると思うので、強い日本人の選手がいるぞというのをしっかり見てもらいたいです。あとは、自分ももう34歳で、今年35歳になるんですけど、それでもまだ全然トップで活躍できるんだぞというところを見せて、何かをチャレンジしようとしている人の後押しになれればなっていう思いで、ずっとやっています」
――格闘技的には、まだまだ伸びしろを感じさせます。
「柔道をずっとやっていたので、そのときからの怪我の蓄積はありますけど、年齢による影響はそれくらいで、体力的に落ちたりとかはまったく感じてないし、技術的にも伸びているとは思うんです。でも柔道ってすごく引退が早くて……」
――そういえば、渡辺選手は引退した2016年の実業団体では、前年の講道館杯優勝者の石川慈選手を破っていますね。でも、その年の年末にコーチ転向への打診を受けた。その後、選手としてまだやりきっていないという思いから退社して、MMA選手への道を切り拓いた。
「そうですね……。あと、風潮的に、たぶんみんな30代でやってる人なんてあまりいないし、25過ぎたくらいから、もう引退を考え始めている選手が多いので、そういう子たちにもいい刺激を与えられたら、と思います」
――自分次第で戦えるのだと伝えたいと。そして、それが“何でもあり”になることで選手寿命が延びているとしたら興味深いことです。
「リズ・カモーシェ選手(現Bellator世界女子フライ級王者)とかも39歳ですもんね。MMAはけっこう年齢層が高い。それだけ難しく工夫ができるもの。自分は柔道で1回挫折して、MMAでやっているので、そんな挫折した自分でも頑張れている。そういう部分でも、思うところがある人に見てもらえたら、勇気を与えられたらと思います」
――わかりました。さきほどホームでもアウェイでも戦える強さをうかがいましたが、さいたまスーパーアリーナで戦うということは、そういった人たちに直に、試合を見てもらえる機会になります。“パト”時代(柔道時代の愛称)の人たちも見に来られるのではないですか。
「来ます、来ます! そうなんですよ。でもチームメイトとかにもこれまで試合を見せられてないんです。セコンドの上田さんしか見ていない。だから、今回は身近な人にも見てもらいたいです」
――入場時のスイッチが入る表情から注目ですね。髪色も。
「いまは金髪にして下地を作っていますから。当日、派手に行くので、楽しみにしててください!」