2023年7月6日にスペイン北部のパンプロナにて毎年恒例の“牛追い祭り”『サン・フェルミン・フェスティバル』が開催された。
牛追い祭りというと思い出されるのが格闘技雑誌『ゴング格闘技』1987年6月号に掲載された、極真空手の創始者である故・大山倍達総裁と当時現役だった前田日明の初対談での出来事だ。
中学時代に大山総裁の著書『私の空手道人生』を呼んで大山倍達に憧れ、格闘技に目覚めた前田にとって、大山総裁は心の師。初めての対談ということでさすがの前田も緊張した面持ちで東京・池袋の極真会館に足を踏み入れた。
【写真】憧れの大山総裁を前にして緊張気味だった前田 その対談の中で、大山総裁は「前田くん、一発で牛を倒す稽古をして1回スペインへ行って牛を倒してみたまえ。あちらは牛祭りがあるから、道路を牛が突っ走ってくるんだ。それを捕まえて倒してぶん殴るんだ。倒したら大変だ。トラックで金を集めなくちゃいけないよ(笑)」と、前田に牛と戦うことを薦めたのである。
前田は「弱ったなあ、俺(笑)」と答えに困りながらも、総裁が牛と戦った時のエピソードや戦い方を聞いた。大山総裁は「1回くらいはいいんじゃないか、前田くん。キミが牛と戦ったら世界中があっというよ。1回やってみてくれ、私がアドバイスするよ、いろいろと。前田くんしかいないな、私の夢を託す人は」と言い、最後には「できるよ、やりなさい!」と強く言って前田を困らせていた。
現在でも前田は、大山総裁の話をする時にこの時の対談を振り返り、最も印象に残っている言葉としてこのことをあげている。