(C)ONE Championship/GONG KAKUTOGI
8月2日(金)、フィリピン・マニラで開催される『ONE:Dawn Of Heroes』でONE2戦目となるゲジェ・ユースタキオ戦を迎える若松佑弥。2015年のデビュー以来、破壊力抜群のパンチでKOの山を築き、これまで挙げた10勝のうち9つがKOという24歳のフィニッシャーだ。
2018年に9連勝で迎えたパンクラス・フライ級タイトルマッチでは仙三を相手に苦杯を舐めたものの、続くマモル戦ではTKO勝利で復活。2018年9月からはONEに参戦し、ダニー・キンガッドに判定負け。そして2戦目にはフライ級で世界最強の一角である元UFC王者・デメトリアス・ジョンソンと対戦。2Rにギロチンチョークで敗れたものの、パンチでDJを下がらせ、その打撃が世界のトップにも通用することを証明した。
しかし現状はONEで2連敗。3戦目となる今回は、一撃必殺のパンチで復活勝利を目指す。
対するは開催地であるフィリピンのファイターである、ゲジェ・ユースタキオ。元ONEライト級王者のエドゥアルド・フォラヤンや、元バンタム級王者のケビン・ベリンゴンらトップ選手らを擁する名門、チーム・ラカイに所属し、キックボクシングをベースとしたテクニカルな打撃を武器とする。ONEには2012年と初期から参戦し、これまで15戦を戦ってきた(9勝6敗)。
キャリア最強の相手となったDJ戦を経て、成長と確信を得たという若松は、完全にアウェイとなる今回の試合でどのような戦いを見せてくれるのか。前戦を振り返りながら、迎えるユースタキオ戦、そして若松と同じく海の向こうで戦い続ける仲間への想いについて聞いた。
DJは力を抜いているのかと思うこともあったが極める時の力はすごかった
――改めて、デメトリアス・ジョンソン戦を振り返っていかがですか?
「自分自身すごく進化したなと思います。寝技はまだまだですけど、打撃は通用するんだなというのは気づきました」
――実際に肌を合わせてみた感覚は。
「打撃に関しては相手もすごくイヤな顔をして下がってくれていたので、やっぱり誰でも自分の打撃は怖いんだなと。寝技は自分から攻めることはできないにしろ、ディフェンスやフィジカル面では自信をもっていいんだなと感じました」
――1Rに、ケージ際でDJがスタンドでバックからシングルレッグに切り替えた時、若松選手が浴びせ倒すようにしてDJからトップを取る場面もありました。
「あれもちょっと自分でびっくりしちゃって。相手がシングルに来て倒れたので。上を取った時に『やべえ!』って。『あれ、力抜いてんのかな?』とも思ったんですけど、組んだ時にDJも疲れていたので『いやそんなことない、俺が強いんだ』と思って1ラウンドが終わった感じです」
――ただトップを取られたところからDJはすぐに腰を引いて立ち上がりリカバリーしました。
「めっちゃ早かったですね。普通はもっと抑え込めるんですけど、やっぱりあそこは上手かったですね」
――逆にDJがトップで若松選手がお尻をついた体勢になった時にDJは上手く若松選手のお尻を引いて上体を寝かせに来ました。
「ああ、そうですね。僕もケージ背負って背中をつけていない状態だったんですけど、後で映像を見たらすぐに腰を引かれて背中をつけられていたので、ああいうところも含めて勉強になったなと」
――DJの組み力はどうでしたか?
「腕の力、掴んだりする力がめちゃくちゃ強いなと感じましたね。でも胸を合わせている時は、力を抜いていたのかもしれないですけど、そこまで感じなかったですね。ただ極める時のあの力はすごかったです」
――それまでよりも想定外のパワーで来たと。
「そうですね。極める時に、こんなにパワーがあったのかと。でもそこが経験というか、強いところなんじゃないかと、後々分かってきました」
――DJ戦を経て成長した部分はどこでしょう?
「試合に向けての気持ちの作り方とか、自分に合っているスタイルとか、そういうのが確信に変わって来て、それが成長に繋がるんじゃないかと思いますね。次の試合でやってみて正解かどうかですが」
――自分に合っているスタイルとは?
「やっぱり自分の本質的な、相手を倒すというスタイルですかね。色々考えないでKOして勝つ。極めに行く時は極めに行くし、今までは上手く3ラウンド使ってってやっていたんですけど、あんまり考え過ぎるのもよくないかなと」
――理想は短期決戦。
「そうですね。もう一方的に殴って相手の気持ちを折る」
――自身のスタイルを確信したことで練習の内容も以前とは変わって来ていますか?
「はい。でも練習と試合はまた違うので、配分とかは考えますけど、毎回その倒しに行くスタイルを全力でやったら一週間もたないので、要所要所でここは極めに行くとか、倒しに行くとかはやっています」
――今特に強化している部分はどこでしょう?
「僕の一番の強みである瞬発力を活かしながら、出し切っちゃうとリカバリー出来ないのでペース配分も考えながら。そういう練習はしています」
――DJ戦の後、所属するTRIBE TOKYO MMAの長南亮代表からはどんな言葉をかけられましたか?
「通用するじゃん、間違ってないよ、自信持って行けよと。あれだけできたからよかったよと言われました」
――TRIBE TOKYO MMAは石井逸人選手や後藤丈治選手など若手選手が加入し、練習環境も変わった部分はありますか?
「同じ階級が二人も増えて、二人とも志がすごく高いのし、それぞれオーソとサウスポーなのでチームとしてはこの上ない環境ですね。練習の対策、相手に似ていたりする部分もあるのでその分ではすごくありがたいです」
ユースタキオ戦は判定まで行ったらやばい。KOかフルボッコするか。
――次戦はフィリピンで地元のゲジェ・ユースタキオ戦を迎えますが印象は?
「攻めてくるのではなく、すごく待ちの選手だなと。あとはONEのルールをよく理解していて、相手が気を抜いた時にダメージを負わせるような選手。戦い方はガンガン疲れるようなことをするのではなく、力を抜いて行くところは思い切り行くという印象が強いですね。でもディフェンスはすごく固いという」
――目が良いのか、パンチをかわすのが上手い選手です。
「そうですね。意外に戦いやすそうで多分あれに勝つのは相当難しいんじゃないかと思います。倒すのもそうだし当てるのも、以前マモル選手と戦ったんですけど(2RパンチでTKO勝ち)、そういうイメージというか。見ただけなら行けるんじゃないかと思うんですけど、実際やってみないと分からないタイプ。簡単に完封できるのか、苦戦するのか」
――不気味な存在というか。
「そうですね。チャンピオンになるくらいだから相当強いところはあるんじゃないですかね」
――タイプ的にはマモル選手と似ているのでしょうか?
「待ちの選手っていうのは似ていますね。待って相手に攻めさせないでどんどん自分からプレッシャーをかけていく。パンチの軌道とかは全然似ていないですけど、イメージはそういう感じですかね。リングの中を動き回るのではなく、どっしり構えている」
――マモル戦ではその待ちをどう崩して行ったのでしょうか。
「離れたところからジャブを突いて、空いてるところを狙って3ラウンド取りに行く、倒しに行けたら行くという感じでした」
――それを踏まえて今回のプランは?
「今回はもう倒しにいっちゃおうかなと思っています。相手は足が止まってるんで、遠いところからジャブを刺してローを蹴って、何回かフェイントをかけたらドンって行こうと思っています。テイクダウンはやってみないと分からないですけど行けそうだったら行くかなというくらい」
――打撃の距離というのは変わって来ている感覚はありますか?
「うーん……。自分の距離は分かっているんで大きくは変わらないですね、近すぎてもテイクダウンされるし、離れすぎても届かないし。でも瞬発力は自分の方が絶対あるので、遠いところから刺して逃げるというのが自分の距離だと思います」
――今回はユースタキオ選手の地元であるフィリピン・マニラ開催ですがそういった点は意識しますか?
「めっちゃ意識します。判定まで行ったらやばいなと。誰が見ても圧倒しないとこっちに(ポイントが)つかないんで。ちょっと相手が血を出していてもそれだけじゃ分からない。KOするかフルボッコにするかどっちかですね。まあアウェイなんでみんなユースタキオを勝たせたいと思うんじゃないですかね」
――アウェイだからこそよりアグレッシブに行くと。
「はい。そうですね」
――ところで同大会では練習仲間でもある和田竜光選手がデメトリアス・ジョンソンと対戦しますが、両者と肌を合わせた経験のある若松選手から見てどんな試合になると思われますか?
「どうなるんすかね。総合格闘技って本当に何があるか分からないので。竜光さんは首相撲がすごく強くて、キワもめっちゃ上手い。全てにおいて穴がないというか。力も瞬発力もあるし、そこはみんな驚きます。スピードもあるし。まあ普通に行ったらDJが上回るんだと思うんですけど、その中で絶対傷跡を残して、もしかしたら勝つかもしれないし。どういう戦い方をしてくれるのか、どう噛み合うのかは本当に楽しみですね。3Rまで行って竜光さんが勝つかもしれないし、まあDJ相手にサブミッションで極められるかはわからないけど……。ヒジで切ったりとかもあるかもしれない、逃げるのも上手いし、ONEでの経験では竜光さんにアドバンテージがあるので」
――和田選手は「楽しみしかない」と語っていました。
「DJに挑むスタンスが僕と全く違うんですよね。僕はチャンスだったしプレッシャーもすごくあったんですけど、竜光さんはそんなに勝ってやろうとかそういう気で行っているようには見えなくて、ただ立ち合えればいいみたいな。まあそれも経験がすごいんでそういう気持ちで挑めるというところもある。だから僕と違った戦いができるんじゃないかなと。それに、DJ戦は僕も途中で、『こんな強い奴と戦えて楽しい』ってなっちゃったんで」
――あまりに強い相手と戦うと楽しいという感情が起こるものですか。
「(パンチを当てた時に)うおーやべえ! 相手ビビってるよ!って。歓声もすごいし。終わってからなんですけど、めっちゃ楽しい、俺あいつと戦ったんだ。と」
――ONE2戦目を迎える若松選手ですが、共に国外の舞台で戦い、同門で切磋琢磨してきたUFCファイター・佐藤天(たかし)選手がアメリカに拠点を移すことになりました。
「いやあもう、素晴らしいの一言です。一番天さんにとって良い道なんじゃないですかね。重量級で練習するのは日本では大変だし、それ(海外に拠点を移す)をやるっていうのはすごい覚悟だと思うんで、僕にとってはすごく刺激になります」
――最後に、今回はどのような戦いを見せたいですか?
「天さんだけじゃなく僕も今すごくいい環境にいて、嫌なこともキツイこともたくさんやっているんで。僕も覚悟決めてリングに上がるんで天さんにもそこは見て欲しいですね」
(取材・文=服部吉弥)