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【Bellator】三階級制覇に向かうパトリシオ・ピットブルがエグい身体を披露、その減量方法とは?=6.16『Bellator 297』

2023/06/08 21:06

「計画のないゴールはただの願い」

「計画のないゴールはただの願いだ。この件についてはすごく長期間にわたる取り組みを見据えて始めなくちゃいけなかった。この挑戦は、しっかりと計画を立てていないと失敗する可能性が非常に高い。だからこの計画はアダム・ボリッチ戦の頃、セルジオ・ペティス戦の可能性が高くなっていた時から考慮していて、毎試合、意識して臨むようにしていた。

 だから、バンタム級挑戦の可能性が出てからの毎試合は準備が始まっていた状態で、AJ.マッキー戦からアダム・ボリッチ戦は既にすこし軽い状態だったし、そこから日本で試合をするにあたっても少し軽い状態だった。それで、日本でのクレベルとのフェザー級戦(66kg)に関しては、大体彼が72kgの状態で最終的に迎えたんだけれど、そこまで上げることを許可した。ただ、それだけ彼の通常体重は大きいんだよね」と、パトリシオの長期的な体重コントロールについて、フレイタス氏は語る。

 それは単に、リミットに体重を合わせるものではなく、最大限のパフォーマンスを発揮できる身体をバンタム級でも作ることに重きを置かれた。

「2、3カ月前から、減量を徐々に段階的に前進させるようになった。我々は、ビタミンやミネラル、ホルモンの問題や、減量のプロセスを妨げる可能性がある全てのマーカーをチェックするために、一通りの生化学検査を行った──というのも、目的はただ単に体重を減らすことではなくて、健康を維持した状態で、正しく体重を減らすということだからね。だから次のような方法でやった。2週間ごとに体重の目標を設定して、徐々に、焦らず段階的に進めていく。ただしそれは非常に繊細な方法というか、彼の身体が、新しい食事(ダイエット)に適応するようにする必要があったんだ」

 自身も黒帯柔術家であるフレイタス氏は、動画のなかで、パトリシオのチューブトレーニングのパートナーとして、その動きをチェックしている姿も確認できる。

「自分の、パトリシオに対しての役割は、次のようなものだ。『トレーニング負荷の管理』、『トレーニング時間の管理』、そして『各トレーニングの強度を管理』すること。そうやってトレーニングの内容を正確に数値化する。なぜなら自分はすべてのワークアウトやその強度、期間、そしてアスリートのリカバリーに関わる、トレーニングの全てを処方する立場にあるので。だから実質的に毎日、アスリートと直接的にコンタクトして、すべてのトレーニングを見ている。

 毎日、アスリートと共にし、これらのポイントを全て観察する。それを毎週毎週やってきた。それで、今朝の彼の体重が66kgで、自分としてはもうこれ以上彼を絞り上げたくはない。というのが今の状況。ただ135ポンド(61.2kg)まで、もっと絞る必要があるので、それを来週やっていくつもりで、計画としては、最終日に2キロだけ、水抜きで落とすつもりでいる」

 試合から1週間以上前で66kg。さらに63kgまで絞って、最後の計量前の水抜きで61.2kgでパスするという。

 PVTのアロンソは「もっと前、3週間ほど前にパトリシオと話した時に、既に66kgだと言っていたと思う。つまり、彼はそれだけ規律正しく、真面目に取り組んでいるという点でいい仕事ができているわけですね」と聞くと、フレイタストレーナーは、「そうですね。自分は何人ものチャンピオンと仕事をしてきていますけど、パトリシオは好例というか、実際彼は人として違う。技術的にも、行動や振る舞いをとっても。ジムの外での彼の振る舞いというのは実に模範的で、こういう行いができるからこそ、彼は何代にもわたってチャンピオンでい続けられるし、高いパフォーマンスを発揮し続けられるのだと思う」と、練習以外でも自身を律して、厳しい取り組みに臨める人物だと評した。

 同じ人間で、階級を変えて体重が変わることは、生物的に違いはどう変わるのか。フレイタス氏は、最終的な体重そのもの大きな違いはない、という。重要なのは、試合毎にアスリートとしていかに進化するか、だと説く。

「常にトレーニングの計画を立てていて、試合後も実質的には練習を止めないようにやっている。彼は試合後、1週間から長くても2週間で、ベースに戻ってくる。12週前から始めて、我々の計画としては、アスリートとしての純粋な強さを増強することを、つまりそれはパワーや速さであったりそういうもので、そういうゴール、つまり階級に関わらず、アスリートとしてより強く、より速く、そしてよりパワフルになることを目標としてすべての時間をコントロールしてやっていく。だから、体重そのものに違いはない。

 マイケル・チャンドラー戦(※2019年5月、過去に兄パトリッキーをKOしているライト級王者マイケル・チャンドラーを1R TKO)を例にとれば、フェザー級とライト級の重さの面での違いがない。初期段階でもたらされる、ストレングス・ワークというのはすごく強いものだけれど、彼はその負荷を克服することができた。彼は試合のたびにより良くなっている、それはそうやって進化に取り組めているからだ。それこそが重要で、全てのアスリートにとって求めているものだ」

 そして、そのパフォーマンスをいかにケージの中で発揮するか。MMAでは最後に水抜き出来る身体を作り、ハイパーダイエット・ハイパーリカバリーで計量をパスすることが多いが、パトリシオの場合は、少し異なるようだ。

「パトリシオはまだ最適な(たくさんの)量の炭水化物を食べている。それは、彼の運動エネルギーを維持するために十分な量の筋グリコーゲンを蓄えておく必要があるからだ。先週の時点でそれを確認してこういうことになっている。最後の週、この蓄えがあることによって、実際の食事療法をしていく。それはしっかりと炭水化物の量を減らすということ。炭水化物を決してゼロにはせず、筋肉や、彼の肝臓に溜め込まれたものをたくさん減らしていくようにする。そうすることで少なくとも既に3、4キロの減量ができる。

 そしてグリコーゲンのエネルギー貯蔵量を少し減らし、それに伴い少し水を減らして、そうやって2、3kg減らせる。そして、最終日に水抜きで落としたい体重1、2kgを残す。来週とる方法によって、グリコーゲンを1グラム排出することによりストックを減らしてしていくと、3の水分量を減らすことができる。アスリートが水分補給量を大きく変えることなく水抜きをしていくことができるんだ」

 最後の水抜きはわずか1、2kg。そこには練習に付き添うフレイタス氏の考えのもと、陣営が取り組む減量方法がある。

 炭水化物(糖質)をしっかり摂取して筋グリコーゲンを蓄え、同時に運動エネルギーを消費する(※急激に消費されたエネルギーの回復には時間がかかるため、その摂取量と運動量も適切に管理される)。

 細胞内にグリコーゲンが蓄えられていくと、浸透圧により、水が付随してくる(結合水)。その割合はグリコーゲン1グラムに対して、水3グラムであるが、この結合水はグリコーゲンに伴う水分のため、汗や尿で排出することができない。

 最終週で炭水化物制限によりグリコーゲン量の調節をすることによってこの結合水も減ることになる。そして、計量前日に、少なければ1kg、多ければ2kgだけ水抜きすればよいように調整するという方法だ。

 かくして61.2kgリミットのバンタム級で、できるだけ減量でダメージを負わず、試合当日は68kgから70kgの間で戻し、ケージに向かうことになる。

 6月8日に公開されたパトリシオの身体は、その過程が順調に行われていることを表している。

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