MMA
ニュース

【Bellator】三階級制覇に向かうパトリシオ・ピットブルがエグい身体を披露、その減量方法とは?=6.16『Bellator 297』

2023/06/08 21:06
 三階級制覇を目指す、パトリシオ・"ピットブル"・フレイレ(ブラジル)が試合1週間前の驚異の身体を披露した。練習仲間でUFC世界ミドル級5位のパウロ・コスタらが明かしたもの。  現Bellator世界フェザー級王者で、元Bellator世界ライト級王者のパトリシオに向けて、コスタは「この男は3つ目のベルトを手に入れようとしています。さあ、行こう!」とツイート。パトリシオは「秘密のジュースはあなたを強くし、筋骨隆々にする」と答えている。  実は、この三階級制覇への取り組みには、ピットブルブラザーズをはじめ、デイブソン・フィゲイレード、リョート・マチダ、ヘナン・バラォン、ベチ・コヘイアらを担当するチカオ・フレイタス トレーナーの指導が大きく関わっている。  フィジカルのみならず、生理学、スポーツ栄養学の専門家でもあるフレイタス氏は、計画ではパトリシオが最終日に水抜きするのはわずか2kg。61.2kgリミットのバンタム級で、試合当日は68kgから70kgの間でケージに向かうことになるという。  パトリシオは、2023年6月16日(日本時間17日)『Bellator 297: Nemkov vs.Romero』(シカゴ・ウィントラスト・アリーナ・U-NEXT配信)にて、現Bellator世界バンタム級王者セルジオ・ペティス(米国)の王座に挑戦する。  大晦日にRIZINフェザー級王者のクレベル・コイケに判定勝ちしたパトリシオにとって、Bellator三階級制覇の挑戦となる。  Bellatorのパウンド・フォー・パウンドNo.1のパトリシオ・“ピットブル”・フレイレは、2014年9月にパット・カランを破り、フェザー級王座を獲得。一度は手放したものの2017年4月にダニエル・ストラウスに一本勝ちで王座奪還。2019年5月にマイケル・チャンドラーに1R TKO勝ちでライト王座も獲得し、二階級同時王者となっている。  2021年7月のAJ・マッキーとの初戦でフェザー級王座陥落も、2022年4月の再戦で王座奪還。その間、兄パトリッキーが1位のライト級王座の方は返上している。  2022年10月にアダム・ボリッチを判定で下し、フェザー級王座を防衛。大晦日の前戦でRIZIN同級王者のクレベル・コイケにも判定勝ちしていた。  実は、今回のバンタム級への挑戦は、2試合前のアダム・ボリッチ戦のときから、パトリシオ陣営は準備を始めていたという。  元『TATAME』編集長で現在は『PVT』(Portal do Vale Tudo)マルセロ・アロンソ編集長のインタビューに前述のチカオ・フレイタス トレーナーが以下のように答えている。ポルトガル語のインタビューの一部を紹介したい。 [nextpage] 「計画のないゴールはただの願い」 「計画のないゴールはただの願いだ。この件についてはすごく長期間にわたる取り組みを見据えて始めなくちゃいけなかった。この挑戦は、しっかりと計画を立てていないと失敗する可能性が非常に高い。だからこの計画はアダム・ボリッチ戦の頃、セルジオ・ペティス戦の可能性が高くなっていた時から考慮していて、毎試合、意識して臨むようにしていた。  だから、バンタム級挑戦の可能性が出てからの毎試合は準備が始まっていた状態で、AJ.マッキー戦からアダム・ボリッチ戦は既にすこし軽い状態だったし、そこから日本で試合をするにあたっても少し軽い状態だった。それで、日本でのクレベルとのフェザー級戦(66kg)に関しては、大体彼が72kgの状態で最終的に迎えたんだけれど、そこまで上げることを許可した。ただ、それだけ彼の通常体重は大きいんだよね」と、パトリシオの長期的な体重コントロールについて、フレイタス氏は語る。  それは単に、リミットに体重を合わせるものではなく、最大限のパフォーマンスを発揮できる身体をバンタム級でも作ることに重きを置かれた。 「2、3カ月前から、減量を徐々に段階的に前進させるようになった。我々は、ビタミンやミネラル、ホルモンの問題や、減量のプロセスを妨げる可能性がある全てのマーカーをチェックするために、一通りの生化学検査を行った──というのも、目的はただ単に体重を減らすことではなくて、健康を維持した状態で、正しく体重を減らすということだからね。だから次のような方法でやった。2週間ごとに体重の目標を設定して、徐々に、焦らず段階的に進めていく。ただしそれは非常に繊細な方法というか、彼の身体が、新しい食事(ダイエット)に適応するようにする必要があったんだ」  自身も黒帯柔術家であるフレイタス氏は、動画のなかで、パトリシオのチューブトレーニングのパートナーとして、その動きをチェックしている姿も確認できる。 「自分の、パトリシオに対しての役割は、次のようなものだ。『トレーニング負荷の管理』、『トレーニング時間の管理』、そして『各トレーニングの強度を管理』すること。そうやってトレーニングの内容を正確に数値化する。なぜなら自分はすべてのワークアウトやその強度、期間、そしてアスリートのリカバリーに関わる、トレーニングの全てを処方する立場にあるので。だから実質的に毎日、アスリートと直接的にコンタクトして、すべてのトレーニングを見ている。  毎日、アスリートと共にし、これらのポイントを全て観察する。それを毎週毎週やってきた。それで、今朝の彼の体重が66kgで、自分としてはもうこれ以上彼を絞り上げたくはない。というのが今の状況。ただ135ポンド(61.2kg)まで、もっと絞る必要があるので、それを来週やっていくつもりで、計画としては、最終日に2キロだけ、水抜きで落とすつもりでいる」  試合から1週間以上前で66kg。さらに63kgまで絞って、最後の計量前の水抜きで61.2kgでパスするという。  PVTのアロンソは「もっと前、3週間ほど前にパトリシオと話した時に、既に66kgだと言っていたと思う。つまり、彼はそれだけ規律正しく、真面目に取り組んでいるという点でいい仕事ができているわけですね」と聞くと、フレイタストレーナーは、「そうですね。自分は何人ものチャンピオンと仕事をしてきていますけど、パトリシオは好例というか、実際彼は人として違う。技術的にも、行動や振る舞いをとっても。ジムの外での彼の振る舞いというのは実に模範的で、こういう行いができるからこそ、彼は何代にもわたってチャンピオンでい続けられるし、高いパフォーマンスを発揮し続けられるのだと思う」と、練習以外でも自身を律して、厳しい取り組みに臨める人物だと評した。  同じ人間で、階級を変えて体重が変わることは、生物的に違いはどう変わるのか。フレイタス氏は、最終的な体重そのもの大きな違いはない、という。重要なのは、試合毎にアスリートとしていかに進化するか、だと説く。 「常にトレーニングの計画を立てていて、試合後も実質的には練習を止めないようにやっている。彼は試合後、1週間から長くても2週間で、ベースに戻ってくる。12週前から始めて、我々の計画としては、アスリートとしての純粋な強さを増強することを、つまりそれはパワーや速さであったりそういうもので、そういうゴール、つまり階級に関わらず、アスリートとしてより強く、より速く、そしてよりパワフルになることを目標としてすべての時間をコントロールしてやっていく。だから、体重そのものに違いはない。  マイケル・チャンドラー戦(※2019年5月、過去に兄パトリッキーをKOしているライト級王者マイケル・チャンドラーを1R TKO)を例にとれば、フェザー級とライト級の重さの面での違いがない。初期段階でもたらされる、ストレングス・ワークというのはすごく強いものだけれど、彼はその負荷を克服することができた。彼は試合のたびにより良くなっている、それはそうやって進化に取り組めているからだ。それこそが重要で、全てのアスリートにとって求めているものだ」  そして、そのパフォーマンスをいかにケージの中で発揮するか。MMAでは最後に水抜き出来る身体を作り、ハイパーダイエット・ハイパーリカバリーで計量をパスすることが多いが、パトリシオの場合は、少し異なるようだ。 「パトリシオはまだ最適な(たくさんの)量の炭水化物を食べている。それは、彼の運動エネルギーを維持するために十分な量の筋グリコーゲンを蓄えておく必要があるからだ。先週の時点でそれを確認してこういうことになっている。最後の週、この蓄えがあることによって、実際の食事療法をしていく。それはしっかりと炭水化物の量を減らすということ。炭水化物を決してゼロにはせず、筋肉や、彼の肝臓に溜め込まれたものをたくさん減らしていくようにする。そうすることで少なくとも既に3、4キロの減量ができる。  そしてグリコーゲンのエネルギー貯蔵量を少し減らし、それに伴い少し水を減らして、そうやって2、3kg減らせる。そして、最終日に水抜きで落としたい体重1、2kgを残す。来週とる方法によって、グリコーゲンを1グラム排出することによりストックを減らしてしていくと、3の水分量を減らすことができる。アスリートが水分補給量を大きく変えることなく水抜きをしていくことができるんだ」  最後の水抜きはわずか1、2kg。そこには練習に付き添うフレイタス氏の考えのもと、陣営が取り組む減量方法がある。  炭水化物(糖質)をしっかり摂取して筋グリコーゲンを蓄え、同時に運動エネルギーを消費する(※急激に消費されたエネルギーの回復には時間がかかるため、その摂取量と運動量も適切に管理される)。  細胞内にグリコーゲンが蓄えられていくと、浸透圧により、水が付随してくる(結合水)。その割合はグリコーゲン1グラムに対して、水3グラムであるが、この結合水はグリコーゲンに伴う水分のため、汗や尿で排出することができない。  最終週で炭水化物制限によりグリコーゲン量の調節をすることによってこの結合水も減ることになる。そして、計量前日に、少なければ1kg、多ければ2kgだけ水抜きすればよいように調整するという方法だ。  かくして61.2kgリミットのバンタム級で、できるだけ減量でダメージを負わず、試合当日は68kgから70kgの間で戻し、ケージに向かうことになる。  6月8日に公開されたパトリシオの身体は、その過程が順調に行われていることを表している。 [nextpage] ペティスvs.パトリシオの勝者=「正規王者」は、「暫定王者」パッチー・ミックスとの「バンタム級王座統一戦」へ  一方、現Bellator世界バンタム級「正規」王者のセルジオ・ペティスは、2021年12月の堀口恭司戦の4R 左バックフィストでの逆転勝ち以来、1年6カ月ぶりの再起戦となる。  2019年9月のUFCでの勝利後、Bellatorに移籍し、MMA5連勝中で、2021年5月に当時の世界王者フアン・アーチュレッタに挑戦し、5R判定勝ちでバンタム級王座を獲得しており、堀口戦に続く2度目の王座防衛に臨む。  平本蓮とも練習をともにした29歳のペティスは、2022年4月のBellatorバンタム級ワールドGP1回戦で同門のラウフェオン・ストッツと対戦予定だったが、スパーリング中に右ヒザ前十字靭帯を損傷したため欠場。  そのストッツが、GP1回戦でアーチュレッタとのバンタム級暫定王座決定戦で勝利し、同級「暫定」王座についたが、GP決勝でストッツがパッチー・ミックスに1R ヒザ蹴りでKO負け、暫定王座をミックスに明け渡している。  今回の6月16日の『Bellator 297』のペティスvs.パトリシオの勝者=「正規王者」は、パッチー・ミックスとの「バンタム級王座統一戦」に向かうことになる。  また、7月30日(日)の『超RIZIN』では、朝倉海とフアン・アーチュレッタによるバンタム級王者決定戦も行われ、その勝者はBellatorとのダブルタイトルマッチを行う可能性も出てきている。  群雄割拠のバンタム級戦線に周到な準備で乗り込む、パトリシオが三階級を制覇し、唯一無二の王者となるか。
全文を読む

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.331
2024年3月22日発売
UFC参戦に向け、ラスベガス合宿の朝倉海。「プロフェッショナル・ファイターの育て方」でチームを特集。『RIZIN.46』鈴木千裕×金原正徳インタビュー、復活K-1 WGP、PFL特集も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント