マイク・ブラウンは来日できないが──
王座戦に臨むにあたり、懸念点のもう一つは「コーナーマンの不在」だ。
「マイク・ブラウンがたぶん来れない。UFCのダスティン・ポイエーが同じ日に試合みたいで……」と、当初、7月大会参戦に踏み切れなかった堀口だが、その問題もいまは前向きにとらえている。
「今回、スティーブ(モッコ)っていう元ヘビー級のレスリングコーチ(NCAA2度王者・元五輪米国フリースタイル代表)と、アンデウソン(フランカ)打撃コーチ、それと……たぶん二瓶孔宇が日本なんでついてくれるんじゃないかと。練習パートナーとして一番いいんで」と、ブラウンと意志の疎通ができているモッコとフランカの両コーチ、さらにハワイ大会には帯同できなかった空手時代からの盟友・二瓶孔宇が、日本大会になったことでコーナーマンとして入ることが可能になるという。
堀口にとって、MMAを戦うなかで伝統派空手は大きなパートを占めている。これまでも試合の直前でも、亡き師匠・二瓶弘宇氏の空手の動きの確認を怠ることはなかった。弘宇館長の三男の孔宇氏と向き合うこと、それがかなわないときでも、空手家の兄の堀口健太氏を帯同し、空手の稽古を行うことが、試合前の大事な作業のひとつとなっている。
ブラウンコーチ不在のなかでタイトルマッチに臨むことを決断した堀口に対し、神龍陣営には、かつて堀口に勝利している上田将勝が参謀として入っていることも伝わってくるが、堀口のマインドはいつも通りだ。
7カ月ぶりの試合でも「“練習を試合みたいにやっている”ので全然問題ないです」と、常在戦場の構え。バンタム級でRIZINとBellatorの両団体を制した元王者は、10連勝中の神龍を過小評価も過大評価もしていない。
「(神龍の)印象は……まあ寝技の強い選手かなと。寝技でも立ち技でもどっちでもしっかり決めて倒したいと思います」と、どの局面でも戦える自信をのぞかせる。
10歳下の神龍が「俺がフライ級最強なので、堀口選手、殺してやるよ」「堀口選手の時代は終わりなので、俺がしっかりぶっ倒して3つめのベルトをゲットします」と、再三、挑発してくることに対しても「言葉遣いが出来ていない」とバッサリ。
「盛り上げようと思って、ああいうことを言っているんだと思うけど、やっぱりナメられたら好きじゃない。調子に乗ってんなと。クソガキがガヤガヤ言ってるけど、まあ、しっかりとブッ飛ばして、“堀口恭司、ここにあり”というところを見せたいと思います」──さまざまな出来事が重なり、米国から一転、日本でタイトルマッチを戦うことを決断したフライ級の先駆者は、さいたまのケージで、新たなベルトの獲得に向かう。それは、堀口恭司にとって「始まり」に過ぎない。