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インタビュー

【RIZIN】アーチュレッタ「井上はいつか王者になる。朝倉海との王座戦は5R・25分の戦争をしたい」、井上直樹「アーチュレッタ選手から『カリフォルニアに来い』と言われて練習してもいい」

2023/05/08 13:05
【RIZIN】アーチュレッタ「井上はいつか王者になる。朝倉海との王座戦は5R・25分の戦争をしたい」、井上直樹「アーチュレッタ選手から『カリフォルニアに来い』と言われて練習してもいい」

(C)RIZIN FF/ゴング格闘技

 2023年5月6日(土)東京・有明アリーナにて『RIZIN.42』が開催された。ダブルメインイベンントのバンタム級では、フアン・アーチュレッタ(米国)が、井上直樹(セラ・ロンゴ・ファイトチーム)に判定3-0で勝利。元谷友貴(フリー)にKO勝ちした朝倉海(トライフォース赤坂)との7月のタイトルマッチに駒を進めた。

 試合後、アーチュレッタは、井上について「(Bellatorバンタム級でも)トップ5には間違いなく入っている。誰とやってもいい試合ができると思う。彼がまだ若い、ヤング・ストームのうちに捕らえて良かったと思う。イノウエはこの試合を経て成長もするだろし、より強くなって、いつかチャンピオンになる男です」と高く評価。

 続けて、朝倉海とのタイトルマッチに向けて、「自分はかつて世界チャンピオンだったし、常にタイトル戦というのは5Rでやってきたから、世界タイトルを獲るのに、それは必要なことだと思っている。自分としても25分間戦うことが好きで、もしそうする必要なら(1R)25分ラウンドということでもいい。25分の戦争をしたい」と、5Rでのタイトルマッチを希望。

 王座獲得のキーポイントとして、「彼をドッグファイトに引きずりこめるかどうか。アサクラを捕らえて、ひたすら5Rに渡って削り続けることが必要だ。自分は打撃をもらっても下がらずに前進するし、テイクダウンされてもすぐに立ち上がる。自分がテイクダウンしたら、相手には立ち上がらせない、今夜のようにだ。それが自分の思う泥試合のような戦い方だ」と、井上戦同様に「深海にひきずりこむ」戦いで勝つ、とした。

アーチュレッタ「嵐の夜にヤングストームを切り抜けた」

━━試合後の率直な感想をお聞かせいただけますか。

「“ドッグファイト”だっただろう? 今ちょうど話していたんだけど、井上選手は本当に今日“戦い”をやる気で来ていたって。それは最初に自分達2人がリングに足を踏み入れた瞬間に感じ取ったよ。そして、自分が“戦争になる”と言っていたように、今日自分が掲げていた旗のように両国の歴史を示すかのようなタフな戦いを繰り広げた。それぞれの国の歴史が物語っているように、我々はタフな試合をし、勝利を手にするためには深く深くへと掘り下げていかなければいけない、そういう試合だった。そういうことが起きていた」

━━井上選手の試合前のイメージに対して、何か驚いたところや想像と違う部分はありましたか。

「いや、分かっていたことだから、彼は速くて技術も多く、トップポジションがすごく強く上手い選手だ。何よりスクランブルのやり方を分かっていることも知っていたから、そのために準備をしてきました。試合の序盤にかなり彼が力を使ってくることも分かっていたから、それを嵐のように捉えていた。

 時として、嵐には嵐で対抗することもあるけれど、それをしようとすると、非常に長い夜になる。しかし、嵐の中でしっかりと船に乗った状態にいて嵐を切り抜ければ、その先には陽光が差し込むということをひたすら祈る。それが今日起きていたことで、自分はしっかりとその状態と立ち向かっていました」

━━次は朝倉海選手とのバンタム級タイトル戦となりますが、どう考えていますか?

「この試合については非常に興奮しているし、日本で、たくさんの人々から注目される試合になるだろうね。とてもエキサイティングな試合になる。彼は爆発力があるフィニッシャーだ。それで……自分はできれば5Rでやりたい、というのも、もっと深海に引きずりこんで彼を苦しめたい。彼はとても長くて過酷な戦いを強いられるが、タイトルマッチとはそういうものであるべきだろうから、5Rでやるのがいい。楽しみにしています。これから戻って、体を作ってしっかり練習して準備を整え、朝倉選手との対決に戻ってきます」

━━朝倉選手を「深海に引きずりこみたい」ということですが、今日の彼の試合を見て、これならテイクダウンが容易にできると感じたからでしょうか。

「ああ、実際に見てみると、ドッグファイトの度合いというのか、自分と井上選手がやるのと、朝倉選手とやるのとでは、違いがありますね。正直、今日、自分が井上直樹とやったようなドッグファイトを朝倉海選手がやろうとしたら、おそらく彼はフルラウンド持ち堪えられません」

━━今回の試合を前に、日本人のレスラーと練習してきたのですよね? 須崎優衣選手(東京五輪レスリング女子フリースタイル50kg級 金メダリスト)と練習した経緯を教えていただけますか。

「ええ、アメイジングでしたね。ここ日本出身のオリンピック・チャンピオンと練習することができた。たまたまなのですが、僕のトレーニングの一環にレスリングというのは必要なものなんだけど、米国で彼女がInstagramで、『同じ街にいるからお会いしませんか』と、それで彼女のボーイフレンドと一緒に出会うことになって、一緒に練習することになった。その後、彼女から『滞在を伸ばしたい』ということを聞かれて、自分の家で一緒にトレーニングを続けてくれていた。彼女は自分の家族と一緒に過ごして、とっても素晴らしい関係を続けてる。彼女は僕のレスリングに間違いなくたくさんの良い指摘をしてくれて、僕の子どもたちにも役立つアドバイスをたくさんしてくれました。

 それで、自分が日本に来る時には、日本で自分のチームと一緒に練習しましょうね、という話をしていてチーム一丸となって練習した。これってまるで、ホームをずっと離れずにいられるような状態というのか、子どもたちの将来のためにも、この良好な関係を続けて、日本が誇る世界最高のレスラーたちとレスリングをし、そして学ばせてもらうということを続けたいと思っています」

━━判定結果が伝えられるまでの間、100%確実に自分が勝利していると思いましたか?信じられないほどの攻防をあなたたちは繰り広げていましたけれども。

「あの時点ではある意味、どちらが勝っていてもいいやと思っていましたね。それだけ、自分はもう自分のハートをリングに置いてきたような感じだったし彼もそうだ。3人のジャッジがどう判断しようとも、自分のパフォーマンスには満足していたし、あのような展開で自分達が試合を繰り広げられたことは幸せだった。それに、残念だけれど、もう少しでフィニッシュできるところまで近づいていたのができなかった。でも、自分の持つものを全て置いてきたから、自分に求められること全てをやり遂げた気持ちでいました」

━━普段、米国でトレーニングしているところと、日本でのトレーニングの大きな違いとは何かという点に興味があるのですが、加えて、7月に試合がありますから、日本で準備をするということもありますか?

「それは絶対ないです。世界最高のコーチであるティキ・ゴーセンのもとでずっと練習していますから。彼は縁の下の力持ちでいろんなことの指揮系統に立っている。そして基本的に、自分というのは彼の天才的な毎日の指導の賜物なんです。彼は、自分を研ぎ澄ませてくれます。自分は思考が散漫になりがちなので、その全てをまとめあげてくれます。MMAファイターというのはそうやって普段から頭の中がとっ散らかっていていろんなことが起きているような状態です。だから、MMAを自分はやっています。いろんなディシプリンがあって、だけど彼はその全てを磨いてくれる。それ以上の場所はありません。自分はティキと、ポール・ヘレイラに支えられているんです。というのも、彼らは流れが悪くなったときにインターバルの1分間でしっかり自分自身を取り戻させてくれます。今日のことで言えば、2Rに入って圧倒し3Rに入って3Rで勝負を決めるという方向へ導いてくれるのです、そうやって自分は勝利を決めることができました」

━━リング上のマイクでヒザを傷めたというお話をされていましたが、この試合中に負傷したのですか? あるいは試合前に負傷していたのですか。

「いや、あれは井上選手がいい動きだった、という話ですね。自分がロープ際でテイクダウンに行った時に、彼が後ろから押し返してきて横に倒れる形になったのですが、怪我はしていません。尻もちをつかされてリングを背にして動けない状態になって。1R序盤に劣勢に立たされたことを言いたかったんです」

━━タイトルマッチを戦う朝倉海選手についてうかがいます。試合の一番のポイントはどこになるでしょうか。また5Rやりたいというのは、3Rでははっきりした決着がつかないかもしれないと思っているからでしょうか?

「まず朝倉選手と対戦するにあたっては、彼を捕らえて、ひたすら5Rに渡って削り続けることが必要だと思っています。そういうふうに考えていることもあるし、5Rやりたいというのは、自分が常にタイトル戦というのは5Rでやってきましたから、世界タイトルを獲るのに、それは必要なことだと思っているんです。それこそが自分が生きるためにやっていることで、自分の専門性であり、職業としてやっていることだ。

 自分はかつて世界チャンピオンでしたし、自分がその時よりも劣ることはあってはならない。自分としては25分間戦うことが好きで、もしそうする必要なら(1R)25分ラウンドということでもいい。25分の戦争をしたい、そのために戦いたいと思っているから。自分が不安を感じていることなどはない、それは今夜見せた通り自分は冷酷にガツガツ戦える。全力で戦うべくして、ここに来たし、ファンのために、ファンに与えるものがあるようにと思って戦っています。そして、自分にとってはアリーナをしっかり完売させるような理由が必要です。自分にはここで戦う理由も必要です、しっかりと25分間試合をするところを見せてお金を稼ぐという意識を皆が持ち、25分間ファンを楽しませる必要がある。逆に言うと、今日の井上選手との試合を、もう2R見たいとは思いませんか? ファンのみんなももう2Rあったらもっと攻防を楽しめたと思うのだけど。

 キーポイントになるのは、彼をドッグファイトに引きずりこめるかどうか。今夜のようにお互いにとって辛い、泥臭い戦いをするようにすること。それが戦いとしてあるべきものになっていく。自分は打撃をもらっても下がらずに前進するし、テイクダウンされてもすぐに立ち上がる。自分がテイクダウンしたら、相手には立ち上がらせない、今夜のようにだ。それが自分の思う泥試合のようなものです。それが自分のキーですね」

━━今日の試合はスクランブルは互角で、互いにニアフィニッシュもあったと思います。その中で大きかったのは、2Rにダウンを奪った右ストレートだと思いました。井上直樹選手の右をもらってすぐの右でした。すぐに打ち返せたのはそんなに井上選手の右が効いていなかったのか、打ち返しを狙っていたことなのか、どのような状況でしたか?

「いやいやいや、井上選手のパンチはすごいハードでしたよ。顔見て貰えば分かるように痣もできているし、随分と傷だらけになってやられてしまっています。彼は本当によくやったと思っています。自分には5人の兄がいますし自分をぶん殴ってくるコーチもいますから、どんなタイプの攻撃があっても、耐えられるんです。自分が耐えられると分かってさえいれば、どれだけ強く打たれてもやり続けられるし、やり返せるということで、それが2Rに自分がやり返せたということに繋がっている。そうやって試合を自分のものにできたのだと、思っています」

━━試合後のリング上で井上直樹選手に『いつか、チャンピオンになれる』と言っていましたよね? 井上選手が、Bellatorのバンタム級のトップ戦線に入ったとして、戦っていける実力だと思いますか。

「彼はトップ5には間違いなく入っている。誰とやってもいい試合ができると思う。キム・スーチョル選手にも同じように思ったのだけど、弱点を修正して自信をつけて、井上選手は若いですし、自分としてはまだ彼が若い、ヤング・ストームのうちに捕らえておけてよかったと思いますよ。彼はこの試合を経て成長もするだろし、より強くなって、いつかチャンピオンになる男です」

━━試合前のインタビューとはスーツが異なりますが、何着日本に持参したのですか?

「試合前と今とで2着だけです。桜のスーツと、花と蛇のスーツ。気づいてくれてありがとうございます。とっても嬉しい褒め言葉です。

 最後に簡単に、お礼を言わせてください。まずは神に感謝を、そしてマネージャーのティキを始め、この試合を実現してくださった方々へ感謝申し上げます。この試合を盛り上げてくださった全ての方にも、自分をプロモートしてくださった皆さんにも心から感謝しています」


【写真】試合後にアーチュレッタが食べていたのはブルーベリー。

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