「DEEPでベルトを巻くまでは、上の舞台のことは絶対に言わないって決めていました」
「連敗もして、周囲は“弱くなって辞めていくだろう”という声も聞こえてきたけど、自分は全然、折れてなかった。体調が良くなってくれば練習も出来て、全然、勝てると思っていた。やっとずっと目標にしていたDEEPのチャンピオンになることができて、MMAで日本一の選手になって、その先の世界へ──と目指してやってきたんで、日本一になるためにRIZINに勝負に行くんだ。そこまでやっと来ることが出来た」
実は、5年前のタイトルマッチで敗れた後も、RIZINのオファーはあった。欠場者が出た際に、連勝中の石司に白羽の矢が立てられたが、石司はそのオファーを断ってきたことを本誌の取材で明かしている。
「DEEPでベルトを巻くまでは、上の舞台のことは絶対に言わないって決めていました。佐伯(繁・DEEP代表)さんを通して、負傷欠場の代役としてRIZINからオファーを貰ったこともあります。その時も同じ気持ちだったので、『話を聞くつもりもないです』って断固拒否しました。自分が戦っている団体でチャンピオンになっていないのに、上のステージに行くなんてありえない。同じようにUFCやBellatorで戦うなら、日本一にならずして、世界に挑戦っていうのは違う」
それほどまでに頑固で、世渡り下手ともいえる石司の格闘技に対する真摯な思いが、今回のRIZN参戦に込められている。
「30半ばで日本一になって世界へなんて、みんな馬鹿にするのは分かってるけど、子供の頃から馬鹿にされるのは慣れているから自分にとっては何でもない。今までの人生を思えば、20年かけて苦しみながら、回り道をしながらやっとここまで来たんで、これからもっと強くなって、これから絶対勝ち上がって行くんだって信じてやっている。それをRIZINのリングで果たしていきたい」
対戦相手の金太郎も、石司とは別のストーリーを胸に戦いの舞台に上がる。リング上では、そのどちらにも等しく、勝敗が待っている。
石司は、「格闘技でもうまくいかなくて苦しいことばかりだったけど、格闘技を始める前と違って、頑張れば何とかなるんじゃないかという“希望のある苦しさ”だった。だから格闘技に命も救われたと思っています」と、一度は見放した人生を生きる思いを語る。
虐待していた父から家族は離れた。身寄りもなく一人暮らしでがんになった父を、近年、石司は訪ねている。「殺してやる」と思い続けていた父との再会と、リング上で果たしたことは、『RIZIN100CLUB』で見ることが出来る。
試合直前の、石司との一問一答は以下の通りだ。