「MMAでチャンピオンになるか、死ぬか」
そんなときに実家近くに総合格闘技のジムが出来た。寝技師・門馬秀貴によるブライトネスだった。
「最後にもともと好きだったMMAをやってみよう」
そう思い、入会したジムは「今まで自分がやってきた格闘技と違って、みんな楽しそうにやっていて、寝技をやってみたいと思った。もともとPRIDEに憧れて、自分には総合は無理だと思っていたけど、寝技がすごく面白くて、嫌なだけだった練習が楽しくて、失われた情熱が戻って来た」
アマチュアDEEPで8戦全勝も「格闘技のセンスはあるけど身体が弱い」状況は変わらず、MMAでも2年かけてプロに。強くなるために、ストイックになることを自らに課し、「友達を作らない、彼女を作らない、遊ばない」のルールを決めて取り組んだ。
「MMAでチャンピオンになるか、死ぬか」──の思いのなか、デビュー5年で10試合しかこなせなかったが30歳、無敗でタイトルマッチにこぎつけた。
「当時、RIZINでバンタム級トーナメントが決まっていて、堀口恭司選手、所英男選手のほかに、DEEP・修斗・PANCRASEの王者一人ずつ選出されると聞きました。タイトルマッチに勝てば、DEEP代表になれる」
そんな中、臨んだ2017年5月の試合で、石司は、当時のDEEPバンタム級王者・大塚隆史の持つベルトに挑むも、僅差で敗れ王座戴冠ならず。7月にはいち階級上げて、眼窩底骨折を隠して上迫博仁とのフェザー級王座決定戦に臨んだが、2RにサッカーキックによるTKO負けを喫し、2連敗となった。
復帰2戦も、内臓の病気で身体が思うように動けず。10カ月で3連敗し、長期欠場を決断した。「リハビリのような練習」から再開し、MMAスパーに戻るまで1年かかった。
そして、1年8カ月のブランクを経て、試合に復帰すると5連勝。2022年11月に、バンタム級暫定王者のCOROとベルトを賭けた再戦が実現し、1Rに右ストレートでダウンを奪うと2R・3Rも優勢に試合を運びフルマークの判定勝利で、悲願の王座戴冠を果たした。