DEEP☆KICK 652023年3月12日(日)泉大津市・テクスピア大阪
3月12日(日)泉大津市・テクスピア大阪において『DEEP☆KICK 65』が開催された。年内最初のナンバーシリーズとなった今回もOPマッチからメインイベントまで大盛況が冷めることはなかった。
大会中には4月1日『RIZIN.41』に出場する櫻井芯(Team FIST)・麻太郎(NJKF健心塾)・進撃の祐基(京都亀岡キックボクシングジム)・木村ケルベロス颯太(NJKF心将塾)・駿(Reborn kickboxing gym)・元氣(楠誠会館)の6選手がリング上に登場。それぞれが意気込みを語った。
▼ダブルメインイベント2 DEEP☆KICK-55kgタイトルマッチ 3分3R○翔磨 (多田ジム)負傷判定3-0 ※30-29×3×鷹介(魁塾)※偶発的なローブローにより鷹介が続行不可能に、3R25秒までの判定。翔磨が初防衛に成功。
勝負の世界では何が起こるかわからない。昨年3月にDEEP☆KICK-55kg級王者になった翔磨が鷹介を挑戦者に迎えた初防衛戦は呆気ない幕切れに終わった。オープンスコアで2Rが終了した時点でジャッジは3者とも翔磨を指示していたが、続く3R翔磨の左ローがローブローとなってしまい、鷹介は悶絶。コーナーで5分以上回復を待ったが、回復の見込みはなかったので最終的には負傷判定で翔磨の王座防衛が言い渡された。
1Rは鷹介が先手必勝とばかりに得意のパンチを中心に先制攻撃を仕掛けたが、翔磨は冷静。打ち合いの中に放った左で鷹介をグラつかせるなど時間が経つにつれ勝利の糸をたぐり寄せる。2Rになると、翔磨は鷹介の奥足にローを浴びせ誰の目から見ても明らかなダメージを与えていた。完全に翔磨のラウンドだ。
その後も翔磨のペースで試合は進むと思いきや、冒頭で記したようなアクシデンドが起こってしまった。結果が結果なだけに翔磨に笑顔はなく、「次回もう一回鷹介に勝ってから言いたいことを言いたい」と語るにとどまった。昨年翔磨はDEEP☆KICKだけではなく、HOOST CUPのベルトも奪取しているだけに、王座防衛に成功して次のステップに進みたかったのか。
対照的に劣勢のまま最後はローブローで試合続行不可能となった鷹介は号泣するばかり。当然試合内容には納得していないだけに、DEEP☆KICK実行委員会は両者の再戦を約束した。
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▼ダブルメインイベント1 DEEP☆KICK-51kg王座決定トーナメント決勝 3分3R延長1R×一樹(Reborn kickboxing gym)判定0-3 ※29-30×2、28-30○KING TSUBASA(ROYAL KINGS)※KING TSUBASAが-51kg第2代王者に。
「今まで僕がメインとかタイトルマッチに関わることはなかった。初めてトーナメントに出たときにも負けている。ここで獲らないかんと思いました」
試合後、生まれて初めてチャンピオンベルトを巻いたKING TSUBASAは本音を口にした。何度失敗を繰り返しても、努力を続けていればいつか報われる。それを如実に証明した王座決定トーナメント決勝だった。
そんなTSUBASAと空位のDEEP☆KICK-51kg級王座を争った一樹は元MA日本スーパーフライ級王者。戴冠歴があるという意味では大きなアドバンテージがある。
果たして両者は1Rから果敢に打ち合う。一樹が右ミドルキックを放てば、TSUBASAはすぐさまワンツーを返していく。ラウンド終了のゴングが打ち鳴らされると、口笛を吹く観客がいるほど場内は序盤からヒートアップしていた。そうした中、TSUBASAは右ローで突破口を開こうとするが、明確なポイントを奪うまでには至らない。2Rが終わった時点でのオープンスコアは1-0(TSUBASA)とイーブンだった。
3Rになると、TSUBASAは一樹をロープに詰め、ワンツーの連打で再三追い込む。一樹も何度か反撃を試みるが、それまでにTSUBASAのローで削られていたせいか決め手に欠いた。結局3Rの優劣がモノをいって、3-0でTSUBASAが勝利をモノにしてうれし涙を流した。 決して突出した武器を持ち合わせているわけではないが、戦略次第で相手を攻略して勝ちにつなげることができる。努力家・TSUBASAの戴冠はDEEP☆KICKに新風を巻き起こすか。
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▼ダブルセミファイナル2 DEEP☆KICK-60kg挑戦者決定トーナメント決勝 3分3R延長1R〇上野コウキ(直心会)TKO 3R 1分14秒 レフェリーストップ×ライヤマン(ナックルズGYM)※上野が-60kg次期挑戦者に決定。
上野コウキとライヤマンによるDEEP☆KICK-60kg挑戦者決定トーナメント決勝は上野に凱歌があがった。最初のクライマックスは1R終了間際に訪れた。上野が右クロスでライヤマンから先制のダウンを奪ったのだ。それまでも右ストレートでタイミングを計っていただけに、ドンピシャリの一撃だった。
しかしMMAがベースで体力に勝るライヤマンは2R以降ジワジワと反撃を開始。ローキックや右フックで上野を追い込む。このラウンドになってから上野は集中力が急激に落ちているように見えた。それでもダウンをとっていることがモノをいって、オープンスコアは19-18(2者)、20-18と全員上野を支持していた。
3Rになると、上野は復調。ボディへのフックやアッパーでライヤマンに揺さぶりをかけ、最後は右の三日月蹴りでKO。ライヤマンを悶絶KOに追い込んだ。激しい攻防を制した上野は「正直、ライヤマン選手は気持ちが強くて途中でどうしようかと思った」と打ち明けた。
続けて6月18日のDEEP☆KICKで澤谷大樹が保持する-60kg王座への挑戦が決まったことを告げると、リングサイドでこの一戦を観戦していた大樹(HAWK GYM)が登場し、「心が熱くなった」と挑戦者を持ち上げる一方で、「タイトルマッチは僕がKOするので見に来て」とアピールした。すると上野も「覚悟してください」と宣戦布告。たたでは終わらないタイトルマッチになりそうだ。
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▼ダブルセミファイナル1 DEEP☆KICK-53kg挑戦者決定トーナメント決勝 3分3R延長1R○上村雄音(BKジム)判定2-1 ※30-29、29-30、29-28×KING剛(ROYAL KINGS)※上村が-53kg次期挑戦者に決定。
上村雄音とKING剛によるDEEP☆KICK-53kg挑戦者決定トーナメント決勝は2-1のスピリットデシジョンで上村が薄氷の勝利を手にした。
1Rから上村は手数が多かったが、決定打を打つまでには至らない。一方、ベテランの剛も後の先を狙った戦法で揺さぶりをかけるが、攻略の糸口を掴めない。
結局、オープンスコアでは2R終了の時点で三者ともイーブン。3Rになると、上村は感情をムキ出しにして再び手数で勝負に出る。剛もインファイトで反撃を試みるが、2名のジャッジは上村を支持した。これで5戦全勝。 無敗のままタイトル挑戦にこぎ着けた上村は「次、長谷川海翔(誠剛館)選手への挑戦が決まりましたけど、ひじょうに強いチャンピオン。だけど、絶対僕がチャンピオンになるので応援よろしくお願いします」と力強くアピールした。
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▼第8試合 DEEP☆KICK-57.5kg契約 3分3R〇FUJIMON(京都亀岡キックボクシングジム)TKO 2R 1分6秒 ※レフェリーストップ×桃翔(T-KIX GYM)
DEEP☆KICKの会場を盛り上げながらも、最近は白星から遠ざかっていたFUJIMONが復活の狼煙をあげた。静岡のT-KIXから関西に乗り込んできた桃翔を相手に1Rから右ハイやうしろ回し蹴りで襲いかかる。そしてバックハンドなどで立て続けに2度もダウンを奪う。続く2R、青息吐息の桃翔に痛烈な右で引導を渡した。これでDEEP☆KICKの戦績は4勝4敗2分とイーブンに。2023年は実力派エンターテイナーとして、-57.5kgの上位戦線に割って入れる。か。
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▼第7試合 DEEP☆KICK-51kg契約 3分3R〇JIN CHOKE-DEE(楠誠会館)TKO 2R 2分51秒 ※レフェリーストップ×吉田亮汰朗(BKジム)
1Rから吉田亮汰朗のローブローで2度も試合を中断させられたJIN CHOKE-DEEだったが、闘志は衰えず。カーフキックや右ストレートで距離やタイミングを掴み、1R終了のゴングと同時に放った右で先制のダウンを奪う。
2RになってもJINは右で2度も吉田をグラつかせ、絶体絶命に追い込む。しかし、その直後吉田は逆に右ストレートをジャストミートさせダウンを奪い返す。
ダウンの応酬に場内は大いに盛り上がった。最大のクライマックスは2Rに訪れた。JINは再び右ストレートをクリーンヒットさせると、吉田はキャンバスで大の字に。2R残り9秒というところで倒し倒されのシーソーゲームに終止符を打った。
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▼第6試合 DEEP☆KICK-53kg契約 3分3R〇松岡宏宜(H・K・Agym)TKO 3R 0分8秒 ※レフェリーストップ×清志(NJKF KTF)
1Rから松岡宏宜はボディフックやカウンターのヒザ蹴りで試合の主導権を握り、試合のブランクを感じさせない。空振りに終わったものの、胴廻し回転蹴りにもやる気が感じられた。続く2Rになっても松岡の勢いは衰えることを知らない。右ストレートで清志をグラつかせると、パンチの連打でダウンを奪う。その勢いで姫路のベテランはラウンド終了間際にも清志からダウンをとった。
ここで清志は試合を止められてもおかしくなかったが、勝負は3Rへ。ダメージの大きい清志に対して松岡はプッシュ気味にダウンを奪うと、とどめとばかりに連打をまとめ粘る清志に引導を渡した。
試合後、マイクを握った松岡は「令和になって勝てなくなってしまったけど、今日は久々に勝ててうれしい」とうれし涙を見せた。
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▼第5試合 DEEP☆KICK-63kg契約 3分3R×篤椰(NJKFteamBonds)TKO 2R 0分15秒 ※レフェリーストップ〇久保田有哉(TARGET)
1R攻勢に出たのは今回が復帰戦となる篤椰の方だった。ボディへの連打やパンチの連打でスロースターターの久保田有哉を追い込む。しかし2Rになると、久保田は覚醒。右の前蹴りを顔面に放つと、篤椰は前歯が唇を貫通するほどのダメージを受けたため、すぐにドクターストップの裁定が下った。
久保田によると、前蹴りは同門で東京からDEEP☆KICKに応援に駆けつけることもあるAKARIからの直伝だという。最近はDEEP☆KICKに準レギュラーとして定期参戦するようになった久保田。この日は地元熊本県から応援団も駆けつけていた。これからは“前蹴りの久保田”として-63kg戦線をかき乱すか。
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▼第4試合 DEEP☆KICK-63kg契約 3分3R×光太郎(NJKF誠至会)TKO 1R 1分05秒 レフェリーストップ〇杉山遼平(TeamFIST)※光太郎が計量オーバーにより減点1
前日計量で光太郎は体重オーバーで減点1からのスタートとなったが、勝負は呆気なくついた。1R1分過ぎ、杉山遼平は左ハイキックを一閃。これがクリーンヒットすると、光太郎は根っこを切り崩された大木のように崩れ落ちた。1R1分05秒、杉山は公約通りにKO勝ちを収めた。今後が楽しみな存在だ。
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▼第3試合 DEEP☆KICK-54kg契約 3分3R○雄希(テツジム関西)判定2-0 ※29-28×2、29-29、29-28×獅子丸(ONE LINK)
この日、前座のベストバウトと断言してもいい一戦だった。1R開始早々、雄希は右でダウンを奪う。その後も三日月蹴りを相手のボディに刺していくなど雄希が優勢だったが、2Rになると突如として風向きが変わった。獅子丸は左ボディフックで雄希のボディに集中砲火。試合の流れを自分の方に傾かせる。
3Rになっても獅子丸の勢いは止まらない。右ストレートや左ボディフックを浴びせると、雄希は防戦を余儀なくされた。その直後雄希のバッティングで試合は一度中断されたが、試合の趨勢に影響はなし。獅子丸が攻めまくった。筆者の採点では28-28のドローだったが、ジャッジは雄希のダウンを評価。2-0の判定で雄希が薄氷の勝利を飾った。
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▼第2試合 DEEP☆KICK-52kg契約 3分3R○HOTARU(Continue)判定3-0 ※30-29×2、30-28×来斉(ビンチェレあべの)※来斉が計量オーバーにより減点1及びグローブハンデ
この日がプロデビュー戦の来斉は前日計量で規定の52㎏を650グラムもオーバーしたため、減点1だけではなく、グローブハンディをつけての一戦となった。猛省を促したい。対するHOTARUは前回のDEEP☆KICK ZEROで在日タイ人のボーちゃんにいい勝ち方をしただけに、この日も活躍が期待された。果たしてカウンター狙いの来斉に対し、1Rからワンツーからのヒザ蹴りなどで積極的に攻め込む場面が目立っていたが、決定打を浴びせるまでには至らない。
2Rからは来斉も左のカウンターで反撃を開始する。シーソーゲームになったので試合は白熱しかけたが、3RになるとHOTARUは集中力を切らしてしまう。結局減点1がモノをいって、30-29(2者)、30-28のスコアでHOTARUが判定勝ちを収めたが、課題が残る一戦だった。
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▼第1試合 DEEP☆KICK-51kg契約 3分3R○岸佑樹(NJKF健心塾)判定3-0 ※30-29×3×柴田聖輝(魁塾)
岸佑樹と柴田聖輝はふたりともこの日がプロデビュー戦。2Rまでは一進一退だったが、3Rになると岸は右のカウンターのヒザ蹴りで柴田を攻略。三者とも30-29で初陣を飾った。
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〈オープニングイベント〉NEXT☆LEVEL提供試合▼OP第3試合 -57.5kg契約 1分30秒2R×朴竜佑(バリエンテ)判定0-3 ※18-20×3○荒川大夢(NJKF心将塾)
▼OP第2試合 -58kg契約 1分30秒2R○中田銀次郎(TEAM LIGHT)判定3-0 ※20-19×3×牛島莉也(キックボクシングジム3K)
▼OP第1試合 -55kg契約 1分2R○山下真準(BKジム)判定3-0 ※20-19×2、20-18×長井友哉(Y'ZD南堀江GYM)
オープニングイベントではNEXT☆LEVEL提供で3試合が組まれた。中でも長井友哉を下した山下真準のテンカオのタイミングと破壊力は将来性を感じさせるものだった。
一進一退の攻防を繰り広げた中田銀次郎と牛島莉也はプロ顔負けのワンツーを見せた中田が判定勝ちを収めたが、敗れた牛島が見せたローを中心とした2Rの反撃にも見るべきものがあった。いずれも早くプロに昇格してほしい逸材だった。
(文・布施鋼治/写真・石本文子)