衰えは感じていないけど、Bellatorと契約した妻のサポートもしていきたい
──そして、クィリー戦の勝利で、ライト級GPに出場を決めました。
「Bellatorがライト級GPを開催するのをずっと待っていたんだ。まだライト級でやったことがなくて、どの選手を見ても『いつになったらライト級に愛情を注いでくれるんだ』と思っていたはずだ。今こそ、Bellatorのために輝き、ショーを見せる時さ。このGPで優勝することはとても素晴らしいことだ。僕は多くの仕事をしてきた。自分がしてきた全ての決断──このGPを勝ち取ること、3本目のベルトを手に入れること、それは僕にとって全て意味がある」
──あらためてウスマンの実力をどのように評価していますか。
「ウスマンは良いチャンプだと思う。彼は素晴らしいストライカーだ。前回の試合では、レスリングのスキルがあることを示し、『お前ら、俺がどこから来たか忘れたのか!?』って感じだった。彼はこのスポーツの中では比較的若いから、彼が持っているスキルのうち、まだ披露できていないものがあるということが最大の収穫だと思う。彼がまだ見せていないものを、他にどんな形で持ってくるのか、もちろん、その点に僕も大いに注目しているよ」
――今回は王座戦の5R。UFCでも5分5Rを経験していて、接戦になればなるほど、その強味を生かしてジャッジの裁定をもぎ取るあなたにとって、このトーナメントは有利にも感じますか。
「5Rできるのであれば、自分のペースをずっと保てるので、相手を疲れさせることで勝利に繋げられるのではないかと思う。一度、5Rの判定で負けたことはあるけど、それは自分のペースを保てなかったことが原因だから、長期戦でも自分のペースをうまく保つようにしていきたいね」
──この試合のアンダードッグであることについて、会見で聞かれていましたが「気にしない」と。
「僕は人生で一度も(ベッティングの)オッズを見たことがないんだ。オッズがどのように機能するのかさえ知らない。そんなことは気にしていない。でも、アンダードッグのことは理解している。僕はキャリアの大部分で劣等生だった。僕がチャンピオンになったときのことをみんなは覚えていて、その試合では僕がフェバリットだったけれど、その前の長い間、僕はアンダードッグだったんだ。僕はアンダードッグであることに何の問題もない。真のベテランにとっては、そんなことはどうでもいいこと。戦いなんだから。ホームの観客、ウォークアウト……あれやこれやと、戦い以外の他の付帯事項はすべて重要じゃない」
――39歳になって、まだ自分のフィジカルの衰えは感じていませんか?
「幸いなことにまだそんなに衰えは感じていないんだ。ただ、練習でもしっかり20分のリカバリーを取ったり、逆に1、2時間のしっかりとしたフルリカバリーを取るように、計画して練習しているので、いまのところ特には年齢による衰えを感じていないね」
──クイリー戦後に「引退までの感情的な影響は、まだ全く準備ができていないが、あと3試合はある」と語りました。このGPは、有終の美を飾る戦いになるのでしょうか?
「そうだね。まずはGPを戦い抜くこと。僕にとって、僕の最期はこの3戦で、それで終わりになる。4試合契約したんだから、もういい。次は妻の番だ。マリアがBellatorと契約したからね。妻は、多くの妻がそうであるように、自分のキャリアを先延ばしにした。妻は4人の子供を産み、今はジムでトレーニングをしているから、次は僕がその世話をする番だ。
トム・ブレイディ(元NFL選手)を見れば分かるように、定年退職を迎える人は皆、もう1回プレーできると考えていると思うけど、僕にとっては、妻が自分の番を迎えることが重要なんだ。彼女はトレーニングに集中する必要があるし、MMAで良い成績を残すために必要な仕事量もある。子供たちの世話をするのが主な仕事である以上、その時間を確保するのは難しいんだ。だから今度は僕が子供の面倒を見たり、学校の送り迎えをしたり、そういうことをやっていって、妻のキャリアの育成に集中していければいいなと思っている」
──輝かしい戦歴の中で最も好きな思い出は?
「ここサンノゼのケージで妻にプロポーズしたこと。僕はあまり積極的な性格ではないから、そういった機会を持てたことはとても良かったんだ。(ここで何があっても)妻へのプロポーズには勝てないだろう、素晴らしいことだと思うよ」
――ベンソン選手の最終章がGPで、キャリアの集大成を見せることになりますね。ところでお母様も柔術をまだ続けているのでしょうか。
「ああ、いまは柔術を止めている。長く働いて手がもうボロボロなので、道衣をなかなかうまく掴むことができなくてね。だから、母のこれからもケアしていきたいと思っている」
――王者への挑戦という大きな試合に臨むベンソン選手の戦いに注目します。最後に日本のファンにメッセージを。
「UFCで日本で戦って以降、日本のファンはいつも僕をサポートしてくれてありがとう。僕は今回、GPでタイトルマッチを戦うからぜひ見ていてください。そして、さっき言ったとおり、格闘技が生まれた場所のひとつである日本に、どんな形であれぜひ行きたいんだ。また皆さんに会えることを楽しみにしているよ!」(text by Matsuyama Go)