こんなに選択肢がある中で格闘技っていうスポーツを選んでいる時点で、リスペクトできる変態ですから
金ちゃん どういう時が楽しいの? 格闘技観てて。どういう時にテンション上がるの?
坂井 やっぱりね、下世話な金ちゃんが好きなブレイキングダウンとかさ、ボブ・サップとかボビー・オロゴンで積み上げる大会もいいんだよ、お金のために。でもそういうものの上にある本当の試合、たとえばこの間のBELLATORとRIZINの対抗戦とか、堀口恭司vs.那須川天心、堀口恭司vs.朝倉海……、負けたらおしまいの試合があるわけですよね。下世話なエンターテインメントの上に、男同士の戦いが一個あってそういうのが絶対にメインだから。
サトシvs.AJ・マッキーとか、昔ならミルコvs.ヒョードル、負けたらそこで人生おしまいというような戦いを見せてくれる。吉田秀彦vs.小川直也もそうですけど。それを3カ月に1回くらい、PRIDEが連発していた。あの時の感動なんかもうないんだろうなっていう喪失感の中にある時にRIZINができて、これだけ軽量級がメインになって盛り上がるなんて、誰も思っていなかったですからね。偉大だと思います、レジェンドは。桜庭選手も五味隆典選手も。どうにかね、RIZINにはパっと終わってしまって欲しくないですね、何かの不祥事とかで……。
金ちゃん その可能性もあるよね(苦笑)。
坂井 いろんなところの力を借りて、ずっとやってほしい。UFCって競技化して資本もしっかりしている。日本は不安定ですよね。でも不安定だから面白い部分もある。不安定だしどこがスポンサーとかも分からないし、どこか助けてくれたりもする危なっかしさ。ずっと、プロ野球やJリーグみたいになれないのが格闘技のコンプレックスでもありみんなを惹きつける魅力であるという。
金ちゃん なるほどね。
坂井 昔、アントニオ猪木さんが作り上げたもの、仕掛けたものもあるけど、日本独自の文化としても、競技として最高峰のアメリカに殴り込んで王者を獲ろうとする、アスリートとしての選手も、全部楽しみたいですね。ボクシングでも、井上尚弥選手や村田諒太選手って、『はじめの一歩』でもありえないことをしてるもんね。
金ちゃん そうだね、強い人が出てきてくれるとね、やっぱり素人も入りやすいよね。
坂井 そういう人たちもいるから、ブレイキングダウンも面白いのよ。ちゃんとしている人がいるから。
──金ちゃんはブレイキングダウンのどういうところが面白いと思っていますか?
金ちゃん ブレイキングダウンは、オーディションが好きですね、戦いはあんまり観ていないです、正直(笑)。あのオーディションは多分みんな好きですよね、格闘技興味ない人も。あれを、プロの方だったりすると格闘技と言ってほしくないと思いますけど、ただ入り口としてはいいと思います。盛り上がるのが分かるし。1分ですけど、素人ってやっぱり長く見るのが結構しんどいじゃないですか。グラップリングの膠着状態も。そういう意味で、すぐ試合も決まるし、いいですよ。受け皿が広いということがいいと思います。
坂井 実際アウトサイダーもそうでしたよね? 批判殺到の時期もあったけれど、実際プロを相手に試合ができる選手も現れ、朝倉兄弟を輩出しているので。
──そういう選手たちも強さを求めていました。一方でブレイキングダウンの場合は、選手によっては強さよりも人気を求めているようにも……。
金ちゃん そうですね、そこらへんは難しいかもしれない。
坂井 そういう点で、平本選手が挑発することによって朝倉未来選手を格闘技から降ろさせないというのもあるじゃないですか。平本選手みたいな人がいなかったらパッとやめちゃうかもしれない。賛否両論もあるし、SNSの時代に変わってきているけど、『UFC 283』のグローバー・テイシェイラの試合、結果的に彼の引退試合になりましたけど、素晴らしいじゃないですか。『ロッキー』みたいで。その素晴らしさを伝えるためにも、ブレイキングダウンも含めて、全ての格闘コンテンツによって底上げをしてほしいと思います。俺、今でこそ軽蔑していますけど、格闘技に興味持ったのは蝶野vs.大仁田からですからね。大仁田って面白い! って思って。今は軽蔑していますけど……。
金ちゃん その感じがわからんのよ(苦笑)。何で軽蔑してるのか分からないし。
──今後はどんな格闘コンテンツをやっていきたいですか?
坂井 自分達のお笑いの技術はないけど、ありえない選手をゲストに迎えていきたいですね。誰も観てないコンテンツなんで。
金ちゃん めっちゃ言うじゃんお前。
坂井 ありえない……、そうですね、ROAD to ガヌー。か、コナー・マクレガー……。うーん、ツテを辿れば、マックス・ホロウェイくらいは出てくれるかもしれない。日本のジムとも交流していたし。フアン・アーチュレッタとかもね。
金ちゃん シーズン1が終わって、シーズン2があるのか、そこだけ。ないと始まらないよ。
坂井 シーズン11以上やるよ。『ウォーキング・デッド』と同じだけやるよ!
金ちゃん もう観てないんだよ、あれ。シーズン6以降見てないよ、日本人は。それで、とりあえずこの番組は1年間やらせてもらったので、次シーズンがあるかないかで、方向性は決まっていきますね。
坂井 これだけは言っておきたいんですけど。
金ちゃん まだあるか。
坂井 放っておいても注目度が上がる選手っていると思うんです。それってめちゃくちゃすごいことですよね、朝倉兄弟も、天心、武尊も。だから、そうじゃない選手の魅力を引き出せたらなと思いますね。格闘家、面白い人が多いですから。こんなに選択肢がある中で格闘技っていうスポーツを選んでいる時点で変態ですから。リスペクトできる変態アスリートですからね。
──なるほど。では最後に、2023年に期待しているファイターは誰ですか?
坂井 これからどうなっていくのかということで、生い立ちから含めて久しぶりにおもしろいのが西川大和。注目していますね。UFCデビューも楽しみにしていたんですけど……考え方も変えない頑固なところも彼を強くしたのかもしれない。本当にフィジカルモンスターがいる海外で通用するかっていうのも気になります。
あとはもう、格闘技界ということで、ボクシングと格闘技は別だと言う方もいらっしゃいますが、やはり2度と生まれないかもしれない井上尚弥の偉大さというか。武井由樹も、那須川天心もボクシングに行って、強さを追い求めてボクシング転向する選手がそれだけいる中で、井上尚弥の全盛期をリアルタイムで観られるということを喜ばないと。もう、漫画でもありえないですから。いきなり23年に上の階級のフルトンとやると言われているので、全日本人が見守るべき。……どうする? 具志堅さんでしょ? 時代を遡ったら。50年後くらいにあんな感じに井上尚弥がなったらどうするよ、アフロで『逃走中』とか出てたら。
金ちゃん ああ、うん(苦笑)。俺が期待しているのは、出てもらったゲストで、玖村兄弟ですね。俺らってやっぱりイケメンのファイター好きじゃないんですよ、実は。だけど玖村兄弟はファンになりましたね。K-1は卒業する選手がいても、そこでニュースターも生まれて新陳代謝するっていう、もしかしたら23年は朝倉兄弟を玖村兄弟が超えたりするんじゃないかなって。
坂井 俺よりマニアックじゃん。でもお前、ゆうちゃみのことしか聞いてねえだろ。
金ちゃん ゆうちゃみと、どれくらいモテてきたかって話だね(笑)。
坂井 あとはもう、団体代表者たちの漢気を見たいですよ、堀口恭司vs.デメトリアス・ジョンソン2を実現させてほしい。格闘技ファンってずっと焦らされてるんだよ、Mだから。チャトリ、デイナ・ホワイト、サカキバラ、スコット・コーカーたちには仲良くしてもらいたいです!(text by YUKO)
◆「鬼越トマホークの格闘スクランブル」
AmazonPrimevideo「VパラTVプラス」、U-NEXTにて絶賛配信中。最新話は初月のみAmazonPrimevideoにて無料配信されており、現在は第8話(ゲスト:野杁正明)が無料視聴可能。今後は吉成名高、伊澤星花、玖村兄弟、矢地祐介が登場する。