MMA
ニュース

【DEEP×BLACK COMBAT】UFCで八百長絡みの違法賭博で引退したハン・スーファンが電撃復帰、西川大和をKOした“脱北ファイター”の日本への思い=大原樹里と対戦するのは?

2023/01/26 23:01

北朝鮮で乞食のように暮らして韓国でプロデビュー、西川大和をKOした後に思わぬ出来事が──

 もうひとつのライト級準決勝にも物語があった。

 ダウォンとテヒョンの試合をケージサイドで見届けたチャン・ジョンヒョク(3勝1敗2分)は、元UFCのテヒョンについて、「体力が残念です。昔、好きな先輩だったので応援しました。“メティス”は面白くありません」と、グラップラーのダウォンを酷評する。

 柔術茶帯で22歳のキム・グンヒ(1勝)と対戦する“脱北ファイター”のジョンヒョクは、13歳で母と2人で死線を乗り越えて北朝鮮を脱出。中国で3、4年、肉体労働をして、韓国に17歳で来たという。

「北朝鮮で乞食のように暮らしていて、資本主義でお金を稼いでぽっちゃりと太ったから周囲から甘く見られるのかもしれないけど、平凡じゃなかった。死に際もたくさん乗り越えてきた。脱北する途中で人身売買されそうになった人もいたし、中国の人たちにいっぱい叩かれたり……格闘技は厳しい競技だけど、私には特に険しくは感じません。人が与える影響もあるけど、環境が与える影響は絶対に無視できない」と、ハングリー精神が大きな武器だと語る。

「BLACK COMBATに出れば、実質的な親孝行が出来る」と参戦を決めた理由を語るジョンヒョクは、「1Rでボッコボコにする。最近カーフキックを習って、前回の試合でも相手を壊した。韓国のカーフキックより、やはり南北の両方を生きたカーフキックの方が確かに痛いということを見せたい」と意気込んだ。

 試合は、ともにオーソドックス構えから、パワフルな左右で前に出るグンヒに対し、ジョンヒョクはガードを固めて左を狙う。いったん下がったグンヒは鋭い右ローを2度当てるが、ジョンヒョクはオーソから左ミドルをヒット。

 互いに右ローの蹴り合いのなか、圧力をかけたジョンヒョクは右を強振して相手をのけぞらせて金網に詰まらせると、すぐさま左フックをヒット! ダウンしたグンヒにパウンドラッシュし、1R TKOでレフェリーを呼び込んでいる。

 決勝進出を決めたジョンヒョク、実は日本との関わりも持っている。

 スポンサーのエクストリームのドリンクを飲んで「スゴイ」と日本語で語ったジョンヒョクは、スタッフから“スゴイ”ですか? と問われ「『スゴイ』って言ったらダメですか。悪口を言われますか?」と笑顔を見せた。

 ときにトラッシュトーカーのように、相手の発言に口を挟み、試合を盛り上げるジョンヒョクだが、かつて別のインタビューでは、韓国でMMAでプロデビューしたことで、大きな気付きがあったことを明かしている。それは、2018年3月にチョンジュで行われた「TFC DREAM 5」での西川大和との試合だった。

「北朝鮮での映画の中では日本はいつも悪者です。それは米国や韓国の見せ方もそうなのですが、私は日本と特別な経験があります。韓国でMMAでプロデビューしたときの対戦相手が西川大和選手でした。当時、彼は4勝4分で無敗。私は試合のネタのような存在でした」と、ルーキー時代を振り返る。

 試合は、1Rにジョンヒョクがバックフィストでダウンを奪うと、立ち上がってきた西川にラッシュをかけ、2度のダウンを奪ってのパウンドでTKO勝ち。西川にプロ初の黒星をつけたジョンヒョクは、試合後、忘れられない体験をしたという。

「私がKOで勝ちました。その後、西川選手のご両親が試合が終わった後に、私にご飯を買ってくださったんです。素晴らしいスポーツマンシップに感動しました。韓国も北朝鮮も日本に対して良くないイメージを持っている人が多いと思いますが、その偏見は間違えていたと、そのとき感じました。私が接した日本の方々はスポーツマンシップもマナーも良い人たちでした。素敵な方たちだなと感じました。

 その後で私はお母さんに聞いたくらいです。『もし僕をKOさせて気絶させた相手に優しくできる?』と。そんな両親は少ないと思います。もし僕が親だったら息子をKOされてそれが出来るのかと考え、そんな簡単ではないなと思いました。そのとき一緒に食事しながら撮った写真もあります。いつか必ず日本に行って、北朝鮮で聞いた日本と、実際の日本の違いを感じたいです。私の意見ではどこの国も同じで、どこにでもいい人も悪い人もいる。お互いを尊重しながら見習うべきところは見習ったらいいと思います」。

MAGAZINE

ゴング格闘技 NO.335
2024年11月22日発売
年末年始の主役たちを特集。UFC世界王座に挑む朝倉海、パントージャ独占インタビュー、大晦日・鈴木千裕vs.クレベル、井上直樹、久保優太。武尊、KANA。「武の世界」でプロハースカ、石井慧も
ブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリアブラジリアン柔術&総合格闘技専門店 ブルテリア

関連するイベント