脳にダメージ「攻防」が無い危険な打ち合い
米国ラスベガスのUFC APEXで行われた同大会は、放送と同時に多くの賛否両論に包まれた。
互いに平手の打ち合いは、階級を合わせているとはいえ、顔を無防備に曝け出さなければならず、「攻防」が生まれない“危険なタフマンコンテスト”になっている。
クリス・トーマスとクリス・ケネディによるウェルター級戦では、トーマスの平手打ちにより、ケネディが完全に意識を失って床に倒れ込んだ。周囲にはコミッションから派遣されたレフェリーが取り囲み、倒れる選手の頭部を保護しようとするが、それが十分に間に合っているとはいえない形もあった。
ケネディのもとにかけつけたドクターは、「座ってください。あなたはノックアウトされました」と話しかけると、ケネディは、「何をしてノックアウトされたのですか? 私は戦っていたのですか?」と試合を覚えていない様子。脳震盪を起こしたケネディは、一時的な記憶喪失を起こし、事態をうまく把握できていないようだった。
This is so sad. Note the fencing posture with the first brain injury. He may never be the same. @danawhite & @TBSNetwork should be ashamed. Pure exploitation. What's next, "Who can survive a stabbing"? pic.twitter.com/jTENpUmJDd
— Chris Nowinski, Ph.D. (@ChrisNowinski1) January 19, 2023
倒れて腕が硬直する選手、立ち上がろうとして踏ん張れず前に転ぶ選手……この動画を見た、元WWEレスラーで神経科学者のクリス・ノウィンスキーは、「これはとても悲しいことです。ダナ・ホワイトとTBSは恥じるべきだ。純粋な搾取だ。次に何が起きる?『誰が刺されて、生き残るのか?』」と警鐘を鳴らしている。
防御が出来ないこのスラップファイトは格闘技ではなく、エンターテインメントとしても、人命に関わり、後遺症が残る可能性がある、危険な見世物になっている。
この倒れ方が危険なことは、UFCを運営しているダナ・ホワイト代表が理解していないはずもなく、映像では一瞬退くような驚きの表情を浮かべている。
AEWレスリングに続いて放送された同番組の評価は、1月18日の米国ケーブルテレビ放送で45位。導入部として放送されたAWEは、その夜の3位になっている。
『Power Slap: Road to the Title』の第1シーズンは、『The Ultimate Fighter』と同じように、さらに7つのエピソードで構成され、PPVイベントのフィナーレに向かう。