2022年12月31日(土)『RIZIN.40』(さいたまスーパーアリーナ)の「RIZIN vs. Bellator 5対5 全面対抗戦」の副将戦で、パトリシオ“ピットブル”フレイレ(ブラジル)とのフェザー級王者対決に臨んだクレベル・コイケ(ボンサイ柔術)が8日、自身のYouTubeを更新。ピットブル戦の敗因、1カ月の休息後に再び海外修行に向かうこと、さらに盟友のホベルト・サトシ・ソウザとの「約束」を語った。
これまでRIZINで全てフィニッシュしたから、「初めての判定」が難しかった
ピットブル戦で、左目上を少しカットしただけで「大きな怪我はない」というクレベルは、Bellator王者に判定負けした気持ちを「寂しいな……。初めてのRIZINでの負けも寂しい。気持ちは大変。試合はまあまあの内容だった。しばらく負けてなかったけど、いっぱい勉強した」と冒頭で振り返った。
Bellatorではフェザー級とライト級の二階級を制しているパトリシオは、鋭い出入りの打撃を武器に、強いテイクダウンディフェンスを活かして、クレベルの組み技・寝技を徹底的にカットしてRIZIN王者を封じ込めた。
「プレッシャーが強い。パンチが全部強い。カウンターも。試合の最初は自分もちょっと緊張して、パンチもテイクダウンも両方心配あったけど、でも、だんだん試合が進むにつれて普通になった」と、自身も蹴り技を駆使して立ち会った試合展開を語る。
接戦のなか、RIZINルールのトータルジャッジの難しさも初めて感じたという。
「サトシの試合も2R以降はサトシがAJよりアグレッシブだった。私たちはこれまでRIZINで全部フィニッシュしてきているので、初めての判定で難しかった」と、RIZINで初めて経験した「判定」決着に戸惑いを見せながらも、「でも柔術のときから勝敗をジャッジに委ねたくはないから、相手からタップを奪うことで勝敗を自分たちで決めてきた。だからこれは自分のミスだ」と、極め切れなかったことを悔やんだ。
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負けは多くのことを教えてくれる。場合によってはRIZINのこれまでのすべての勝利よりも──
その敗因のひとつが慎重になりすぎたことだという。それは試合後にBellator次鋒戦を戦ったフアン・アーチュレッタがRIZIN勢に指摘していたことだった。
「やる気はあったのだから、もっと自分から仕掛けて、喧嘩ファイトをすべきだった。そうすれば場合によっては勝つことができた。でも、その前に相手が誰なのかを知る必要がある。彼らはそこらへんにいるファイターではなく世界のトップ選手で危険な拳を持っている。もしその拳が当たれば意識を断たれる。だから自分は慎重になった。もっとぶつかれば、私が倒れるか、私が相手を倒すか、どちらかになったでしょう」と、自身のペースに強引に持ち込む必要があったとしながらも、博打勝負をせずに、あと1歩踏み込めなかった理由も語っている。
「敗戦は非常に困難でとても苦い」というクレベルは、「負けは私を傷つける。(心に)痛みを感じ、もうすぐにでも練習に戻りたい気持ちになっている」と吐露しながらも、「同時に自分の身体と心を休ませることが必要」と、1カ月間、練習のペースを落とすという。
RIZINでカイル・アグォン、摩嶋一整、朝倉未来、佐々木憂流迦、萩原京平、牛久絢太郎の全員をフィニッシュしてきたクレベルは、2022年の4試合に向かうために、ファイトキャンプを繰り返してきた。心身ともに休息が必要だが、「選手として集中する必要がある。だから、おそらくはしばらくは海外に行きます。そしてもっと練習します」と、しばしの休息明けに、再び海外修行に出ることを予告する。
それは、Bellator王者を相手にすることでしか計れなかった自身の課題。武器の寝技に持ち込むためのテイクダウンにつながる動きの強化だ。
「ピットブルとは誰もが戦いたくない。しかし私は戦った。皆、私が1RでKO負けするだろうと言っていた。でもピットブルが『サプライズがあった』と言ったように、皆が思っていたのと違うことを見せられたと思う。
もちろん負けは悔しい。長い間、負けていなかったのでとても痛みを感じています。でも負けは同時に、私に多くのことを教えてくれることを知っています。場合によってはRIZINのこれまでのすべての勝利よりも。敗戦の味は苦い、でもそれと同じく与えられるものもある。立ち上がって、さらに強くなって戻って来れると知っています。それを私は皆に見せられると信じている」と、苦い敗戦を糧にすると誓う。
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ピットブルとは次はタイトルを賭けてやることになる
対抗戦のRIZIN副将と大将として、ともに重責を担い戦ったボンサイ柔術のホベルト・サトシ・ソウザについて、試合後に何を話したのか、と問われたクレベルは、表情を歪ませた。
「サトシと自分は一緒に勝ってきて、一緒に負けました……これを受け入れることはとても難しいです」と涙を流すと、「私はまだ彼としっかり話が出来ていません。私も試合後は少しの間、一人でいました。皆、気を遣って話しかけて来ないですから。サトシとは試合について、少しだけ話をしました。そして、私たちは約束しました。“必ずもっとたくさん練習して強くなる”と」と、盟友と再起を約束したことを明かした。
「立ち上がって、さらに強くなって、RIZIN王者として長い期間、防衛していけると知っています。そして、ピットブルは私との再戦を希望していました。彼とは次はタイトルを賭けてやることになるでしょう。私は間違いなく、自分の持つ最大限の力を出し、このベルトを守ります」。
そう力強く語る“柔術の鬼神”は、タフな試合を越え、MMAファイターとしてさらなる進化を止めない。
YouTubeでは、対抗戦のそのほかの試合や、日本代表として臨んだ想い、試合前に三崎和雄と語った侍としての戦いなど、異例の28分にわたる動画で語っており、必見の内容だ。