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【UFC】ライト級王座決定戦、11連勝オリヴェイラvs.10連勝中マカチェフは「同じ“寝技”でもやりたいことが全然違う」、バンタム級王者スターリングvs.挑戦者ディラショーは「プレッシャーのかけ合いに」(髙阪剛)

2022/10/19 13:10

王者スターリングvs.挑戦者ディラショーは、最初にどちらが主導権を握るかが重要

――続いてセミ・メインイベントは、4月の『UFC273』でピョートル・ヤンを僅差の判定で破ってバンタム級統一王者になったスターリングが、復活してきた元王者TJ・ディラショーを迎え撃つバンタム級タイトル戦です。

「ディラショーは2021年7月のコーリー・サンドヘイゲン戦で競り勝ったものの、試合中にヒザの靭帯を負傷して手術してるんですよね」

――そうですね。なので手術明けの1年3カ月ぶりの復帰戦がいきなりタイトルマッチとなります。やはり、そこは懸念材料になりますか?

「当然そうなりますけど、ディラショー自身は“欠場明けだからタイトルマッチの前に1試合挟みたい”みたいな気持ちはなかったと思うんですよ。若いイメージがありますけど現在36歳で、その前には薬物検査失格のペナルティで2年という時間を棒に振ってますからね。チャンスは逃したくないでしょうから」

――“欠場明け”とか“ブランクがある”など言ってられない、と。

「ただ、本人はそんなにマイナス要素として捉えていないかもしれない。バンタム級王者時代にコーディ・ガーブラントに2連勝した時のイメージは自分の中でもちゃんと残っているだろうし、それ以前に積んできた経験を試合の中に落とし込んで、試合でやろうとしていることと身体がフィットしている感じは自分も観ていてすごくあるなと思っているので」

――それがサンドヘイゲン戦でも垣間見れたと。

「そうですね。ディラショーが今さら自分のスタイルを変えることはないと思うんですよ。どれだけ研究されても高速ステップで左右に構えを変えながらプレッシャーをどんどん掛けていって、それによって相手を削って、当てるべきところで打撃をしっかり当てにいくという戦いをすると思うので」

――ただ、王者スターリングはグラップラーで、打ち合いを避けることが考えられますよね。前回もバックからの4の字ロックで動きを封じて確実にポイントを重ねる形で、ストライカーのピョートル・ヤンから判定勝ちを収めました。

「スターリングの一番の武器はバックコントロールで、そのためにもタックルに入りたいんですよ。スターリングはこの階級でトップのレスラーですけど、やるタックルは実はすごくシンプルで、まっすぐ入って片足を取るシングルレッグ。ただし、左右どちらの足も取れて、相手がスイッチする変わり際とかにすぐ入るので、タックルに入るためのセッティングに時間を取ったりせずに、バンバン入っているように見える。そしてタックルに入ることで、リズム的にも気分的にも乗っていきやすいんだと思います」

――タックルによってペースをつかんでいく、と。

「ただ、自分のタイミングでタックルが取れたら乗っていける反面、自分の距離じゃないところでタックルに行かざるをえなかったり、打撃でプレッシャーをかけられると逆にタックルが鳴りを潜めるんで、実はそこがスターリングのウィークポイントでもあるんじゃないかなと思うんですよ」

――1回目のピョートル・ヤン戦では、プレッシャーをかけられて後手に回ってしまいましたからね。

「だからスターリングは自分のリズム、距離で戦えている時は爆発的に強いんだけど、リズム、歯車を狂わされたときに修正するのに時間がかかるタイプでもあると思いますね。サンドヘイゲン戦のように速攻でタックルからバックを獲って、コントロールするのが理想で、ヤンのようにお構いなしに前に出てプレッシャーをかけてくる相手とは相性が悪い」

――それを考えると、ディラショーは相手が誰であろうと高速ステップでどんどんプレッシャーをかけていくタイプですよね。

「だからおそらくディラショーはプレッシャーをかけて、うまく誘い出すようにスターリングに嫌々タックルに入らせて、そこを切ってから打撃を畳みかけるということをやりたいんじゃないかと思います。ディラショー自身、もともとNCAAディヴィジョン1レスラーで、タックル切るのもうまいですからね」

──そうなるとスターリングは、いかに自分からプレッシャーをかけられるか、がポイントになりますか?

「そうですね。どちらが最初に主導権を握れるかによって、相当差が出てくると思います。ディラショーも慎重にいくタイプというより、自分からリスクを取ってでも攻めていくタイプだから。そのディラショーの仕掛けの対応にスターリングが追われるようになったら、どんどん削られていってしまう。

 だからスターリングのほうは、ディラショーの動きに惑わされず、2回目のヤンとの試合のように、自分から仕掛けて組みにいきたい。そしてバックを奪えたら、ここからはスターリングは無敵の強さを発揮するので一本取れないまでも、しっかりラウンドのポイントは奪うことができる。そこの強みがあるので、タイトルマッチの5ラウンドの中、取るラウンドは取る、捨てるラウンドは捨てる、という戦略も必要になってくるかもしれないですね」

――判定勝負になったら、スターリング優位に傾いていく可能性が高い、と。

「一方で序盤からKOできる爆発力をディラショーは持っているので、どちらにしても最初の1~2ラウンドでどちらが主導権を握るかが重要なってくる。本当に試合開始直後から、一時も目が離せないような試合になると思いますね」(取材・文/堀江ガンツ)

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