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インタビュー

【UFC】ライト級王座決定戦、11連勝オリヴェイラvs.10連勝中マカチェフは「同じ“寝技”でもやりたいことが全然違う」、バンタム級王者スターリングvs.挑戦者ディラショーは「プレッシャーのかけ合いに」(髙阪剛)

2022/10/19 13:10

寝技の強さが近距離の打撃戦を可能とするオリヴェイラと、組むための打撃と寝かせてパウンド&極めのマカチェフ

――『UFC280』アブダビ大会はすごいカードが揃いましたね!

「えらいこっちゃですね(笑)。メインイベント級のカードがズラリと並んでいるというね」

――その中でメインイベントはシャーウス・オリヴェイラvs.イスラム・マカチェフのライト級王座決定戦、まさに“頂上対決”と呼ぶにふさわしい一戦が実現します。

「オリヴェイラが11連勝中、マカチェフが10連勝中。どちらも負ける姿が想像できないですよね。そこをあえて全体的な試合の作りとかテクニック的なところで較べてみると、打撃に関してはオリヴェイラのほうがテクニック的にも豊富だし、首相撲からのヒザ蹴りや至近距離のヒジなどMMAで有効な打撃も含めて、正直、上かなと思うんですよ」

――オリヴェイラは、元Bellator王者のマイケル・チャンドラーもKOしていますし、試合を重ねるごとに打撃が向上していますよね。

「その打撃が伸びてきているのにはひとつ理由があると思っていて。もともとオリヴェイラは寝技が得意で、寝技の展開が好きであるがゆえに、前半からガンガン極めにいって後半バテるというシーンが数年前まではあったんですよね。その反省もあって、近年は全体的な試合作りとして、打撃にシフトしていったんじゃないかと思うんですよ」

――トップ柔術家が打撃をひとつの軸にしていくようになった、と。

「それによって、打撃にプラスして組んでからの寝技という必勝パターンができあがっていった。たとえば、打撃でプレッシャーをかけて、相手が嫌がって頭を下げたところにフロントチョークだったりとか。あとは組んできてくれたら、そのままバックを取って後ろからチョークで絞めるとか、打撃を軸にしつつ、最終的に極めて勝つという形ですね。ただ、その前段階である打撃がかなり向上しているので、打撃だけでもKOを奪えるくらいの実力を備えたのが、今の状態だと思います」

――最強のグラップラーがKOできる打撃を身につけて、まさに鬼に金棒ですね。

「だからオリヴェイラの強さの根底にあるものは、やはり寝技なんですよ。“寝技になれば絶対に勝てる”という自信があるからこそ、打撃も思い切っていける。組まれたり、テイクダウンされても“下から極めればいい”という余裕があるから、近い距離で積極的に打撃戦ができるんだと思います」

──一方、マカチェフのほうはいかがですか?

「マカチェフもグラップラーですけど、オリヴェイラの柔術系の寝技とは違い、マカチェフは盟友ハビブ・ヌルマゴメドフと同じタイプですよね。組んで寝かせたらパウンドを落として、相手が嫌がって横を向いたらバックを取って首を絞めるとか。どちらかと言うとフィジカル全開で、しかもスタミナは最終ラウンドまでもつというのが、彼らの寝技の特徴ですよね」

――柔術系のオイヴェイラが“柔”の寝技だとしたら、マカチェフは“剛”の寝技というか。

「そしてマカチェフは、打撃に関しては“仕留めるための打撃”というより、あくまでも“組むための打撃”という位置づけで練習してる、そんな匂いがするんですよ。だから、おそらくマカチェフは打撃のやり合いは望んでいない。なので必然的に寝技のやり合いという形になったら、これはこれですごく見応えがある試合になると思いますね」

――柔術ベースとサンボベースの異なる寝技のぶつかり合いになりますね。

「これは進化した最新版の異種格闘技戦ですよ。両者ともにMMAにおけるトップのグラップラーでありながら、まったく種類の異なる組み技のルーツを持った者同士がタイトルを賭けて戦うという。これは寝技好きの人間からすると、たまらないマッチアップですね」

――MMA黎明期からブラジリアン柔術とロシアのサンボは天敵みたいなライバル関係でしたけど、最新の頂上対決というか。

「そこがすごく興味深いですね。同じ“寝技”でも両者はやりたいことが全然違うんですよ。オリヴェイラはどちらかというとスクランブルを駆使するタイプ。足関節を取るわ、首を取るわ、腕を取るわと、狙うところをバンバン変えて、対処しきれなくなった相手を極める感じですよね。逆にマカチェフのほうはそれをやらせず、“潰して潰して”制圧する寝技なので」

――自ら動いて翻弄するオリヴェイラと、動きを封じて制圧するマカチェフ。まさに矛と盾ですね。

「だからこそ“どっちが強いの?”という興味が尽きないですよね。ブラジリアン柔術とロシアのサンボ、どっちが上なのかという、UFC始まって以来の命題のひとつの決着をつけようということなので、ものすごいことが起こるんじゃないかと思います」

――かつてのPRIDEヘビー級頂上対決、エメリヤーエンコ・ヒョードルvsアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラのように、マカチェフがパウンドで圧倒することも考えられますしね。

「そういうことですよね。オリヴェイラがいろいろ仕掛けようとするんですけど、マカチェフが“関係ねえよ!”ってフィジカルでボコボコにする展開もあるかもしれないし。逆にオリヴェイラが、そのパウンドをうまくすり抜けてバックを奪うかもしれない」

――オリヴェイラは劣勢になっても冷静に切り返していく技術と気持ちの強さを持ち併せていますしね。

「逆にマカチェフは自分が上から攻めて制圧しているときはすごく強いんですけど、下からちょっとずらされたり、すり抜ける系の動きをやられたときに対応が一瞬遅れるときがあって。そこで隙が生まれて相手に立たれてしまうシーンもこれまで見られたんです。

 オリヴェイラはグラウンドになればそういうところもバンバン突いてくるだろうし、なおかつ“際”のところでヒジ打ちも入れてくるから、マカチェフもまた打撃を気にしながら自分の寝技をやらなきゃいけないし、際の部分も気をつけなきゃいけない。だから、細かい部分まで相当ヒヤヒヤする寝技が観れるんじゃないかと思いますね」

――あと、ひとつ懸念されるのはマカチェフは10連勝中ですけど、マッチメイクの関係でトップランカーとの対戦経験があまりないんですよね。そこがトップランカーを根こそぎ倒してきたオリヴェイラとの大きな違いかな、と。

「それはありますね。修羅場をくぐってきた数が違うという。やはり一瞬の状況判断ひとつとっても、トップランカーは他の選手ができない動きや攻撃もしてくるんですよ。だから実際、オリヴェイラはジャスティン・ゲイジーやダスティン・ポイエーにダウンを奪われていますけど、そのピンチを乗り越えて勝ち続けてきたので。

 マカチェフに対して、“俺はこれだけの修羅場をくぐり抜けてきたぞ、お前はどうなんだ?”というところで、精神的なマウントを取る部分もあると思います。

 一方、マカチェフはタイトルコンテンダーとの戦いこそないものの、この10連勝中にピンチらしいピンチもほとんどないので、そこに幻想がありますよね。だから、精神的なプレッシャーのかけ合いという意味からも、戦いはすでに始まっている。非常に楽しみな一戦です」

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