フィニッシュの腕十字は「プラン通り」だった
試合は、終始アグレッシブに攻め続ける平良のペースで進んだが、ベルガラの左右を被弾することもあり、また、グラウンドでポジションを入れ替えられ、肩固めの体勢を狙われる場面もあった。しかし、入りは浅く、平良は慌てることなく、危険なポジションを脱している。
平良は、試合後の岡田遼のYouTubeで「肩固めは全然、極まってなかったですけど、ズレてたので力を使わせようかなと。でもブリッジでスイープされたのは初めてです」と、フィジカルでサイドを取られたことを語る。
ヒザ蹴りを巧みに突き、シングルレッグ(片足タックル)からボディロック、さらにバックに回ると、片足をかけてグラウンドに引き込み、両足を相手の胴に4の字にロック。背後からリアネイキドチョークを狙いながら、2Rの残り41秒で、腕十字に切り替えてタップを奪った。
長身の平良とベルガラの頭の位置が合わず、チョークが極まりにくいなか、「耳と耳を寄せろ」の声に頭を下げる平良。このとき、平良は自陣コーナーを見ている。最後の腕十字は、あらかじめプランに入っていた動きだった。
岡田は、「バックからの腕十字は、この2人(松根&平良)がずっーと練習して思い描いていたプランで作戦通りでした。バックからチョークがなかなか取れないことも想定していてダメだったときに、思い切って腕十字に切り替える」と、フィニッシュについて明かす。
松根も「2分半くらいから達郎が“(腕十字に)行っていいか”とこちらの方を見ていて、行こうとしていたから、“まだ行くな”と指示して、ラスト1分で“もうそろそろ行け”と合図を出して行ったらハマった」という。
バックを取っている状態から残り52秒、アゴの腕を解き、ベルガラの左手首を掴むと、右足で頭を刈り、左足もかけて腕十字へ。「足首を、ヒザ締めろ!」の声のなか、ベルガラの立ち際にうつ伏せになって極めた。ポジションを入れ替えられる危険性もある腕十字は、残り時間を確認しながらの確信の動きだった。
解説のドミニク・クルーズが「ビューティフルトランジッション」と感嘆するほど、流れるようなフィニッシュ。「タイラは新世代のファイターであり、個々の動きが連動している選手で、このスポーツの進化を思わせる、見ることが楽しみな選手」と高く評価された。
公約通りの一本勝ちでUFC2連勝を決めた平良は、マット上で小さく踊ると、「アイム・ハッピー・サンキュー! アイム・スーパー・ハッピー! この試合に向けて、デビュー戦から5カ月間で成長した姿を見せられるように、それだけやってきました」と笑顔。
一本勝ちでのフィニッシュについて、「相手がすごいタフな選手だったので(相手が)苦手な部分の寝技で削ろうと思ってました」と作戦通りだったとした。
そして、「僕が日本人の……口が乾燥している(苦笑)、僕が日本人初のUFCチャンピオンになります。チャンピオンになるまで負けません」と力強く王座獲りを宣言。最後にカメラに向かって「早起きしてくれてありがとう!」と、日本のファンにメッセージを送った。