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インタビュー

【Bellator】スコット・コーカー代表インタビュー(後篇)「ヒョードルは『タフな試合で最後にしたい』と言っている。ベイダーとの再戦か、実は……アンデウソンは『日本でなら戦っていい』と言っていたんだ」

2022/10/12 12:10
 RIZINの榊原信行CEOとハワイで会談を持ったスコット・コーカーBellator代表。RIZINのみならず、Eagle FCやほか団体とも、ファイターファーストでオープンに窓口を開けて交渉を行っている。プロモーターとしては独特な世界観を持つコーカー代表はなぜその境地に至ったのか。  ロングインタビュー前篇では日本で再起を果たした堀口恭司への熱い思いを語り、中篇では注目の「ライト級ワールドGP」について、RIZINライト級王者のホベルト・サトシ・ソウザへ熱いラブコールを送ったコーカー代表。  後篇では、エメリヤーエンコ・ヒョードルの「引退試合」に関わる意外なエピソードとともに、年末から2023年のプランも語ってくれた。 もし機会があれば、2人の『GOAT』が戦う姿を見せたい @nobu_sakakibara ──(中篇からの続き)2021年10月にティム・ジョンソンを1R KOに下したエメリヤーエンコ・ヒョードルの引退に向け、カウントダウンが始まっています。一部では、アンデウソン・シウバと日本で試合をするという報道もありました。その可能性は? 「実は2カ月前にアンデウソンのマネージャーに連絡をしたんだ。『ヒョードルとMMAで戦わないか』って。アンデウソンはまだ中東のエキシビション(ブルーノ・マチャドと8R 判定無し)から戻ってきたばかりだった。アンデウソンは47歳で年齢も重ねているし、『これまでのハードなトレーニングの影響で身体にはダメージがあるから、MMAのトレーニングを新たにするのは難しい。ボクシングなら受けてもいい』っていう返事があったんだ。  だから、今のヒョードルのゴールは最終的にライアン・ベイダーと再び戦わせたいと思っている(※2019年1月にヒョードルが1R KO負け)。ニューヨークかロサンゼルス、米国のどこかで。ライアンは休んでいて、2023年の初めに戦いたいと言っているから、話をすることになるね。  ヒョードルが最初に引退について触れたのは、2019年に日本でクイントン・"ランペイジ"・ジャクソンを下したときだったね。その後、コロナで色々ストップしてしまった。  2021年10月にジョンソンを相手にロシアで試合はしているから、引退の場をロンドンか米国で調整したいと思っていたんだ。でも、アンデウソンからは丁重にお断りされた。アンデウソンはボクシングを楽しんでいると思う。ショータイムのペイパービューで10月29日には、ジェイク・ポールと8Rを戦う予定だ(※前座でユライア・ホールも出場)。でも、もし機会があれば、2人の“GOAT”が戦うんだ。  実は……アンデウソンは『日本でなら戦っていい』と言っていたんだ。まだビジネス的に色々な調整が必要なので、試合が実現できるとは明言はできないし、体重についてもアンデウソンは185ポンドから200ポンドに対してヒョードルは212ポンドだからね。色々調整が必要ではあるけれど、可能であればぜひ実現させたいと思っている」 (C)Zuffa LLC/UFC ──アンデウソン・シウバ選手が日本で試合をすることに、いまも思い入れを持っているということが聞けて驚きでした。ヒョードル選手との引退試合でなくても、日本で見たい選手です。ハビブ・ヌルマゴメドフは、ジュニオール・ドスサントスとヒョードルを戦わせたいと言っていましたが、いまの話を聞くと、ベイダーとの再戦、あるいはアンデウソン戦という方向のようですね。 「たしかにハビブからはサントスとの試合をオファーされたよ。興味はあるけど、色々オプションを考えてみて判断をしたいと思っている。ヒョードルは実際、世界の有名どころとはもうほとんどの選手と戦ってきているんだ。日本でも10年間無敗だっただろう。いくつもベルトを勝ち獲ってきた。長い経歴のなかで、ほとんどの事はやっている。次はヒョードルの『引退試合』になる。グローブを置いて引退するんだ。本人は『タフな試合で最後にしたい』と言っているし、我々もタフな試合を設定したいと思っている。今も連勝しているから勢いはある。それでも次の試合でグローブを置いて終わりにするって言われているんだ。感動的な歴史に残る瞬間になると思う。引退に相応しい相手を用意したいと思っている。選択肢は多いから」 [nextpage] ファイターは一定の期間しか稼げないから、多く稼いでほしい。だから他団体への出場も許可しているけど、ベアナックルは── ──そのハビブがオーナーのEagle FCとBellatorは選手間の行き来など協力関係にあります。一方で、素手のボクシング「ベアナックルファイト(BKFC)」にもBellatorウェルター級で王座戦も戦ったマイケル・“ヴェノム”・ペイジ(MVP)が出場しました。これらの他団体に契約選手が参戦することに寛容なのはどういった考えからでしょうか。 「ハビブとは実際に話し合って、『Bellatorにこの選手を出したい』『Eagle FCにこの選手を』というディスカッションをしたんだ。それでOKをして、こちらからもEagleに選手を送った。ファイターは一定の期間しか稼げないから、多く稼いでほしいんだ。だからRIZINへの参戦だって許可している。ファイトショーツやバナーにスポンサーを張るのもそうだ。オールドスクールに見えるかもしれないけど、私はあの感じが好きでもある。選手はBellatorだけに出場を限られる必要はない。  ただ、MVPのベアナックルファイティングへの出場については、少し違った。BKFCからMVPにかなり巨額なファイトマネーを提示されたんだ。それを聞いて、私から『出場するな』とは言えなかった。彼の人生を変えるほどの金額だったからね。MVPはタイトル戦線にからむ選手で、ファイターとしてもリスクが大きい。でも、自分自身のポリシーとして、またプロモーターとして、友人としてもMVPに出場をしないように言う事はできなかったよ。  私たちはUFCとは違う。それが選手のチャンスになるのであれば、他の場所でも戦えるようにする。選手の為になって、プロモーションの為にもなるのであれば、それは何一つ間違っている事ではないと思っている。ただ、全てに『イエス』と言っている訳ではない。MVPにとっては今回大きい収入を得る機会だった。だから『戦っておいで、あとはその後話そう』と伝えたよ。 (C)BKFC ──あの試合のダメージを考えると、MMAファイターのキャリアを続けるなかで、素手で殴り合うことに大きなリスクを伴うと感じました。 「本当にそうだよ。選手が負けると我々も負けるのと同じなんだ。選手を育てるのに時間も労力もかけて、試合で活躍できる状況まで育て上げるんだ。MMAはボクシングとも違うし、BKFCはボクシングとも違う。もっと荒いし、ホールドもクリンチから打つダーティーボクシングが可能となっている。だからボクシングとはまるで違う。今回は本当に金銭面がネックだったんだ。マイケルには電話で『これが本当にやりたいことなのか?』って確認したよ。それで『イエス』と言ったから、『気を付けて戦ってこい』と。それで今回、マイケルは負けたから、一歩戻らなければいけない。一歩戻ってまた前に進まなければいけない」 [nextpage] 12月のGP準決勝ストッツvs.サバテーロ、マゴメドフvs.ミックスに注目を (C)Bellator ──なるほど。プロモーターとしてもっともな考えだと思います。さて、現在進んでいるバンタム級ワールドGPですが、決勝戦はいつになりますか? 「バンタム級GPの準決勝が、まず12月9日(日本時間10日)にコネチカットのモヒガンサンアリーナで行われる。準決勝として現王者のラフェオン・ストッツにダニー・サバテーロが挑戦し、マゴメド・マゴメドフとパッチー・ミックスも戦う。日本でもU-NEXTで生配信されるから楽しみにしていてほしい。  その後、2023年2月後半か3月前半に100万ドルをかけたGP決勝を行う。2023年にはさきほど話したライト級GPも予定している。そして、ヒョードルの引退試合だ。対戦相手はライアン・ベイダーかアンデウソン・シウバか、誰になるかは分からない。でも、アンデウソンには、もう一度聞いてみようと思っているよ。それが叶わなくても、ヒョードルは『ベイダーとリベンジマッチをしたい』とも言っている。ライアンは現チャンピオンだから実現できるかは分からないけれど、ヒョードルの引退試合の為に、最大限頑張って調整するよ。  2023年は、年間18大会を想定している。今は、Strikeforce以来と言っていいほどの選手が揃っているので、何ができるかと考えるとワクワクするよ。205ポンドにはRIZINでも活躍したワジム・ネムコフがいて、11月18日にコーリー・アンダーソンと対戦する。ライトヘビー級もUFCと当たっても負けない。135(バンタム級)も145(フェザー級)もだ。どの団体と当たってもね。いい選手を揃えるのが本当に重要なビジネスだと思っている」 (C)Zuffa LLC/UFC ──先日、ネイト・ディアスがUFCとの契約満了を迎え、フリーエージェントとなりました。コーカー代表はネイトとはStrikeforce時代から交流があったと思います。今後、ネイトと交渉することもありますか。 「知っての通り、ネイトの初期の頃は自分がプロモートしたんだ。彼の兄弟であるニックの試合も色々とプロモートしている。UFCに行ったけど、その頃の関係もあって今もいい関係を築けているよ。彼はジェイク・ポールとも戦いたいだろうし、12月まで(3カ月間)独占交渉期間中だから、話せる状況になったら話そうと思う」 (※その後、RIZIN榊原信行CEOが海外メディアに「フロイド・メイウェザーの対戦相手は日本人である必要はない。ディアス兄弟は朝倉兄弟のグローバル版のようなもの。キャラクターもファイトスタイル素晴らしい。フロイドの対戦相手としても、それ以外でも興味を持っていて話したい」と発言。 ──UFCでは、コンテンダーシリーズや「ROAD TO UFC」(10月23日)が登竜門となっています。Bellatorがそういった企画を行うことはありますか。 「以前、『ストライクフォースチャレンジャー』を行っていたように、企画はある。そこからはロンダ・ラウジー、ダニエル・コーミエー、タイロン・ウッドリーらを発掘して試合経験を積ませて、最終的にベストファイターに育てていくコンテンツだった。UFCが今やっていることは特に目新しいものでもない。今後、実行したいと思っているのが、何らかのベルトを目指すか、チャレンジャーシリーズかは分からないけど、世界の各地域から、例えば日本だけでなくアジアとヨーロッパとラテンアメリカなどの地域で、予選を行い、将来のスターを育成するということは考えているんだ。 (C)Strikeforce  だから、回答としては『イエス』だ。ただ、どう運用していくのかは考えなければいけない。実際、米国ではナンバーシリーズのサーキットが回っているから、日本でも試合をして、ラテンアメリカでも試合をして、ヨーロッパでも大会を行い、そこで予選も兼ねて、勝ち上がった選手でワールドカップのような形にする。リーグ戦でね。実際にそういった企画もあったのだけれど、コロナで2年半もの間、全てが止まってしまった。今少しずつノーマルな状況になってきているので、いずれかは見せられるかもしれない。選手にチャレンジをする機会を与える。日本だけでなく世界で、ワールドカップシリーズのようにして、勝ち上がってメインカードになっていくような選手を育てたいんだ。日本にもラテンアメリカにもヨーロッパにもいい若手の選手が揃っているのは知っているからね。2023年に何か実行できたらと思っているよ」 ──勝ち上がった先に、世界がある。それはぜひ、実現させてほしいです。ハワイではRIZINと協力した大会もありそうですね。 「ハワイについては、夏から秋にかけてを考えていたのだけれど、ブレイズデルアリーナが6月から工事に入るらしいから、2022年にやったように、4月か5月頃に行かなければいけないかもしれない。ハワイでのイベントは最高だよ。ハワイの選手も最高の選手がいる。イリマレイ・マクラーレンの故郷でもある。そもそも、うちのスタッフがハワイ大会をやらなかったら多分怒ると思う(笑)」 ──ダブリン大会もそうですが、ハワイ大会のあの雰囲気もBellatorらしさを感じます。本日はロングインタビューをありがとうございました。最後に、日本の格闘技ファンへメッセージをお願いします。 「K-1から始まった自分の格闘技プロモーターとしてのキャリアで、日本は常に自分にとってとても特別な場所でした。日本では、信じがたいことに、ほぼ毎日のように大会を見ることが出来たんです。K-1に行って、次の日はPRIDE、その次の日は修斗やPANCRSE、ほかにもいろいろな団体が生まれた。そこで格闘技プロモーションがどれだけ大きくなれるのかの可能性に気づけました。私のそれ以降の基盤となった場所で、色々な事を学びました。これからの日本のMMAやキックボクシングの業界をサポートしていきたいと思っています。そして、いつも支えてくださっている事に感謝します。  Bellatorにもこれからもっと日本人選手を入れていきたいと思っています。堀口恭司選手ともいい関係を築けているし、エージェントのティキ・ゴーセンや各団体とも繋がっているので、これからも色々な可能性があると思っています。メディアの親会社(Viacom CBS)を持つ格闘技団体として、日本ではU-NEXTで配信しているように、世界全国に配信をしている団体として、日本に早く行きたいと思っています。RIZINとの共催のみならず、我々の単独の大会も将来的には開催できるよう検討していますし、日本でのこれからのBellatorの拡大の為にもコミットしたいと思っています。どうかこれからもBellatorの大会に注目してください!」
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