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【超RIZIN】どうなる!? 朝倉未来とメイウェザーの3分3R、朝倉がメイウェザーに“触れる”ために──直前予想

2022/09/14 20:09
 2022年9月25日(日)さいたまスーパーアリーナで開催される『超RIZIN』で、ボクシングルール(3分3R・契約体重無し)のエキシビションマッチに臨む、朝倉未来(トライフォース赤坂)とフロイド・メイウェザー(米国)が、公開練習やABEMAの個別インタビューで、試合に向けた心境や戦略等を語っている。  メイウェザーは言わずと知れた、史上初めて無敗のまま5階級制覇を達成したパウンド・フォー・パウンド。オーソドックス構えで卓越したディフェンス技術を軸に、50戦50勝のプロボクシング戦績を誇る。  対する朝倉は、斎藤裕やジョン・マカパ、ルイス・グスタボら実力者に勝利するなどプロMMAで16勝3敗をマークしている。ストライカーではあってもパンチャーではなく、サウスポー構えからの左の蹴りでのKOが多い朝倉は、今回の試合に向けてどんな進化を果たしているのか。  両者を知るボクサーたちの証言や本誌の取材も交え、直前の見どころを挙げていこう。 マインド的には同じ、何か言ってきたらキャンセルになってもしょうがない(朝倉)  12日に公開練習を行った朝倉は、今回の試合に向けボクシングトレーニングを行った上で、あらためて自身のバックボーンである空手、そしてMMAの動きを活かして戦うことを語っている。  まずは「フリーウェイト」だという無差別の体重について、朝倉は、「(80kgだと)スピードが落ちるなと思って。すでに77kgくらいなので、今日4Rやってみて今でもいい感じなので。体力の消耗も激しいと思うので、75kgくらい(で戦う)かな。食事に気をつけながら。矢地戦が70kg契約で、当日73kgくらいあったと思います。(今までで一番大きな身体?)そうですね。身体は確実に1、2年前よりデカくなったので、そこにおいては強みはあります」と、75kg前後で戦うことを語っている。  2021年6月に、プロボクシングライセンスも持つローガン・ポールと対戦したメイウェザーは、前日計量で155ポンド(70.31kg)だった。189.5ポンド(85.96kg)のポールと15.65kg差のなか、8Rを戦い、採点無し、KO・TKO以外の決着無しの特別ルールにより、勝敗がつかずに終わっている。今回、おそらく5kg前後になるであろう朝倉の体重差のアドバンテージは、さほどメイウェザーに影響しない可能性がある。  メイウェザーの身長は173cm、朝倉は177cmと4cm高い。しかし、リーチは174cmとされる朝倉に対し、メイウェザーが183cmと9cm上回っている。  ラスベガスとハワイで2度、対面している両者。朝倉は、「ホントに弱そう。小っちゃいですよね。会えば会うほど普通に勝てそうな気しかしない。首とか細いし(パンチが)当たったら倒れるんじゃないかなと。喧嘩とかする前に向き合ったりすると大体強さが分かる。総合格闘家として俺の方が絶対強いから、それを感じちゃってるのかもしれないです。ボクシングルールでいざ対面したときにどうなるか分からないですけど、普通にまっさらな状態で会うと、弱そうだなとしか思わない。生物的に、総合格闘家の海外の奴らのほうがヤバいオーラを出しているんで」「生身の状態で会ったときはそんなに怖さを感じなかった。隣りにいるときはまったく怖さを感じなかった。コメントでも『ビビってた』とかあったけど全くビビってなかったですし、むしろすごく弱そうだなと感じました」と、オーラを感じないと言い放った。  一方で、「映像では強いなと感じますけど、いざ対面すると、ほんとうに何か……ある種、覇気を感じさせない“達人の域”に達しているのかもそれない。那須川天心や京口(紘人)くんとか、身体は小さくて、普通に話しているときは強さを感じないけど、いざ構えてボクシングをやると隙が無かったりするので」と、リング上で実際に対峙したときにどう感じるか、だとも語っている。  那須川天心戦ではメイウェザーが試合前から、駆け引きを見せた。今回も試合直前まで、気の抜けない状況が予想されるが、メイウェザーは、朝倉について「サウスポー構え」であることしか知らない、と無関心を装っている。 「絶対見てると思いますよ。そういうタイプの臆病な人間だと思うので、めっちゃ研究してると思います」という朝倉は、試合前の攪乱についても、「(バンテージも)巻かないで待っていようかと思っています。(メイウェザー戦のときの)天心って、絶対にこのチャンスでやらないといけないという感じだったじゃないですか。俺はマジで、前日キャンセルになってもしょうがないと思ってるんで。あいつが何かアレ(言ってきた)だったら、別に俺も止めるんで。だからマインド的には同じくらいなんで、(こちらから)どうしてもやってくださいって感じではないし、条件通りにフェアに戦ってもらいます」と、YouTuberとして巨万の富を築いたファイターらしく、相手の心理戦には応じないとした。  グローブは10オンスになるだろうと、RIZINの榊原信行CEOは語るが、決定のアナウンスは無く、「こっちは8オンスでも6オンスでも、小さい方がいい。相手のガードの効果が無くなるから。天心戦のときもボクシンググローブ(のメーカー)が違ったみたいで、『まったく同じじゃないとやらないですよ』とは伝えています。メイウェザーと同じものでやります」と告げた。 [nextpage] メイウェザーを苦しめた「僕がやりたい戦い方をしている選手もいた」(朝倉)  朝倉は空手、MMAでも素足で戦ってきたが、ボクシングシューズは「毎日練習で履いているので大丈夫です。最初からやりやすかったですね。踏み込みが速くなるし、バックステップも。パンチも強くなります」と、いい感触を得ている。  2018年大晦日の那須川天心vs.メイウェザー戦を「あれは(メイウェザーが)体重にモノを言わせてるんで、そんなの俺でも出来る。下の階級の子のパンチをもらう覚悟でいったら。ほんと参考にならないですね。あんな感じでは俺に対しては出来ないと思いますよ」と語る朝倉は、メイウェザーが那須川に対して行ったことを、逆にメイウェザーに対して仕掛けることもあるという。  大きく構えてボクシングステップを使わずにノシノシと詰めていく。今回は、いかに「ボクシング」で戦わないか、もひとつのキーになる。 「総合の5分3Rより、ボクシングの3分3Rの方が僕的には疲れる。(パンチだけで戦うため)休憩が出来ないので。ほんとうはもっと短い方がいいんですけど。3分1(R)だったらもっと行けるじゃないですか。だからそのへん(ペース配分は)考えていますけど、12Rじゃなく、3分3Rなので、3Rだからこそできる戦い方がある。たぶんボクシングとは違う競技になる。そこを突いていこうかな」という朝倉は、これまでKO負けしたことが無いというダメージゲージの「貯金」をメイウェザー戦で使う覚悟でいる。 「カウンターとか……メイウェザーのパンチを無視することですね。うまく綺麗に戦おうとしたら相手の土俵になっちゃうんで、最初からフィジカルを使って、結構もらいながらもどんどん詰めて行こうと思っています。綺麗に戦って勝てない相手は初めてですが、今までKO負けしたことないし、打たれ弱くなっているところも無い。このために打たれ強さを取っておいたようなものかなと思っているんで。今回、ちょっと賭けようかなと。ここでどんだけもらってもいいかなと思っています」  もしも朝倉がメイウェザーを詰めることが出来た先に、鉄壁の防御を誇る“ディフェンスマスター”を相手に、朝倉は“触れる”ことが出来るのか。 「メイウェザーは詰めたときに“丸まる”ので、そのときはもう“総合格闘家っぽい技”を出して行こうかなと」  イメージは出来ている。それはこれまでメイウェザーを苦しめたボクサーたちの戦いからもヒントを得たという。  ボクシングスパーリングや出稽古、ボクサーを招聘しての練習は「日本のどのボクサーとやってもメイウェザーと動きが違うので、意味が無いからしていない」という朝倉だが、MMA同様に「動画で研究している。(これまでのメイウェザーの試合で参考になる動きを)見ましたよ。名前は忘れましたけど。僕がやりたい戦い方をしている選手もいましたね。どんどん前に出て、もらいながら前に出て行くやり方です」と、自身の“手札”で出来る戦いで、メイウェザーに一太刀を浴びせるつもりだ。  試合で鼻血を出すことさえ珍しいメイウェザーは、現役時代、数多の強豪ボクサーと拳を交えているが、いくつかのシーンで、被弾も喫している。  それは、タフで前進し続ける、決して綺麗とは言えないタイプとの対戦にある。  マルコス・マイダナ戦でメイウェザーは、前進し続けるマイダナが、ジャブを出したところに下がりながら得意のプルカウンターの右を合わせに行くが、その瞬間、左に頭を下げたマイダナは右のオーバーハンドをヒット。メイウェザーをグラつかせている。このオーバーハンドをメイウェザーはシェーン・モズリー戦でも食らっている。  あるいはホセ・ルイス・カスティージョとの初戦。肩を故障していたメイウェザーは初のライト級(135ポンド)に臨み、同級屈指の強打者でフィジカルを活かし頭から突っ込んでくるブルファイターのカスティージョの押し込みに苦戦を強いられている。  また、マーカス・コーリー、ザブ・ジュダー戦と自身より大きなサウスポーを得意としているわけでもない。とはいえ、右手前のコナー・マクレガーを完封しているメイウェザーに、クリーンヒットを入れるのは至難の業なのは間違いない。 「やってみないと分からないですけど、たしかにメイウェザーはすごい実績を持ってるけど、俺みたいなパンチの打ち方の人ってほんとうに特殊なんで、今回、体重も無差別だし、俺のほうが有利なんじゃないかと思います。歳的にも俺の方が有利。一撃の重さは絶対に俺の方がある。変則的なパンチなんで、それが当たったときに倒せるんじゃないかと思います」 「もらいながらも詰める」ことが、3分12Rではなく、3分3Rなら出来るか、と問われた朝倉は、「うーん、3分1(R)なら出来るんですけどね。あとは気合いじゃないですか、もう根性です」と、自身のMMAの距離とも異なる戦いを「根性」と表した。  戦いを「複数の視点」で見ることを得意とする朝倉は、今回の戦いでも、メイウェザーの動画を、俯瞰から、そして自身の目の前にいるものと想定して見ている。 「(メイウェザーには)癖があるので、そこに合わせる技は2、3個あります。結局、ほんとに(メイウェザーは)目がいいから。それが当たるかどうかは分からないので、あとは空手戦法ですね」  メイウェザーが好まない戦いがある。しかし、それをするためには、メイウェザーに触れる必要がある。朝倉がMMAや空手を活かして戦う、意味はそこにある。  左右の区別が無く、歩くようにどちらでも突いて、さらにボクシングのパンチのセオリーとは異なるフォームでのパンチをいかに繰り出すか。しかし、今回は純ボクシングルールのため、ベルトライン以下のダッキング、蹴り上げるようなステップのスーパーマンパンチなどの「足を上げる」行為が禁じられている。そのときに、朝倉がいかにメイウェザーに近づき、パンチを当てるか。 [nextpage] 京口紘人「メイウェザーはみんなが思っている以上に届く位置の選手じゃない」  ボクシングが本職のプロたちや打撃の専門家は、このエキシビションをどう見るか。  多くのボクサーたちが口を揃えて、朝倉が勝つ(※勝敗はつかない)、すなわちKOやTKOでメイウェザーを倒すことは困難だという。 「塩漬け判定かレフェリーストップ、未来さんが勝つ確率は10%も無いんじゃないですか。1万回くらい試合をして1回勝つくらいかもしれない。でもそれはしょうがない。ボクシングルールでやるという完全なメイウェザー寄りのルールなんだから」というのは、現WBA世界ライトフライ級スーパー王者の京口紘人だ。  YouTubeでの対談で、その京口に朝倉は、「最後はごちゃごちゃにしようかなと」と語る。  京口も「マイダナとか、ああいうパンチは有効だと思うんですよ。(脇を)開きながら打つ方が軌道が分からないんで。セオリーじゃないから、メイウェザーにとっては、そっちの方が厄介だと思います。未来さんが真っ直ぐ打てるのはもちろんいいんで、外から、アッパーと組み合わせたら、メイウェザーにとってどれが来るか分からない状況にさせた方が有効かなと思います。それに、距離感を保つボクサーに対し、歩きながらボクシングされると嫌。クリンチの時間が長くなる」と朝倉にアドバイスする。  スタンスが広めで重心が真ん中に残っているからスウェイやステップバックが速く、ステップインの蹴り足も飛び込める、というオーソドックス構えのメイウェザーに対し、朝倉は、いかにサウスポーとして外足を取るか。 「メイウェザーのパンチでは倒れないと思う」という朝倉の根拠は、「(メイウェザーは)ディフェンスに寄ってて、自分の攻撃をしているときは、相手の攻撃を警戒しているから弱まっている。攻撃に全振りしていない感じがします。(当たっても)全然怖くないですね」というもの。  しかし、京口はメイウェザーのジャブが厄介だと指摘する。 「ジャブがキーになるかな。相手のジャブにどう対応できるか。未来さんは大きく構える。左のカウンターと右フック(が強い)。その間のジャブは結構もらうパンチになる。メイウェザーは近い距離のリスクを負って攻める必要はないから、一番自分が当てられて安全なパンチがジャブ。そのジャブが世界一級品。引退しているといえども。そのジャブ対策が必要になる。それが結構重要かなと思います。リーチもあるし。塩漬けにする展開も考えられる。打ちに行くと外される、ジャブを当てられる。白熱せず一方的になり、未来さんのパンチは空振りが多くなる」  当たりそうなパンチを朝倉から問われ、「アッパーかなと思うんですけど。結構、(メイウェザーが)ディフェンシブになったときに、スウェー、ダッキングとかも使うから、そのときに合わせれたら。ジャブからストレートに。相手が打ってダックしてきたところに上にかち上げるより、前に叩くイメージで。左ストレート、右フックは前から強いけど、アッパーのイメージがあまりない。アッパーが打てたら、(メイウェザーは)ダッキングを警戒するだろうなと。そうすれば(朝倉の)選択肢が増える」と、ミットを持った京口だが、その一方でやはり、教科書通りの綺麗なボクシング勝負は避けるべきだと進言した。 「ボクシングを変にやっちゃうとあんまり良くないかなって。総合の良さを活かしつつやった方がいいと思うんですよね。ボクシングをしよう、しようという先入観が捨てた方がいい。総合のなかにボクシングのエッセンスを入れるという方がいいと思うので。僕だったら、ボクシングしてくれる方がやりやすい。ベタ足で来た方が不気味ですね。総合ファイイターとして挑む方が嫌だと思います。マクレガーも前半は当てていいて良かった。身体も強いし、未来さんなりに出せたら、3Rだけならチャンスは来る」  朝倉も「中間距離、メイウェザーは天才的ですものね。どんどん近づいて行った方がいいですかね。(普通のボクシングステップだと)俺だけ当てられてこっちは当たらない。メイウェザー(が那須川に使った)戦法を使うしかないですね」と覚悟を語る。 「それが本当に実現できたら」という京口に、朝倉は「ガード上げて、もらいながら顎引いていくしかない」と語ると、京口は、「ブロッキングとか僕は重要かなと思います。パーリングとか空振りさせる意識をし過ぎるとやっぱり速いんで、バッと当てられる。ブロッキングで弾きながらやれる方が良いかもしれないです。ブロッキングしながら、左の相打ちで打つとか。コツは腕の力でブロッキングするのではなく、肩甲骨から腕にかけて絞ってひとつにするメージ。腕だけでブロックすると疲れるし、持っていかれる。アゴ引いておでこで相手を見るイメージ」と、アルマジロのようにガードを固めてブロッキングからの近距離での戦いに持ち込む術を語った。  しかし、メイウェザーの死角は少ない。  京口は、「クリンチワークも上手いと思うんですよ。腕をからめてきたり、ゼロ距離にして離れて打つとか上手いんで、そこに未来さんは総合の良さを活かしつつパンチに繋げられるか。メイウェザーが負けるイメージが湧かない。“朝倉未来が身体がデカくて、パンチがあるから当たれば”といわれるけど、その未来さんのサイズの世界トップとやってきて勝ち続けてきたのがメイウェザー。みんなが思っている以上に届く位置の選手じゃない」と京口は、朝倉の目前で歯に衣を着せず語る。 [nextpage] 圧倒的な不利予想も「終わったら『朝倉未来ってすごいな』ってなる」(朝倉)  そのほかのボクサーやファイターたちもメイウェザーが圧倒的に有利だと語る。 ◆内山高志(元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者)「押し相撲だったら負けない、グイグイ押して行ったら……」 「(朝倉のミットを持って)右はやっぱありますね。だいぶ力んでいるところがありますが、左ストレートも重心の乗せ方が出来ています。伸びきったりしていない。脱力するとスピードも若干速くなってミットが合わせ辛くなっている。パンチは見えたら効かない。もっとスピード無いかなと思ったら結構、速い。ミット持って、スピードもあるし威力もあるし、スピードってなかなか練習してつくものじゃない。もともと持っているもの。  メイウェザー戦は、普通に考えたら100%無理じゃないですか。世界の何階級も獲った選手がみんな負けてる。普通に考えたら無理だと思うんですけど、ただ、メイウェザーの年齢が45歳ということと、日本人のボクサーじゃない相手が挑戦してくるとなったらなおさら余裕というかナメてそこまで必死にやろうという感じじゃない。そういったところで実は(朝倉に)勝機があるんじゃないかと。リズムがボクサーのリズムじゃないんで、総合のちょっと変わったパンチの打ち方をするんで、それが当たるんじゃないかと思う。俺だったら(メイウェザーに)逆に当たんないと思う。ボクシングの動きなんで。でも未来選手の場合は結構動きが読みづらいから。マクレガーもそう、結構当たっていた。そう考えるとちょっと面白いかなって思う。メイウェザーも体幹凄いと思うけど、身体の強さは未来選手にもある。押し相撲だったら負けそうにない。グイグイ押して行ったらスタミナも減っていいかなと思う」(※メイウェザー公開練習後のコメントはこちら) ◆那須川天心(RISE 二階級制覇王者)「もし当たっても、メイウェザーは同じパンチをもらわない」 「(自身との試合で)最初、メイウェザー選手は避けて避けてくるかと思っていたけど、左ストレートが1発入ったら、凄くプレッシャーが強くなって、打とうとするだけで全部フェイントをしてきた。動こうとするところを潰そうとしたり、プレッシャーのかけ方が、普段は下がるのに、前に前に来たので、体格差を生かしてきたのかと思います。正面のストレートはブロックしたけど、左フックを打たれて、スリップ気味でも、立とうとして立てなかった。(頭が)ぐわんぐわんしてしまって。  体格的には未来さんが有利だと思うんですけど、正直、勝てないと思います。やっぱりボクシングのテクニックだったり戦い方はメイウェザー選手の方が全然上なので。未来さんがやるなら、ほんとうに奇策というか、そういいうもので打って当てていかないと。でもそれが当たったとしても、メイウェザー選手はもう同じパンチを次はもらわないので、1発で仕留められるものを未来さんが見つけて当てられればチャンスは無くはないかなと思いますけど……確率的には低いとは思います。未来さんも打たれ強いので、もらいながら打つとか。でも、メイウェザー選手はダウンを取りに来ないと思います。普通に3分3Rを遊んでやるって感覚でいるんじゃないかなと思います」 ◆亀田和毅(元WBC世界スーパーバンタム級暫定王者)「1回でも負けてれば弱点があるけど、負けてないから」 「メイウェザーは金もらえるところならどこでも行く。おっさんやで45歳。でもミット打ちとか結構いい動きしてるからな、(朝倉の)パンチが当たることもないと思うわ。3カ月でボクシングのことやっても無理や。パンチが重いいうても知れてる。ボクシングの打ち方も出来ひんのに、そんなパンチ、まず貰わへんから。貰ったところで今までいろんなトップのボクサーとやってきて効かないようにしっかり流すから。どんだけデカいヤツが来ても。圧倒な、99%勝つ。負けるところが想像できない。(これまで)1回でも負けてるところがあれば、弱点みたいなところがあるけど、負けてないから」 ◆魔裟斗(K-1 WORLD MAX 2003・2008世界王者)「専門職の人と戦うのは無謀、見られた後が怖い」 「万が一、ダウンなんか取っちゃったらすごいことだよね。本人が言うように世界から『朝倉未来とやらせろ』という話が出る可能性は高いよね。でも相当、難しいと思う。メイウェザーが倒れたシーンも、顔にパンチをもらうシーンもほとんど見たことない。マニー・パッキャオのスピードで、(サウル)アルバレスだって当たらないんだからね。振り回して行く? 振り回して身体をぶつけて、ほんとうに至近距離にしないと、振り回してもたぶん足でさばかれる。1R、(動きを)見られた後が怖いな。ボクシングの手だけのほんとうの専門職の人に、その専門職で戦いに行くのはちょっと無謀だなと思う。MMAだから強いんだから。この試合が楽しみなのに変わりはないけど」 ◆堀口恭司(RIZINバンタム級王者、元Bellator同級王者)「メイウェザーの速さについていけないんじゃないか」 「未来くんが様子を見ながら打っていくと思うけど、メイウェザーの速さについていけないんじゃないかなとは思う。メイウェザーは防御が上手いので、パンチはガードの上からは当たると思うけどクリーンヒットはないと思う」  これらの「圧倒的不利」の勝敗予想を朝倉は「嬉しい」という。 「すげー嬉しいですね。楽な気持ちにさせてくれてありがとうと。“絶対勝てる”という方がめっちゃプレッシャーなんで。(負け予想が多いのは)それはそうだと思います。50戦無敗でダウンも取られたことが無いやつが、MMA選手に負けたら大事件ですからね。でもそれをやる可能性があります、俺は」  そして、試合後に、その評価は一変するだろうとも語る。 (メイウェザーを)タダでは帰さないし、好き勝手にはさせないよって感じです。俺は本当に勝つ気でいるけど、世間の99%くらいは勝てないと思ってると思うので、今の時代はやる前から不可能って決める人が多いけど、やってみたら何か変わることがあるかもしれない。そういう勇気を見てもらいたいですね。自己満(足)じゃないですか。自分が勝てると思っているから、それを証明するだけって感じです。あとはシンプルに戦いたい欲もあるんで、男として、格闘家として、同じ人間だけど“世界最高峰のボクサー”ってどのくらいなんだろうって。そこの興味もあります。PPV?(これまでの記録を)超えるんじゃないですか、普通に、と思いますけどね。(試合後は)“朝倉未来ってすごいな”ってなると思いますよ。終わってみたら」。 [nextpage] もっとも大切なことは、相手に当てて、自分はもらわないこと。だから俺のキャリアは最高なんだ(メイウェザー)  対するメイウェザーは、ABEMAでのインタビューで、終始、この試合をコントロールしているのは自分だ、と語る、 「俺は世界最高レベルで試合し、記者会見も長いこと何度もやってるから気持ちに余裕がある。若いヤツらはそういった経験が浅いから、よく固まったりクレージーな発言が多く出て来る。これもファイトワールドの一部だよ」と、会見を振り返ったメイウェザー。  朝倉未来と対峙した感想を、「俺は相手が自分よりデカかったり、強いと言われてたり、訓練を積んできていたりとか全く気にしない。いつも最終的に大事なのはメンタルだ。それがしっかりしていれば身体を仕上げるのは問題ない。俺は常にメンタルの準備はできている。だから相手が強いと言われていたり、デカかったりという前評判は本当に気にならないんだ。逆に相手にとって分かっているのは、メイウェザーと対戦することは最強と対戦するってことだ」と、気にすべきは自分ではなく相手の方だと語る。  朝倉を研究しているかの質問にも、「全く見ていない。俺のチームのみんなと話したのは『彼はサウスポーだ』ということだ。でも、それは気にならない。前回日本に来た時もサウスポー(那須川天心)と戦って、結果はご存知の通りだからね。俺のキャリアの何が凄まじいかと言えば、知っての通り、世界中の猛者と試合してきたこと。だが朝倉未来は主に日本で戦っている。俺とは経験の差がかなりある」と、研究するまでもないという。  KOする自信について問われても、「今回のPPVマッチに関しては、まず朝倉未来っていうのはYouTubeで人気なんだろ? 彼がどれほどのものを見せてくれるか言えないけど、俺の方は過去に日本での試合経験があるからだいたい分かるだろう。俺はみんなに素晴らしいショーを見せるために行く。これが『単なるリアル・ファイトだ』って言うなら、すぐに終わらせるだけでいいんだろうけど、前回、日本に行った時に早く試合が終わり過ぎて、ファンは十分に楽しめなかったと思う。だから、今回はできることなら長い時間やりたいね。でも前回は短かったけど、エキサイティングだったことには変わりないかな。俺自身はファンにもっと楽しんでもらいたいから、もっと長い時間やりたいのさ」と、自身の土俵でプロボクシング経験の無い相手と戦う以上、ファンに楽しんでもらうために、「長い時間」をかけて戦いたいとした。  敗北への恐怖心を問われても、「俺は生まれた時から勝者だったし、死ぬときも勝者でいるつもりだ。だから『負ける』ってことを特段意識したりはしない。俺のキャンプでは『負ける』とかの話はしない。話すことは『勝つ』こととポジティブでいる事。それと極限まで仕上げる話をする。俺たちのチームは最高だし、ゲームプランも良いものがある。良い試合をして勝利して、みんなに楽しんでもらうことが何より大事」と、「研究しない」の言葉とは裏腹に、チームとして取り組み、「極限まで仕上げる」とも語った。  その言葉を裏付けるのは、朝倉未来の実弟・朝倉海だ。  海は、自身のYoutubeチャンネルで、5月のラスベガス渡航時に、ドン・ムーアとのエキシビションマッチ前のメイウェザーが、世界王者クラスを招聘してのスパーリングを目撃したときのことを語っている。  メディア機器をすべて止めらた後に行われた、6Rのスパーリングでメイウェザーは1発も被弾しなかったといい「ボコボコにしてましたね。息も上がらずに1発も被弾せずにダウン寸前まで追い込んで挑発してた。近くで見てても何で当たんないんだろう? 何で反応出来てるんだろう? と思うぐらいの凄さだった」と語り、続けて、休憩も無くミット打ちを20分、サンドバッグ打ちを20分行い、メイウェザーが練習を終えたことを語っている。 「異次元だった。スタミナはどうなってるんだろうね。45歳でしょ。年齢とともにスタミナが切れたり、打たれ弱くなったりするって聞いたことあるけど、この人には当てはまらないと思った」と、2017年に3度目となる引退を表明してから5年経っても、衰えを見せないメイウェザーに舌を巻いている。  プロ戦績50戦50勝。史上初めて無敗のまま5階級制覇を達成するなど、「証明」すべきことは何もないパウンド・フォー・パウンド最強のボクサーとして君臨した。  45歳になり、今なお戦い続ける理由を問われ、「今回は単なるファイトじゃない。俺に課されているのはスモールエンターテインメントショー=エキシビションだ。俺の哲学はいつまでも挑戦し続けること。みんなを楽しませて“少し”お金も稼いで、世界中のファンに栄光時代のメイウェザーを魅せられたらって思う。これが大きなダメージを食らうような試合だったら、エキシビションはやらないだろうけど、俺がエキシビションで向き合う奴らはマイナーリーグで、俺は言うなればメジャーリーガー。まあ、以前はメジャーリーグだった(笑)。さっき言ったように、俺の哲学は挑戦し続けることなんだ」と、レジェンドとして、決して少なくないマネーをマイナーリーガー相手に稼ぐことで、挑戦を続けたい、とした。 「衰え」は「全く感じない」という。  現役時代から「ボクシングは消耗のスポーツ」と言い続けてきたメイウェザーは、「俺はまだパフォーマンス出来るし、“プリティボーイ”“マネー”時代の俺ほどじゃないが、今でもダメージを食らわずに相手に何発も入れる自信はある。もっとも大切なことは、相手に当てて、自分はもらわないこと。だから俺のキャリアは最高なんだ」と、その卓越したディフェンステクニックが、ファイティングキャリアを長持ちさせていると語る。  現役当時の試合とエキシビションマッチの違いを「全然、違う」と言いながらも、「最終的には今回もファイト」で、それは自身の庭だという。 「サウル・カネロ・アルバレスやマニー・パッキャオ、ミゲール・コット、オスカー・デ・ラ・ホーヤ……リストは続くけど、そのレベルと戦うにはほんとうに限界まで鍛えなきゃならない。自分をプッシュして、ほんとうに集中しないといけないし、最低10週間の強化合宿をしなくてはならない。3分3R=9分の試合と、最高峰のレベルの試合は、厳しさが違う。PPVを売るために、街をまたぎ、州をまたぎ、国をまたいでPRしなければならない。今回はもう以前に行ったことがある国に行けばいいからね。まあ、それでも最終的にはファイトではある。試合っていう意味なら、そこは俺の得意分野だ」  会見で一方的なメイウェザーの劇場に付き合わされた朝倉は、「話が長い、もっとまとめられないか」と苦言を呈したが、メイウェザーは、「彼がどう思おうが自由だ。1987年からずっと俺の対戦相手から『お前は話が長い』と言われてきた(笑)。でも口だけじゃないことを毎回、照明してきた。俺のいまの地位は、単に口が達者なだけで行き着けるポジションじゃない。だからアクションで証明し続けている。歴代PPVのトップ10のうち、6つは俺、メイウェザー関連のタイトルだ。だから、俺はこういうレベルの試合でどうすべきか理解している。別に彼がどう言おうと好きにすればいい。喋っても喋らなくても、結果、“すべては俺の動き次第”なんだ」と、メイウェザーありきのこのゲームの主導権を握っているのは、自分だと語り、インタビューを終えている。 [nextpage] メイウェザー戦後に向かうことは、決めている  9月25日にメイウェザーとリング上で対峙する朝倉は、あらためて、メイウェザーが「マニーファイト」として再び選んだ日本の地での対戦相手となったことについて、「即答ですね。そんな話が来て、格闘家としてはやっぱ、受けた方がいいなっていうのはあって。どっちでもいいなぐらいのレベルでしたけど、“でもやるなら俺しかいないでしょ”って」と、メイウェザーとPPVを売るに値するファイトを見せられるのは自分だと語った。 「チャンスですよね。だから、倒したら面白いなって感じです。ほんとにだから……チャンスだなって。あると思うんですよね、一発が。自分の一発で倒せる自信があるんで、それを実現させたいですね。なんか勝負事の時、“100回に1回”を持って来る自信があるんで、それを当日は入れます」  そして、その取り組みは“本業”に生きるという。 「やるんだったら勝ちにいきたいし、ボクシングの練習していて、結果的に本業のMMAとしても成長してるから、やってよかったなとすでに思っています」  公開練習では、ハイキックを放ち「気のせいです」と笑顔を見せた。 「総合格闘家としてやって良かった。MMAとして足りない部分もすごく分かって、ボクシングがたぶん苦手だった。KOは左の蹴りがほとんど。ステップの速さとか収穫がすごくあります。いままで打ったら(身体が)流れてたんで、足がもつれたり」と、軸がブレず、より強い打撃が打てるようになっていることを語る。  世界が注目するメイウェザーとのボクシングマッチをオファーされる人間は限られる。そこに躊躇なく「YES」と答えることが出来るファイターも同様だ。メイウェザー戦で、実は「苦手だった」ボクシングに取り組んだ。限られた時間のなかで、MMAとして何をどう取捨選択するかは、本人次第だ。朝倉未来は言う。 「年末は総合格闘家として出たいというのはあるけど、9月のぎりぎりまでボクシングさせられていて、組み技の練習やっちゃうと筋肉痛でパンチのミットを打てなくなる。だから組み技の練習とか出来ていないので、その間に結構、ナマってんじゃないかなって。(メイウェザー戦)終わってタダでは終われないと思うので、怪我をして10月の中旬とかから練習を始めたとして、2カ月で綜合格闘技にちゃんと仕上げられるかなって」  メイウェザー戦後に向かうことは決めている。 「とりあえずクレベル(コイケ)にやり返さないと……ダメですよね。そこは一番に思ってます」「ベルトは興味ない。クレベルとやれるとしても、タイトルマッチでなくてもいい。“無冠の最強”のほうが憧れが強い」  このエキシビションマッチの最後の“勝者”は誰になるか。9月25日(日)さいたまスーパーアリーナでゴングは鳴らされる。
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