組んだら死ぬ気でやる。離れたら終わるつもりで
──河名選手のグレコローマンレスリングが、ケージレスリングも含めて、MMAのなかで活きて来たというのはどんな部分でしょうか。
「壁に押さえつけてから、いわゆるケージレスリングの状態でも、差して自分の得意な状況である後ろに回ったり、もしくは差して胴でクラッチを組んで、逆にケージから引きはがしてしまえば、それはレスリングと一緒だなと思うので、その状態を作れるように変化はできているかなと思います。あと、僕は専修大学にいた頃から、グレコもフリースタイルも練習してきたので、あまり足を触るということ自体にも抵抗は無くて、むしろグレコ+ケージに押さえつけての足も触るバリエーションが増えたというのがあります」
──前戦は4月の『POUND STORM』で、山本健斗デリカット選手に判定勝ちでした。クラッチして崩して、クラッチし続けてコントロールする姿に驚きました。あれはレスリング時代から腕がパンパンにならないように緩急をつけているから持つのでしょうか。
「レスリングの場合は、一度攻防が止まるとブレークがかかってもとのスタンドの状態に戻るので、ちょっと回復出来る時間があるんですけど……MMAはそこが無いので、5分ずっとやり続けなければいけない。その点では、ただクラッチを組むだけじゃなくて、クラッチの組み方にもバリエーションをつけたりします。体力的、心理的な面で言うと……組んだら死ぬ気でやる(苦笑)。離れたら終わるから離れたくない、という形がクラッチの原動力です」
──それをやり続けられる。さきほど2016年の全日本学生選手権の小林大樹戦を拝見していたら、この展開でどう勝つのかという序盤の苦しい展開がありながら、終盤でがぶり倒して上になった。スタミナ面もレスリング時代から自信があったのでしょうか。
「そうですね……レスリングは3分2R(ピリオド・インターバル30秒)ですけど、それ全部使って、とにかく1回でもポイントが取れればいいという気持ちでやってきたのが、MMAでも生きていると思います。とにかく、自分のやりたいことを押し付けて、押し付けて、相手の気持ちが一度でも折れる音が聞こえたら、勝ちだなっていう気持ちでやってます」
──おおっ、その相手の「気持ちが折れる音」というのは、MMAでもあまり変わらないですか。
「そこは、やっぱり変わらないというか、そこに対しての嗅覚が生きているかなと思います」
──“ああ、いま背中着きそうになったな”とか身体の力や息遣いで“折れたな”と分かると。
「はい。序盤は絶対に譲ってくれなかったポジションを一瞬でも譲ってくれたら、その姿を見れたらチャンスだなと」
──それは、河名選手の試合を見る上で、とても見どころになりますね。ダメージが分かりやすい打撃のみならず、組みのなかでもそういった攻防があると。あの山本戦を経ての進化はどんなところに感じていますか。
「前回までは自分の型というのが確立されていなくて、細い木の幹に肉付けをしていくというか、自分の体幹、幹の部分を太くしていくことに注力していました。あの試合が終わってから、ひとつ自分の型というのが見えてきたので、幹も少し位ずつ太くしながら枝を少し伸ばしている感じで、自分のレスリングコントロール、プラスそれ以外の部分に目を向けてトレーニングできたかなと思います」