グラップリング
インタビュー

【グラップリング】高橋サブミッションが見た「世界のグラップリングが強い3つの理由」とは?

2022/07/27 22:07

③初心者から上級者まで誰もが参加できる大会が頻繁に開催されている

 その後、高橋は撮影取材を兼ねて、ルイジアナ州ニューオリンズ開催のNAGA(北米グラップリング協会)に出場。このNAGAでは、道衣ありも、ノーギも、米国のあらゆる州で毎週のように大会が開催されている。

 NAGAでは、フライ級とフェザー級にエントリー。さっそく、ニーシールドからの足関節も極め、二階級で優勝を果たした。

「6月に控えていたPolarisの前哨戦にしたいという思いもありエントリーしました。昨年、MMAの試合(山内渉に判定0-2負け)に出た際に、試合中のアクシデントで肩を脱臼してかなりブランクが空いたこともあり、その間、国外で海外選手と対戦が無かった事から、大一番の前に一つ試合を挟みたかったというのが個人的な理由です。あとはロケとしても撮れ高になるとも思ったので、出国当初から出られるなら出たいと考えていました」

 自ら出場した大会であらためて米国グラップリングの裾野の広さを感じた高橋。

「ビキナークラスもキッズクラスもあって、いろんな層の目標となれる大会。それもグラップリングが根付く一因だと思います。実力を発揮する場がたくさんあって、世界的な有名な舞台にも押し上げやすい。先進国ならではの階段が出来ている。NAGAのようなものがあるといい」


【写真】ONEで青木に判定勝ちしたケイド・ルオトロと、ゲイリー・トノンに一本勝ちしたタイ・ルオトロと。

「グラップリング先進国ならではの階段」について、本誌の取材に高橋は「普及」と「ステップアップ」の両面を指摘する。

「NAGAはグラップリング人口の増加に一役買っていると思いました。僕はグラップリングのコンテンツとしての本質は『do スポーツ』だと考えていて、柔術と合わせて人口を増加させていく事が発展の道筋だと思ってます。オープン参加で様々なカテゴリのあるNAGAのような大会の存在は、競技が盛り上がるには非常に重要です。

 ただ、選手目線で現地を羨ましいと思ったのは全く別の切り口で。柔術やグラップリングの世界では獲得タイトル以上に“誰とどんな試合をしたか、誰に勝ったか”を評価される事が多くあります。そんな中で、現地には世界的有名選手がすぐ近くにいて大きなオープン大会に出れば彼らと当たる事が出来る。『世界のトップクラス』と評価される為に、獲るべき首とあいまみえるには、僕ら日本の選手はすべからく国を出なければならないことを考えると、これはかなり羨ましいです。大会の規模や数、制度以上に個人的に大きな違いは『大会に出てくる人』の知名度とクオリティです」

 米国遠征から帰国後、HEARTSでの自身のクラスに還元している。

「国際的な競争力で勝ち上がるには、柔術の地力も必要で、Polarisでも団体戦で米国対ブラジルの対抗戦でブラジルが勝ったのは、寝技の地力が上だと感じました。ADCCの地区ではアジア・オセアニアが弱い。米国西海岸に、ブラジル、そして欧州には世界のトップに追随する選手がいる。練習環境に何を求めるか。自分のように身体が小さいと、日本にいた方が練習相手は多かったりもします。

 米国がすごく進んでいてまったく別世界のような感覚があったけど、実際行ってみると必ずしもそうではない。国の規模的な違いはあれど、発展すべきプロセスで発展してきただけ。必要なのは“技術を枠を超えて普及させていく、そのプラットフォームを整えなければいけない”ということ。目標にしていいレベルだと思いました。日本も着実に前には進んでいるし、足りていないながらも、間違った方向に進んではいない。このまま積み重ねていけば必ず正解に、最先端にたどりつくと思いました」


【写真】RIZINで渡部修斗に判定勝ちした須藤拓真とスパーリングする高橋。

 柔術、ノーギグラップリング、コンバット柔術、MMAに繋がるPROGRESS、トップ選手を次々と獲得しているONEのケージグラップリング……世界で様々な形でグラップリングは広まっている。もともと組み技を好む日本のグラップリングに置いても、その競技規模、市場、技術が高まるポテンシャルは秘めている。高橋はいま、それぞれのステークホルダーをつなぐプラットフォーム作りを考えているという。果たして日本のグラップリングも世界へと繋がるか。

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