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インタビュー

【RIZIN】“苦い沖縄の夜”を榊原信行CEOが総括「平本vs.萩原かどうかは別として、早いタイミングで次戦を組みたい」「皇治の『芦澤選手と年末に』は、K-1とRIZINで“握れている”わけではない」「25%くらいは払い戻し希望者が出た」

2022/07/04 13:07
 2022年7月2日、沖縄アリーナにて『RIZIN.36』が開催された。  直前にメイン出場予定だった朝倉海の欠場、それに伴うチケットの払い戻しやPPV無料配信への変更、さらに台風の接近と、アクシデントが重なるなか、7,264人の観衆が同所に集まった。  試合後、榊原信行CEOは、2度目の沖縄大会を『苦い夜』と評したが、今後について期待する内容も語っている。嵐の夜に沖縄で榊原CEOが語った一問一答全文を紹介したい。 7月31日『RIZIN.37』さいたまに、沖縄の経験を活かしたい 「総括としては『人生甘くないな』っていう、『苦い夜』というか『試練の夜』──そんな感じですね。プロモーター・主催者である私が感じた、自分の立場での感想ではあるんですけど。  2週間前の6月19日の『THE MATCH』の大会の中では起きなかったようなこと、でも常に人生で不測の事態は起きるもので、これまでもそういうものへの経験則はそれなりに積ませてもらっていると思うんですけど、2つも3つも同時に重なってくるということは……なかなか無ったなあという感じです。  色々短い時間での判断を迫られることが多かったです。特にこの数日続きましたが、このあと配信の検証とかもしっかりしなくちゃいけないんです。最後の試合の映像もカクカクしていないか、うまく配信が見られていない方がいるんじゃないかという、RIZINのストリーミングパスの検証もします。  朝倉海が大会2日前とかに出場できなくなる、台風も来て、天候も刻々と変わる状況もありましたけど、沖縄での2回目の大会が、できたことには安堵しています。  試合全体は、『今日はこの選手が大会を救ったな』というくらいスカッとした試合というのは──まあスカッとした試合はいくつかありましたけど、後半にあった5試合のなかで、本当にファンの思いを鷲掴みにするようなドラマチックな結末になる試合は無かったかなあというふうに思っています。  1試合1試合は、次に繋がる内容の濃いものではあったと思いますが、平本蓮と“怪物くん”(鈴木博昭)との試合も、平本がMMA3戦目、怪物くんは4戦目。このキャリアの浅い選手にメインを託すこと自体が酷なことではあると思うので、本来はこの上に、予定通り朝倉海の試合が乗っかっていれば、また興行のイメージとか、この環境の中で駆けつけてくれたファンの人たちにもう少し充実感というか、満足感を持って帰ってもらえたかなと思いますが、これは今後のマッチメイクで、どうバランスを取っていくか。  選手の怪我というものに対しての主催者側の関わり方、健康面の管理ですね、そういうものも含めて、今回、経験として積ませていただいた試練を、必ず次のRIZINの運営に活かしていけたらと思います。  ですので、本大会『MVP』という選手は、残念ながら、この人という風に挙げることは難しいなと思っています。ただ、この場を借りて言うとするならば、昇侍とヤン・ジヨンは、本当に緊急参戦の中でこの試合を務めてくれたことに敬意を表しますし、感謝を伝えたいと思っています。  フライ級の選手たちも、気を吐くような今後に期待するような試合がいくつか見受けられたことも、次のプラス材料になるのかなと思っています。いずれにしても今月末にまた次の大会、7月31日『RIZIN.37』(さいたまスーパーアリーナ)に向けてこの沖縄大会で得た経験を、さらに上積みできるように務めたいとそう思っています」 ──今回、メインイベントが無くなったなかで、「チケットを買ったけど来なかった人」はどれくらいいたのでしょうか。 「僕らもそこが気になっていて、デジタルチケットなので、数字はある程度把握できるのですが、それでも会場を見るとまあまあ入ってるなと見えたと思います。  25%くらいは払い戻し希望者が出ましたね。ぴあ、ローソン、イープラス、それぞれ数字は違うんですけど、押し並べて、払い戻しに向かった人は20%は超えています。だから、試合当日、会場入り、沖縄入りすることを決めていた人たちは、海も出ないし台風でこのあと天気もちょっと悪そうなんで、沖縄行くのを止めて、PPV無料だから自宅で見ようと思った人たちが、2割強くらいいらっしゃる状況です。それでもたくさん来てくれたとは思いますけどね。配信の方はまだ状況を見ていないですが、映像の状況を見ると、結構アクセスがあったんじゃないかと思います」 [nextpage] 平本が、いまタイで武者修行をしている萩原京平と向き合ってどうなのか? ──「苦い夜」というのはセミ・メインの内容含めてということでしょうか。 「そうですね。まああの試合がもうすこし弾けるというか、スイングする試合になってくれれば……常にプロモーターもファンも求めるものが残酷なので、メインの試合で求められるものを、(試合経験の少ない)あの2人にメインを託して求めることが、本当は酷なんだと思います。急遽メインになったんだから、メインとしてこの大会を締めるようなスペクタクルに富むスリリングな試合内容含めて作品を作り出せよっていうことが、このキャリアの2人には──でもまあ、十分僕らが求めるものには近い答えを出してくれたというか、見せてくれたことには平本蓮選手にも怪物くんにも感謝はしたいと思います」 ──メインの平本選手が勝ちに徹していた上での初勝利を掴みましたが、どう見ましたか。 「解説陣の言っていることが、多分見ている人たちも自分も思ったことですけど、MMAという“何でもあり”、あるいは総合格闘技っていう部分でいうと、打撃戦に徹した戦いになってしまった両選手が、グラウンドの展開とかグラウンドの展開を匂わせる中での打撃戦とか──あれだったらボクシンググローブつけたキックボクシングで戦った方がもう少しすっきりしたのかなっていう──、これは結果論なんで何ともアレなんですけど、もう少し、そういう総合格闘技の幅広さというかバラエティに富んだ展開が見られたらよかったかなと思いますけど、平本選手もあえてそういう戦いをしたのかもしれない。  怪物くんがもう少し1Rでグラウンドに行く展開をしてそういう局面を、3Rのなかでアクションがあっても良かったのかなと思いますけど、本当に見ている側の勝手な思いではあるんですけどね」 ──鈴木選手に勝利した平本選手が先ほど、もっと試合をしていって、萩原京平選手ともやりたいと。今後の平本選手の路線をどのように考えていますか。 「そうですね……あんまり口滑らないように言わないと(笑)。どんどん、試合を組んだらいいと思います。やってくれるんだったら。やるべきだと思うし、経験積む必要があると思います。今日は、対戦相手が(ストライカーの)鈴木選手だったということも含めて、総合格闘家としての進化が、そんなに今日の試合では顕在化しなかったので。  打撃が強いのは最初から分かっているじゃないですか、それを活かすための総合のテクニックを、本当にテイクダウンを取るとかグラウンドに行くような展開を、平本蓮が見せていれば僕らも“おっ”となったかもしれないかど、相手がそういう展開に来ないことに合わせたのかもしれないし、あえて封印したのかもしれないけども、そこのところが全く未知数で見えないんで。  本当にじゃあ、いまタイで武者修行をしている萩原京平選手と向き合ってどうなのか、鈴木千裕も沖縄に来て、平良(達郎)選手が所属する道場(Theパラエストラ沖縄)でグラウンドしかやっていないくらいにして、寝技の練習を猛特訓している。そういう選手との距離が縮まったのか、縮まっていないのかが、ちょっと今日の試合だけでは見えなかった。ただ、試合はコンスタントにやって経験を積むことはいいことだと思うので、萩原選手と組むかどうかは別として、早いタイミングでマッチアップはしたいですね」 [nextpage] 皇治は自分でどんどんアングルを作ろうとする人。勝手に12月とか、都合が良すぎる ──計量日に『THE MATCH』後の、K-1勢の参戦について触れた記事が出ましたが、今日、皇治選手が、K-1の芦澤竜誠戦、RISEのYA-MANとの対戦をアピールしていましたが、可能性は? 「これだけは言っておかなければいけないのですが、つい口が滑って言ってしまうのはちょっと……これも僕の半分妄想ということで、K-1さんとの件で、昨日聞かれたんだけど、K-1さんとは、これまで数年コミュニケーションも取れない状況だったのが、取れるようになって、武尊選手と那須川天心選手の大会を共に行うことができたので、その先に当然選手の交流とかいろんなことができたらいいなとは思っています。  そういうことに向かっていけるように、僕らも話し合いを進めたいと思っていますけど、現時点で何か具体的に決まっている話でもないですし、当然K-1さんにも通常のレギュレーションがある中で、何ができるかっていう問題もあるので、そんなに簡単な問題ではなくて、僕の希望的観測で、ちょっと言葉を上乗せしてしまった部分があるので、この場で訂正をして、『RIZIN側としては、今後そういうことに向けて話し合いをしていきたい。現状、何も決まっていないし何か内々で約束がある話ではない』と言っておきます。  だから、今日皇治選手が『芦澤選手と年末に』とか言うと、今日の話を受けて、それはもう、K-1とRIZINで“握れている”(内々に話が進んでいる)んじゃないかと思われてしまうとこれは大変なことになるので、本当にK-1さん、すみませんでした。今後、口を滑らせることはないように気をつけますので。皇治選手も勝手に言っているだけで妄想の域を完全に脱しておりませんので(苦笑)。  僕もあの場で初めて聞いた話でちょっと戸惑っているくらいです。(皇治は)自分でどんどんアングルを作ろうとする人なので、勝手に12月とか、都合が良すぎるなと思っています」 [nextpage] 本野は近い将来、RIZINにマッチメイクしていけたら ──今夏、開催予定の「女子スーパーアトム級ワールドGP」ですが、沖縄大会で当確者的な選手は出たでしょうか。もうひとつ、勝った大島沙緒里選手から、本野美樹選手の名前が出ましたが、どのように考えていますか。 「スーパーアトム級の候補になる試合が2試合、今日組まれていたと思いますが、それらの選手も含めて最終ジャッジをして、今週中には発表したいと思っています。本野選手も前々から僕は注目をしている選手ですので、階級も変えてスーパーアトム級にしたということで、非常に可能性も感じるし、DEEPでもスーパーアトム級の試合を見ています。佐伯さんともしっかり話をして、ただ今回のワールドGPに出てくるということにはならないけど、大島選手の推薦もありますし、佐伯さんともしっかり話して、近い将来、RIZINにマッチメイクしていけたらと思います」 ──沖縄アリーナを「第二の聖地」としてやっていきたい思いもありますか。 「LED含め、素晴らしい設備で見やすいし、これだけのアリーナは日本広しといえど、沖縄アリーナにしかない。さいたまスーパーアリーナにもそんなものはないですから。今後も沖縄の地で、年に何回もというのは難しいと思いますけど、今回7カ月の期間を空けて2回目をやりましたけど、できれば来年の同じ月くらい、6月くらいとか夏前くらいに、1年後にまた戻って来れるような、2023年のスケジュールに入れて行けたらいいなと思っています」 ──そんななか地元選手がなかなか結果が伴わない大会でもありました。 「ほぼ全敗でしたね、沖縄勢。でも、試合の価値は勝ち負けを超えたところにあると僕らは思っているし、勝ちっぷり負けっぷりもある。今後、沖縄で大会を続けていく中で、地元のヒーローというか、地元の声援を大きく受けられる選手というのは、また今回出た選手もそうですけど、それ以外の選手の中からもピックアップしてこれたらいいかなと思っています」
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