MMA
インタビュー

【UFC】七人のサムライ(2)SASUKE「ファイターとして“戦って評価されてお金をもらうこと”が一番」

2022/06/03 17:06

松嶋選手とは「決勝で戦いましょう」と言っていたけど

――さて、今回の1回戦の対戦相手は中国のイー・ジャーになりました。中国国内での試合が多いですが、18勝3敗で打撃でも関節技でも15のフィニッシュを持っている。Kunlun Fight時代に現ONEのマーク・アベラルドに判定負けしています。実際に映像をご覧になってどういう印象を持っていますか。

「きっと何でも出来るんだろうなというイメージで、特に“組みたい”選手かなと。映像を探して見たら、けっこう“ガーッ”と組んできてバックを取ってという感じで、身体は強そうだなと思いました。打撃を見ると顔が逃げたりするときもあって、あとはそんなにスタミナに自信ないのかなって。だからああやって序盤から早く来るのかなとも思いました。自分としては、押さえるところを押さえて、潰すところを潰せば、十分勝つ可能性はあるかなと思います」

――そこを勝ち上がっていけば、準決勝で松嶋こよみ選手との対戦の可能性も出てきます。8選手がいるなかで、準決勝で日本人対決もありうることについては、どう感じましたか。

「そうですね……実は、このあいだ修斗のときに松嶋選手と挨拶をさせてもらったんです。僕がケージに上がる直前に松嶋選手とばったり合って。もともと面識のある人だったので、『お互い頑張りましょう。2人で決勝で戦いましょう』という話をしたんです。そうしたら、その次の日に同じ山というか、同じサイドに入ってるのを知って“ああ、そうか”って。僕個人の思いでは、やっぱり僕ら2人が決勝で戦うことによって、UFCという市場を日本に少しでも広められると思っていたんです。だから、決勝でやるのが理想だったんですけど、同じ山に入っていて、何となくやるせない気持ちみはなりましたね」

――フェザー級は中国人が3選手、韓国人と日本人がそれぞれ2選手、そしてインドネシア人が1選手のなか、非情な組み合わせと感じました。しかし、UFCとの契約を確実に勝ち取るためには、誰が相手でも「最後の1人」になるしかない。

「そうですね。全員人生を賭けて来ていると思うので、3回戦うので、3人の夢を踏みにじるというか、そういう気持ちでいないと勝てないので、ずっとそういう覚悟は持っています」

――この間、修斗でフェザー級王座を争った工藤諒司選手が、PFLのリーグ戦初戦で昨年ベスト4の強豪ブレンダン・ラウネーンに3R 出血によるテクニカル判定で、タフな試合を戦いました。

「リアルタイムでは見れなかったですけど、後で見ました。刺激を受けましたね。工藤選手の力強さも見れましたし、結果に関しては残念でしたけど、やっぱり“そういうこともあるんだな”というのも感じました。だから、より明確に力を見せつけなきゃいけないのかなというのは、試合を見て感じました。

 自分の試合も、もちろんここで勝てないようでは、絶対に本戦でも勝てないし、かといって、勝ち急ぎすぎて雑になってやられちゃったら、もうそれで全てが終わりになってしまうので、ちゃんとダナ・ホワイト代表にアピールできるような内容を意識ながらも、1試合1試合、集中して最後まで勝ち抜かなきゃいけないと思っています」

朝倉海選手と話して変わったこと、変わらない思い


(C)KAI Channel

――あらためてワンマッチが3カ月間隔で連続する今回のトーナメントをどうとらえていますか。

「怪我なく勝ち上がるのが理想ですよね。一応聞いているプランでは、6月に1回戦、9月が準決勝、12月が決勝と半年間かけてやると聞いているので、そのどれもがキャンセルできず落とせないという意味でハードかもしれないですけど、逆に言えば、勝てば試合が保証されるから、いいペースで試合が出来ると思うんです。そのためにはまずは身体が一番大事ですし、怪我せず勝ち上がっていくこと。早い段階でフィニッシュするのが理想ですよね」

――今回トーナメントが3階級あって、もしかするとUFCと契約する日本人選手が何人か出てくる可能性がある。日本の格闘技ファンにももっとUFCを知ってほしい、浸透してほしいという気持ちもありますか。

「正直、最初は無かったです。僕がUFCに行きたいと思っていて、僕が行ければいいと思っていました。もう他がそのことを知っていようが、いまいが、別に自分が良ければそれでいいと。でも、ラスベガスで朝倉海選手と話をして、ちょっと考え方が変わったというか……彼のYouTubeで話をしたときに、練習をして、アメリカはやっぱり進んでいるという話をしたときに、僕は『そうですね』くらいの感じだったんですけど、あの人は、やっぱり日本もそこに行かなきゃいけないから、日本を引っ張りたいと言ったんです。

 それを聞いたときに、この人はすごいなと思って。日本人が頑張ってそこのレベルまで行けば、結果として市場開拓もできるだろうから、朝倉選手はUFC PI(パフォーマンス・インスティチュート)のようなものを日本に作りたいと言っていたんです。それがどこまで現実的か、現実的にどうしたらいいかまで考えていた。そういう話を聞いて、やっぱり今までは自分がUFCに行ければそれでいい──今もその気持ちはありますけど、少し考え方が柔軟になったというか、日本の人に知ってもらうのも大事なんだなと思いました」

――一方で、RIZINという舞台だからほかの選手より注目を浴びるという現状もあったと思います。それを見返したいという思いは無かったですか。

「見返したいというか、僕はやっぱりUFCに行きたいという思いだけだったので、正直あまり気にしてはいなかったです。もしRIZINのほうから声をかけていただいて、例えば対戦相手が実績のある外国人選手で、その選手に勝てばUFCも視野に入ってくるんじゃないかという試合であれば、やっていたと思います」

――米国修行も敢行し、強さを求めるなかで、今回のトーナメントが決まった。SASUKE選手がUFC契約を賭けた試合に臨むことの意味をどうご自身のなかで感じていますか。

「プロとして格闘技をやる上で、もちろんお金が欲しいです(笑)。ただ、僕の中での美学というか、哲学というと大げさかもしれないですけど、やっぱりファイターとして“戦ってお金をもらうこと”“戦って人に評価されること”がやっぱり僕の中で一番ベストだと思っています。

 でも正直なところ、戦って得るお金だけで生活するのって、日本ではなかなか難しいのが現状じゃないですか。例えばその知名度が上がって、YouTubeをやったりとか、それで収入を得たりとか、もちろんそれもいいと思います。結局生活が成り立たないと、練習時間を確保して、格闘技を使ってお金を生み出すことも難しい。

 ただ、ファイターとしては、戦ったことが評価されてお金が欲しい。そういう気持ちが強いんですよね。やっぱり僕は弘中邦佳マスタージャパン代表に、格闘技をゼロから教わってきて、弘中さんはそのUFCに出ていた。そこにすごく憧れたんですよね。そのときにどういう状況だったのかもたくさん聞いていて、それが今回の米国修行にもつながっています。だから、UFCで戦って評価されて、生活をする──それが今の僕の目標というか、やりたいことだと、そう思っています」

――今回はマスタージャパンの大勝負でもありますね。

「そうですね。(野瀬)翔平も出ますからね。弘中さんも現地に来てくれます」

――弘中代表も「ROAD TO UFC」に来る。世界最高峰の舞台で最強を目指す選手たちと戦って、飯を食っていく。浪漫を感じます。

「もちろん自分が目標を成し遂げること。同時にやっぱり弘中さんがつくったジムの勝負という見方もできると思うので、翔平にも頑張ってほしいですし、僕も勝って、弘中さんを喜ばせてあげたいという気持ちはすごくありますね」

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