MMA
インタビュー

【UFC】七人のサムライ(1)松嶋こよみ「『世界最強』の場があって『そこを目指す』と言って僕は格闘技を始めた。それが僕の格闘技をやる意味」

2022/06/01 13:06
 2022年6月9日(木)と6月10日(金)の2日間にわたりシンガポールで1回戦が開催される『ROAD TO UFC』。  ABEMAでの完全無料生中継も決定した同トーナメント(※1回戦が6月、準決勝は9月、年末に決勝戦。優勝者がUFCと契約)には、フライ級、バンタム級、フェザー級、ライト級の4階級に“七人の侍”が出場する。  本誌では、トーナメント出場7選手にインタビューを行った。  1人目は、修斗、PANCRASE、ONE Championshioで活躍し、世界最高峰のUFCで戦うためにONEとの契約を更新せず、1年4カ月間を研鑽し続けてきた、松嶋こよみ(パンクラスイズム横浜)だ。 自分のためのトーナメント、ここで勝たなくていつ勝つんだ ――まずはこの「ROAD TO UFC」のトーナメントへの出場が決まったときの率直な気持ちを教えてください。 「1回『無理』という宣告を一応受けたんですけど、そこからまた一転二転して、こうやって決まって、ようやくチャンスが巡り巡ってやってきたなという喜びと、スタート地点にやっと立てたという気持ちなど、いろいろ感じています」 ――昨年、ONEとの契約を更新しないことを公表し、2020年12月のゲイリー・トノン戦から1年4カ月の期間が空きました。最終的にONEとはどのような形で契約が切れたのでしょうか。 「2021年の6月に一応最後、契約期間が終わって、そこから半年間いろいろマッチアップ期間みたいなのがあって、他のオファーがあればONEに伝えて了承を得る必要がありました。そのマッチアップ期間が終わり、今年の初めで契約自体は終わりました」 ――不退転の決意だったと思うのですが、ONEで世界の舞台も経験して、いよいよUFCへというお気持ちでしょうか。 「本当は(ONEの)試合が終わって、1年経って、今年に入ってからすぐにでも試合をしたいという気持ちはすごくあったんですけど、それがなかった分、試合ができなかったり、期間が空いてしまった分、しっかりと練習も積んでこれましたし、ONEで戦ってきた経験は生かせるんじゃないかなと思っています」 ――試合がない期間は、試合用の対戦相手の対策練習ではない、ベースの強さを上げられる期間だとも言われますが、松嶋選手の場合はいかがでしたか。 「全体的なレベルアップはもちろんなんですけど、今まで詰めてこれなかった打撃の部分だったりとかを、前回のトノン戦後からすごく意識して練習できているので、打撃の破壊力だったり、鋭さだったりはすごく上がっているんじゃないかなと思います」 ――UFCとの契約が懸かったアジアトーナメントというのは、相手の強さ、全体的なレベル、そこで求められる自分の戦い、どのように捉えていますか? 「アジアだからといって弱い人が出てくるわけじゃないし、各国のチャンピオンレベルが集まる大会ではあると思います。わりと国内でしか戦っていない選手が多いというのはちょっとあって、どのくらい強い選手なのかなというのはいまいち分からない部分がありますが、その分、僕はONEという舞台で世界と戦ってきたという自負もありますし、そこをしっかりと出していけたらなと思います」 ――もともとONEに出ている頃から、最終的に目指すのはUFCなんだということをずっと言ってこられて、12勝5敗というご自身のキャリアや、29歳という年齢などを考えて、“もうここでやらなければ”という期するものもありましたか。 「正直ONEから離れようと思ったのが、年齢的にもUFCへのチャンスはもうあと少ししかないというのもあって、ONEから離れるという決断をして、そのタイミングでこうやって、1年半ですけど、試合が無かった状態の中でこういうチャンスが巡ってきたので、これは本当、“自分のためのトーナメント”なんじゃないかと思うくらい、ここで勝たなくていつ勝つんだ、という気持ちで練習をしています」 [nextpage] 手足・左右関係なく「歩くように」戦う ――今回の初戦の相手、韓国のホン・ジョンヨンについてお伺いしたいのですが、今の現時点でどの程度研究されていますか? 「試合動画とかはけっこう転がっていて、YouTubeとかにも上がっているので、そういう部分はしっかり確認して見たりはしています。今までけっこう感覚的に、相手に合わせた作戦を考えていたんですけど、今回はどちらかというと、“自分をどう出すか”ということを意識して練習しています。もちろん相手の癖だったり、攻撃パターンだったりは見つつも、自分がどういう攻撃をしていくかというのを重点的にやってきました」 ――以前と比べて、今回あまり相手のことを意識しすぎず、自分のパフォーマンスに集中する、と思ったのはなぜですか。 「ONEでの最後の試合でトノン選手と対戦したときに、やっぱり相手を大きく見すぎていたというか、相手の対処に自分の時間を使ってしまったのが敗因の一つだと思いました。それよりは、自分のいいところをぶつけたほうが勝算があるんじゃないか、とそのときに感じたのもあって、今回はそういう作りをしてきました」 ――先ほど、試合がない期間の中で、打撃についてかなり力を入れてきたという中で、破壊力や強さが増してきたというのは手ごたえとして感じていると。 「試合が決まってまだ3、4週間、1カ月も経っていないんですけど、それまでやっていた部分を、すごい無駄を省いていっている感じがしています。それがさらに良くなっているんじゃないかなと自分では感じています」 ――「無駄を省いていっている」というのは、パンチや蹴りのどんな部分になるのでしょうか。 「パンチ、蹴りの単体というわけではなく、“どちらも使える”というか、両手も両足も使えるし、それが“全部つながっている”ようにというのを意識しています。なので、パンチ力が上がった、蹴りが強くなったとかよりも、相手にとって“どれが来るか分からない”、そういう部分を強化してきました」 ――今まで以上に松嶋選手のタックルを織り交ぜるような打撃であったりとか、よりスムーズに隙間がないような状態でしょうか。 「今までもどうやってパンチからタックルにつなげようとか、そういう部分をいろいろ考えて練習はしてきたんですけど、さらにシームレスになったというか。そういうふうな状態を作れ創れてきたと思うので、そこをしっかりと出せたらなと思っています」 ――打撃、特に蹴りを強化されてきたと聞きました。そして先ほど仰ったつなぎの部分でも「蹴り終わりにテイクダウンも頭に入っている」と。それはとても難しい動きのように感じるのですが、MMAの中で融合してきているということなんでしょうか。 「今は“足も手のように動かす”ようなイメージをしているので、前からそう考えてやってきたのですが、足・手、関係なく動いて、なおかつテイクダウンに入れるような動きを作ってはこれたかなと思っています」 ――手足、そして左右も関係なくという。練習動画を拝見すると歩くように打撃の練習をしていました。 「はい、そうですね。今までのスイッチしたりとか関係なく、本当にもう歩くような練習、歩くような動きをしていくことによって、自分の体力もだいぶ持つようになりましたし、今までとだいぶ変わったんじゃないかなとは思っています」 [nextpage] どれだけここで力を使い果たせるか、全力で挑めるか ――今回はワンマッチではなくて、6月の1回戦に続き、準決勝が9月、年末に決勝戦という期間がある中でのトーナメントになります。優勝するためには何がポイントになると考えますか。 「自分にとっては、まずは初戦がどうかということかなと思っています。試合間隔が空いてしまったので、ここでどれだけ取り戻せるか。正直、これはスタート地点だと思っています。UFCで契約してからが大事だとは思っていますが、そこに向かう中で、どれだけここで力を使い果たせるか、全力で挑めるかというのを大事にしていきたいです。1試合1試合大事に戦っていきたいと思っています」 ――「どれだけここでやり切れるか」だと。緊張と興奮の部分、どういった感情なんでしょうか。 「早く試合をしたいという気持ちが今はすごい強いですね。すごく状態もいいですし、今やってきたことを早く出したいという、そういう精神状態なので、もちろん落ち着かなきゃいけない部分もありますが、ちょうどいいくらいのバランスで準備できているんじゃないかなと思っています」 (C)ABEMA ――今回いろいろないきさつがあって、1回は閉ざされかけた道が、もう1回アジアトーナメントという形で挑戦できることになった。それはでも、1回勝てば上がる可能性もあるコンテンダーシリーズではなくて、こういうアジアの中でのトーナメントで勝ち上がっていくということに関しては、どのように捉えていますか? 「どうですかね。コンテンダーシリーズだったら、勝ったとて契約できるかわからないというのが実際あるわけですし、このトーナメントは、『優勝したら契約』という答えが出ているものなので、どちらかというとすごいありがたいというか、もう1回このチャンス、ここを本当に勝てればUFCだ、という気持ちではいます」 ――どちらにしても全部勝ち上がらなくてはいけないとはいえ、一番最初の相手が、Double GFCとAngel's FCのフェザー級統一王者ホン・ジョンヨンになったことに関しては、どのようにとらえていますか。 「わりと“ザ・韓国MMA”という感じのファイトスタイルだなと感じています。過信するわけではないですけど、作戦は組みやすいというか、相性はいいんじゃないかなというふうには思っています」 ――コリアンゾンビ門下生で、強い組みとハードパンチで削り合い上等の根性ファイトも見せるジョンヨンに対し、自分のペースで戦うと。 「そうですね。別に誰が相手でも関係ないとは思っているんですけど、その中で1回戦でこういう相手と戦えるというのは、すごいありがたいというか、根性もあるし、そんな簡単には倒れてくれないだろうし、自分の力をしっかり出せる相手なんじゃないかなと思っています」 ――勝ち上がれば、2回戦でSASUKE選手と戦う可能性もあります。UFC入りを懸けた試合の中で、準決勝で日本人同士の、SASUKE選手と戦う可能性があることについては、どう感じていますか? 「なんとも思っていないです。もちろん対戦相手の一人でしかないので、別に決勝でやろうが、1回戦でやろうが、対戦相手ということに変わらないので。もちろんSASUKE選手と喋ったりとかもしたことありますけど、たぶん相手も同じように思ってくれているんじゃないかなと思っています」 [nextpage] 日本でしかできないこともある ――なるほど。あらためてうかがいます。ONEを経て、UFCで戦うということにこだわり続けたのはなぜですか? 「もちろんみんなが分かっている通り、ここに『世界最強』という場があって、それがUFCなので、『そこを目指す』と言って、僕は格闘技を始めて、チャンスが少しでもあるんだったらそこを目指していきたいという部分はずっと変わりなかったので、それが僕の格闘技をやる意味かなと思ってやっています」 ――だから、その間にいくつかの選択肢があっても、UFCを目指すということはブレなかったんですね。 「そうですね。もちろん試合をしたい気持ちもありますし、30(歳)手前、この時間って、たぶん格闘家にとってはすごく大事な時間だとは思うんですけど、でもやっぱりそこに、UFCにつながる部分でないとやってもな……というふうに思って断ってきたオファーもありました。いろいろあったおかげで、こういうチャンスが巡ってきたので、本当よくできているなという感じです」 (C)ABEMA ――現在の練習環境はどのような感じでしょうか。所属のパンクラスイズム横浜では、河名マスト選手との練習姿も拝見しましたし、一時はCAVEで斎藤裕選手と、さらにT-GRIPでは平本蓮選手と練習する姿もありました。 「試合前に関してはわりと近場の関係性が強いところで練習しています。パンクラスイズム横浜、ロータス、T-GRIP。あとは、ボクシングだったり、キックボクシングは、元々K-1の選手だった左右田(泰臣)選手のジムで練習させていただいたりしています。スパーリングとかをすごいいっぱいやらせてもらってるんですけど、めちゃくちゃ上手なので、いろいろアドバイスをいただいたりとかしながら、いい練習ができているかなと思います」 ――それを岩崎達也さんの空手の教えとも合わせて、融合させているのですね。 「そうですね。いろいろなところでやってきたのを、横浜だったり、T-GRIPとかで合わせて、すり合わせています」 ――あとは、MMAのトレンド自体が変化もする。松嶋選手がそう感じる部分はありますか。 「以前より蹴りの種類が増えてきたような気がしますね。それこそ今までボクシングだけでも全然通用した選手が、蹴りの距離で勝てなくなってきた試合もあると思うので、それは僕の先生は、極真で学んできたことを僕に教えてくれているので、そういう部分では一つ、アドバンテージがあるんじゃないかと思っています。  距離が離れた分、蹴りの距離になったりもあると思うので、だからといって全部が全部当たるという感覚はないですけど、前よりは、僕の長い──そんな長くないか──いい距離で戦えるんじゃないかなとは思っています。打撃の手応えもありますし、これで倒せるという技が何個か自分で準備できているので、楽しみにしていてください」 ――この1年半で新しい松嶋選手の姿が見られそうですね。 「そうですね。まあ試合になってみなければ分からないというのもありますけど、そういう部分を出せたらと思っています」 ――マラット・ガフロフ、クォン・ウォンイル、マーティン・ニューイェン、キム・ジェウォン、ゲイリー・トノンと、ONEの中でもトップどころと戦う試合が多かった。ONEの国際戦で、トップどころと鎬を削ってきたことは、他の選手に比べてアドバンテージになっているのではないでしょうか。 「それこそ海外で試合をしていない選手も多い中、海外での試合経験もあるというのはすごいアドバンテージだと思います。あとは、それなりに──と言ったら変ですけど、ちゃんと強い相手と戦ってこれたと思うので、そこも自信を持って戦えるんじゃないかと思っています」 ――今回、アジア代表を決めるような戦いであって、中国、韓国の選手もいるわけですが、ウォンイルとも対戦した松嶋選手にとって、アジア勢の印象をどうとらえていますか。 「やっぱり韓国の選手たちはそれなりにちゃんと強い選手だなと、試合映像を見て思っています。もちろんチャンピオンレベルの選手が多いですから。中国人選手はちょっとよく分からないですね。試合映像とかも全然無くて、結局中国人選手同士での試合をいっぱい積んできた選手が多いので、どの程度なのか全然分からないです」 ――気になるのはルールが、今回はユニファイドルールになり、ONEとは異なります。その部分のアジャストはいかがですか。 「ONEのルール、グラウンドでのヒザ蹴りありだったりとか、そういう部分は全然なんの心配もなく、今回で変えることは出来ます。普通の練習してたらあんまり気にならない部分ではあるんです。それよりも、今回は水抜きがある北米の計量ですね。そこを……何年ぶりだろう。かなり65.8(kg)まで落としてないので、そこがちょっと心配なところではありますけど、ちゃんと準備はできているので、大丈夫かと」 ――PANCRASEでISAO選手と対戦(2018年4月)したとき以来ですかね? 「そうですね、4年ぶりくらいです」 ――1回、体重を落としてみたりもしていますか。 「していないです。けっこうONEの計量に慣れてしまって、体重もすごい増えて、普段けっこう重かったりしてたので、そこはトレーナーと話し合いながら、ちゃんと身体の作りなどを戻してこれたので、いい状態にはなっています」 ――世界レベルで戦っていくにあたって、日本人選手でもアメリカに拠点を移したりする選手もいます。松嶋選手はこれまでに、アメリカに練習に行くとか、拠点を移してみようなどと考えたりしたこともありますか。 「一応今回試合が決まる前まではサンフォードMMAに練習に行かせてもらう予定ではあったんですけど、決まって、向こうでいきなり調整というわけにもいかないので、行くのをやめて、今回は日本で準備したという形です。  でも、日本でやれることはもっといっぱいあると思うので、別に向こうでの練習にそんなにこだわりは感じていないです。もちろん練習に行きたいという気持ちもありますけど、向こうを拠点にしようとか、そういうのは今はとりあえず考えてなく、何とか自分の出せるものを出していければと思っています」 ――日本の練習環境でも強くて格闘技を考え続けている人たちが集まっている。逆に世界的に見ても、ここはいいんじゃないかと思えるようなところもありますか。 「僕の教えてくれてる方たちはここにしかいませんし、アメリカに行って、じゃあそういう人たちが教えてくれるのかといったら、正直分からない。スパーリング相手はいるかもしれないけど、スパーリングするだけだったら、別に向こうを拠点にする必要はないとは思うので、それは僕に先生がいっぱいいるということだし、日本でしかできないことだなと思っています」
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