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【RIZIN】朝倉海が米国修行で「RIZINにもうそこまでこだわる必要はないのかな」「練習時間がもったいない。ハワイ観戦と葛藤」──初日にUFC6位のドヴァリシビリとスパー

2022/04/21 12:04
 2022年4月20日(金)、朝倉海(トライフォース赤坂)が米国ラスベガスでの武者修行を現地からYouTubeライブで報告。RIZINを卒業し、海外マット参戦、米国移住の可能性などを語った。  ラスベガスで1軒家を借りて、YouTubeメンバー、さらにトライフォース赤坂所属で新極真黒帯、柔術青帯でもある咲枝マリクの通訳のもと日々、昼夜2部練習で米国修行に励んでいる朝倉。  本誌の取材通り、4月15日に日本を発ち、現地の同日夜にラスベガスに到着。4月23日にUFCで3連勝中のス・ムダルジ(中国)との試合を控えるマネル・ケイプ(アンゴラ)の空港出迎えもあり、さっそく16日に、現修斗世界フェザー級王者のSASUKEらも出稽古中のシンジケートジムで初練習に臨んだ。 初日に「いきなり心が折れそうになった」相手は──  初日はフリーマットで30~50人ほどがいたキックスパーに参加。アマチュアやプロになりたての選手が多いと聞いていた、その練習で、朝倉は「いきなり心が折れそうになった」北米MMAの洗礼を受けたという。 「ひとりめちゃめちゃ強い人がいて、アレ? みたいな。こっちの選手はアマチュアでもめちゃめちゃ強いのかな、俺が時差ボケと寝不足で弱ってるのかなと思って、結構、強いから“アレ、大丈夫かな”と、いきなり心が折れそうになったんですけど……」と、朝倉が層の厚さを感じたその選手は、現UFC世界バンタム級6位のメラブ・ドヴァリシビリ(ジョージア)だった。  しかし、そのドヴァリシビリとの練習が、一気にジムに溶け込むきっかけになった。 「最初フリーマットで飛び込んだから、誰も相手をしてくれなくて、“なんか変なやつが来たな”みたいな感じで、メラブ選手を知らずに最初、マスでやってたんだけど、俺もぶち込んで行ったら、結構ガチスパーみたいになっちゃって。メラブ選手とバチバチでやっていたら、みんなが“君、強いな、どっから来たの?”みたいな感じになって。分かりやすくて、最初全然、相手にしてくれなかったのに、格闘技の技術とか認めてくれると、歩み寄ってきて、“俺ともやろうよ”となって、いきなり初日からいい練習ができましたね」  その後も、すでに2回ほど肌を合わせたドヴァリシビリとは言葉もかわし、「向こうもアマチュア選手だと思っていて、“なんか、おかしいぞ”とお互いに思って、俺の試合を見たことがあるみたいで、佐々木憂流迦さんのチームメイト(セラ・ロンゴ・ファイトチーム)だから、『おおー、あの時の?』と気付いて、次の日は打撃につきあってくれなくなりましたね。すぐにテイクダウンに来るようになった(笑)。UFCのランキング6位は、めちゃめちゃ強いですね」と、同階級の世界ランカーとの練習が大きな刺激になっている。  チダオバ、柔道、コンバットサンボ世界2位などをバックボーンに現在UFCで7連勝中で、井上直樹のチームメイトでもあるドヴァリシビリや、UFCではフライ級に階級を落として参戦中のケイプらとの練習。そして、井上が現UFC世界バンタム級王者のアルジャメイン・スターリングと練習していたことについても、「すごくいい環境で練習してたんだなと。アルジャメインとも練習してみたいですね。ほんとうにトップとやって自分に何が足りないのか明確になる。もっと早く来ていれば?“たられば”だけど……確かにそう(いう気持ちに)なっているな。アメリカに早く来れれば……いろいろなタイミングがあって来れなかった。このタイミングで来てすごく良かった」と、海外修行を行動に移したことを前向きにとらえ、今後に活かすつもりだ。 [nextpage] 「海外で戦う姿を見たい」という声に応えたい  渡米前に「いま自分がどれくらいのレベルにいるのか、向こうの練習内容のいい部分を吸収して帰ってきたい」と語っていた朝倉。ラスベガスでの練習のなかで、手ごたえと同時に多くの課題を感じている。 「同じ階級の選手と2、3人とやって、“自分はまだまだだな”と感じる。打撃とかは普通に通用するな、かなり戦えるなと自信にもなるけど、レスリングでは普通にテイクダウンを取られたりする。極められたりはしないけど寝技もまだまだ。みんな全部出来て強い。打撃が得意そうな選手にテイクダウンに行ったら寝技も強いという。やらなきゃいけないこと、明らかに劣っていることが明確になった。テイクダウン能力や寝技の対応を向上させないといけないなと感じています。それを体感できたのがよかった」  滞在予定は1カ月。その期間も延長する可能性が出てきた。 「最初は不安だったけど、毎日が楽しい。すごくいい練習ができています。選手も寝技、打撃といろんなタイプがいて、経験値がバッと一気に上がった気がします。正直、1カ月じゃ全然足りない。5日間で日本に帰りたくなくなっている自分がいる。いろんな事情があるけど……もしかしたら延長するかもしれないです」  できれば米国に移住したい、という朝倉は「海外で戦う姿が見たい」というファンの声に、RIZIN卒業も示唆する。 「RIZINにもうそこまでこだわる必要はないのかなと思っています、正直。いま、RIZINで戦っている姿よりも、海外で戦う姿を見たいっていう声の方が多いと思います。なので僕もそっちを目指してもいいのかなって思っていますね」 『THE MATCH』は出ない。いまは総合格闘技で強くなるために1分1秒でも使いたい  それは、ファイターとしての強さへの渇望と30歳まであと1年半の焦燥だ。参戦の可能性もあった、6月19日の『THE MATCH 2022』も出場しない、と語る。 「『THE MATCH』は出ないです。あれってキックボクシングの大会だから、キックボクシングの試合もちょっとやってみたいなという気持ちもあったけど、いまはそんなことをしている場合じゃないなって。総合格闘技で強くなるために、1分1秒でもそっちに使いたいんで、キックボクシングに出ることはありません」  格闘技に集中するために、YouTuberとしての活動の割合も減らしていくという。 「YouTubeの更新は減っちゃうかもしれない。その分、いろんな格闘技に時間を費やしたい。海外に来て見て、大晦日に3年連続負けているというのもあるし、“ほんとうにいま変わらないといけない”というのもあって、今回、海外に来たんですけど、やっぱり来てみて、もっと練習量も増やさないといけないし、もっとやるべきことがあるなと正直、感じています。  いままで格闘技の練習時間を絶対減らさないように撮影をやってきたんですけど、YouTubeの撮影は大変。ただ、ここまで格闘技に向き合えるのはファンのみんなのおかげなので、YouTubeでも情報を届けたいし、ビジネスにもいろんな人が関わって、僕だけのことじゃない。メンバーやメンバーの家族のこともある。移住もいまのYouTubeが無くなったら難しい」と、朝倉は悩める胸のうちも明かした。 「格闘技が一番なんで、そこに集中できる環境を作っていきます」という朝倉は、今週末にハワイで2日連続で大会を開催し、堀口恭司が出場するBellatorの現地観戦を予定していたが、来場しない可能性もあるという。 「榊原さんから『ハワイに来ないか』と呼ばれていて、もしかしたら行くかもしれないけど、いまは行かない可能性が高い。6時間かかるから、練習時間が減るのがもったいないなと。堀口選手の試合を生で観戦したいのもあるけど、練習もしたいし……いまは葛藤しています」 [nextpage] 海外とのパイプを作り、朝倉未来とも共有していく  何より、直に海外トップと肌を合わせることで、まずは、1カ月の海外修行で感触を掴み、今後の練習環境をどう作っていくか。真の変化のためには、“お客さん”としての参加から、チームとしてより進化した戦略やトータルコーチのアドバイスが必要となる。 「いろいろなパイプを作るためにもここに来ています。米国に来たときに練習できるような人脈作りや、アメリカ人の優秀なトレーナーを日本に連れて来れたら滅茶苦茶いい」と、今後を見据えた、拠点作りも今回の渡米の目的だ。  それを、兄・朝倉未来とも共有してチーム強化につなげていく。 「1週間前に兄貴と会話して『来週行く』と言ったら『いいね、俺も行こうかな、たぶん俺も行くよ』って言ってた。もうすでに持ち帰りたい練習もあるし、合流できたらしたい。こっちの練習について話したいし、兄貴と共有して練習の質を良くしていきたい」 (※朝倉未来は自身のSNSで「5月頭から海外へ行きます。一番の目的は格闘技のため。海外のトップファイターに触れていきたい。僕も弟に続いて。ハワイでマックス・ホロウェイとスパーリングが出来たら得るものが多いんじゃないか。いま、RIZINが動いてくれているので、どうなるか分からないですけど、とりあえずハワイのほうで1週間ほど練習をしてからラスベガスに行きたい。世界との差みたいなものを感じてみたい」と語っている)  ラスベガスのUFCパフォーマンス・インスティチュートでは、UFCファイターとそのゲストのためのトレーニング施設の充実ぶりに舌を巻いた。  ケイプの紹介で同所を訪れた朝倉は、フルサイズの複数のケージやフィジカルトレーニング機器、流水プールやリカバリールーム、各部門のトレーナーや整体師、栄養士によるレストランなども視察し「毎日行きたい」と感嘆する。  試合前にもかかわらず、丁寧に同地を案内するケイプについても「もう調整期間に入っているけど、かなり強い。打撃だけじゃなくレスリングも全然強くなっている。日本人の誰よりもバネがすごいし、パワーもある。ケイプ、気遣いもあって優しくてほんとうにいいヤツです。23日(日本時間24日)にUFCで試合があるので、ぜひ応援してあげてほしい。ダメージが無ければ、試合後も合流したい」と、かつて拳を合わせた盟友のチャレンジを後押しする。  ファンから2019年大晦日(ケイプが2R TKO勝ち)以来の再戦の可能性を問われると、笑顔で「再戦あるかもしれないですね。ケイプはいまはフライ級ですけど、僕がUFCに行ったら再戦する可能性も全然あるんじゃないですか」と答えた朝倉。  格闘技を始めた頃からの目標である世界最高峰を目指すために「すべきことがある」。それを確認するための北米修行の日々を、大切に過ごしている。 「とりあえず1カ月の予定ですが、少しでも、ひとつでも多くのことを吸収して、絶対強くなって帰りますので期待していてください」──朝倉海は、大晦日以来の復帰戦を7月に見据えている。
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