MMA
インタビュー

【UFC】平良達郎、オクタゴン初陣を語る(後篇)「僕は格闘技に就職した。“もう22歳”UFCで勝ち抜くためには、もっと急がないと」

2022/05/31 11:05

自分としては思っているほど「時間がない」という気持ちが大きい

──アメリカ滞在に悩む人は、やはり食べ物が原因の場合も多いと思いますが、その感じだと問題なさそうですね?

「ぶっちゃけ暮らすのは大丈夫そうです。食事とかも合いましたし、“長い間いたいな”って気持ちはありますね。ただ、次またすぐ海外に練習に行こうと思っているのですが、アメリカにするかは分かりません。……いま、タイガームエタイに行ってみたいなと思っているんです。あそこでピョートル・ヤン選手も練習していますよね? 彼と練習してみたくて。ほかにもいろんな選手がいますし」

──ヤンは試合前はATTにもいて、いまはそろそろ休暇明けではないでしょうか。タイガームエタイにはヤンや、シティキックボクシングのヴォルカノフスキーが出稽古に来たり、日本からはクレベル・コイケ選手もよく訪れていましたね。

 今回の同じ大会では、フライ級でデビューしたジェイク・ハードリーがアラン・ナシメントに敗れるなど、ランカー以外にも強い選手がいる中で、平良選手としてはうまくいったところ・うまくいかなかったこともあり、そこで自分自身に感じた課題が、タイガームエタイというジムの選択に繋がっているのですか?

「今回の試合だけじゃなくて、向こうに練習に行ってみたことも、もっと言うと沖縄を出るという意味では、千葉でもそうなのですけれど、新しい練習をしていくとやっぱり外に行くたびに課題が見つかるんです。レスリングの対応であるとか、寝技でも、上と下では下が苦手というか、上の方が僕は得意ですし、寝技の攻撃と逃げだったら攻撃の方が得意であるだとか……自分の中に長所と短所がある。そういう打撃、組み・レスリング、寝技において、“全部強くなりたい!”って思うんですけど、それって“考えてみたら全部だった”という状態というのか……打撃はここを強化したいとか、それぞれポイントがありますし、色んなジムに行ってみたいとも思っています」

──環境を変えることで浮き彫りになってくることもあると。

「はい。同じ環境でずっとやってきて、その積み上げも大切だと思うのですが、とりあえず新しい刺激も必要だと感じました。で、“どこに行きたいかな?”って考えたときに、アメリカントップチーム(ATT)に行ってみたいとも思っていました。ただ(対戦したい相手として名前を挙げていた)ムハマド・モカエフ(※アマチュア23勝無敗・プロ7勝1NC)がいま、ATT所属になったということを知って、そう思うと“あんまり行きたくないな”ってなってしまって。戦うかもしれないですし、やりづらいなと思って。

 であれば、ATTよりもタイガームエタイに行ってみたいなと。それに、とりあえずアメリカには行けたから、タイガームエタイのほうが地理的にも近いですし。次の試合がいつに決まるか分かりませんから。とにかく海外で練習することはやっぱり必要だなって思っています。……というのも自分としては思っているほど“時間がない”という気持ちが大きいんです。20歳過ぎてから、本当に歳を取るのが早いなって。20歳になったときから、今も自分は……、何て言うんですかね……、“もう22歳”っていう感じなんです」

──「もう22歳」……。UFCだけのことを言えば平良選手は現在のフライ級で最年少ですし、全体でも3番目に若い選手ですが、ご自身としてはそういう焦燥感のようなものを感じることがあるのですね。

「松根さんや岡田さんと一緒にいると子ども扱いをされることが多いというか。松根さんは『この子は歩くのも遅いし、のんびりやさんだから、岡田も大変だろ?』みたいに言われるので、そういう年上の方との時間が長いことで“俺って子どもなんだな”なんて逆に思ってしまったりもするんですけど、周りにいる昔からの友人が就職しているのを見たりすることで、やっぱり(時間が過ぎるのは)“早いな”と感じるのと同時に、“みんなそう(仕事をしている)なんだよな”って思ったというか。“自分は、格闘技に就職したんだ”と実感しました。

 そういう中で、いまだにメディアに“超新星”と書かれたりすることもそうなんですけど、人から年齢を『21歳』とひとつ間違えられて言われたりすると、“もう22歳なんだけどな”から始まって“もう22歳なのか!”って。僕にはバックボーンが無いですから、レスリングやボクシングといった色んなバックボーンがある選手と対峙して、そこで勝ち抜いていくためには“もっと急がないと!”っていうのが、ここ最近ずっと思っていることです」


(C)Zuffa LLC

──なるほど。「急がないと」という言葉が出ましたが、その一方で平良選手はUFC参戦について「ラッキー」と捉えていると仰っていました。ダナ・ホワイトのコンテンダーシリーズに出ることからスタートして、そこで良い試合をして契約を勝ち取っていくというキャリアプランだったということでしたが。

「はい。自分は“コンテンダーシリーズに出る”と決めて、それに向けて頑張ろうという気持ちだったので、契約したときは本当に“ラッキーだな”としか思わなかったです。でも契約してくれたUFCもそうですし、それを勝ち取ってくれた、エージェント(米国イリディアム・スポーツ・エージェンシー)のオーナーであるジェイソン(ハウス)さんもそうですけど、“意外と俺って期待されてんだな”って(笑)。それで頑張ろうってなりましたね。僕自身、試合を重ねるにつれて、日本の格闘技ファンの方々が期待してくれていたり、応援の数が増えていくのは実感していましたけど、今回のデビュー戦のオッズも結構自分の方が上で(※-310FAV)、“当たり前に勝つ”と思われていることを感じて、“勝たないといけないな”と考えたりもしました。そして何より岡田さんもそうですし、松根さんもいつも親身になってくれて、本当にただただありがたいと思っていて。試合で勝つことはもちろん、これからどうやって恩を返せるだろうかってことをいつも想っています」

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