経営的な判断を考えると正直、日本人選手の戦いだけで「そのままにしておけばいいじゃないか」という声は無くもない。でも──(榊原CEO)
このパンデミックの間、開催された大会後に、ある関係者は「危機感を覚えた」と語っていた。
「確かにものたりない。それでも日本人選手だけの大会でもライバルストーリーもあり、見られるものにはなっていた。でも競技レベルが低い選手の試合もあり、愕然とした思いを感じたのも確かです。このままでは行けない──様々な痛みは伴うものの、それがいちはやく開国に至った経緯でもあります」
海外選手を1人招聘するだけでも、セコンドを含め、多くの経費がかかる。それが東欧やブラジルならなおさらだ。
【写真】ホテルの大部屋2つを1週間貸し切り、2つのマットを用意。サウナも多い日本でもタトウーを入れた海外選手用に簡易サウナも備えられた。もちろん体重計も置かれているが「時々、自室へ持って行ってしまう選手がいて困る」(柏木信吾・RIZIN渉外担当)
今回の結果を受けて、国内メジャーのRIZINは、どこに舵を切るか。2大会後に榊原信行CEOに聞くと、「戦いの舞台をもう一度ワールドワイドにダイナミックに展開していきたい」と、海外強豪の招聘に、より積極的に動くことを明言する。
「RIZINぐらいが外国人選手を呼ばないと、ほかのプロモーションもなかなか呼ばないと思うんですね。僕らはここで満足していたくないんですよ。やっぱり島国である日本の中だけの戦いの舞台にとどまる気が無い。1人の外国人選手を呼ぶだけでも、セコンドを含め渡航費用や滞在費用がかかりますし、いまでもまだホテルの中で借り切って、専用のトレーニングルームも作って選手たちのコンディション調整の環境を整えています。当然、通訳の費用もかかる」と、採算度外視の部分もありながら、世界に開かれたMMAフェデレーションであることを榊原CEOは諦めない、という。
「正直、日本人選手の戦いだけで、この2年半のことを考えると“そのままにしておけばいいじゃないか”というのは、経営的な判断を考えると、無くもないんです。でも、そんなのつまらないんでね。どれだけ日本人選手が弱いか、というのは外国人選手を連れてくればはっきりすることだし、逆にそういう外国人選手を向こうに回して、世界標準で戦える──やっぱり、今回のように強い外国人選手を見せれば、ファンも“ちょっと違うね”というのを感じてもらえると思います。ただ、海の向こうではそういう選手たちが、別に今回、UFCやBellatorのランカーを呼んできたわけでもなく、まだまだ上がいる、そういう選手たちの中でも戦っていける日本人選手を、僕は作っていきたいし、そのための努力は──RIZINを運営する僕らの会社は『株式会社ドリームファクトリーワールドワイド』という名前だから、ドメスティックじゃなく、ワールドワイドに攻めたい、という、ここは諦めずに、そういう方向でやっていきたいと思います」と、対世界に通用する日本人選手の育成と、RIZINをワールドワイドな舞台として、あらためて世界に打って出る意欲を語った。
そのひとつが、協力関係にある、Bellatorとの対抗戦や、日本大会でのクロスプロモーションだ。
「Bellatorとの対抗戦も積極的にやるべきだと思いますし、この2日間は1勝4敗ですが、まだまだ、RIZINで活躍している選手にもたくさん戦いに飢えて、海外選手と戦いたいと前向きな選手がたくさんいます。今週末のBellatorハワイ大会に行って、スコット・コーカーともミーティングをしてこようと思っていますので、ぜひ、対抗戦も実現させたいなと思います」と、榊原CEOは、今週からハワイ入りし、今後のプランをコーカー代表と話う合う予定であることを明かしている。
ときを同じくして、米国でもBellatorのスコット・コーカー代表が4月12日の会見で「RIZINとのクロスプロモーションの話は、サカキバラとハワイで話すことになっている。年末に日本大会を開催したい」と展望を語っている。