スナップを効かせた左ハイでダウンを奪う
2Rに決定機は訪れた。
サウスポーに構えた牛久は、斎藤の右ハイ&右ストレートをブロックして、左を振ってきたときに右のガードが下がった斎藤のアゴに、腰を回さずスナップを効かせて最短距離で左ハイをヒット、ダウンを奪った。
そして、グローブタッチした最終ラウンド。牛久はオーソドックス構えにスイッチし、斎藤が前手の左フックで飛び込んできたところに、それより先を前手の左フックを当ててマットに手を着かせた。それは、朝倉未来が斎藤にヒットさせていたフックを応用したものだった。
「あのフックはタイミングも見て、あとは身体が自然と反応してくれたのがデカい。フック系のパンチは前戦の朝倉(未来)選手との試合でも(斎藤が)もらっていたので、そこは自分の中でも作戦にも入れていましたね」(牛久)
ハイキックにダウンを喫した斎藤は「もらったんで効いたんですけど、うまく反応できなかったというか。タイミングなのかなって思います。ちょっと通しで試合を1ラウンドから3ラウンドまで見てみたいとは思うんですけど、たぶんディフェンスできないタイミングでもらってしまったのかな……」と痛恨の一撃を振り返った。
【写真】前戦で痛恨のカットを奪われた跳びヒザを再戦の秘策として繰り出した斎藤
最終ラウンドに詰めたのは斎藤。
「3R目は“行かないと勝てない”と思ったし、セコンドの石渡(伸太郎)さんも『ダウンを取るような攻撃をしないと判定(で勝つのは)厳しい』と言っていて、“倒しに行く”という指示があったので、あの状況だったら、もらっても自分から詰めていくという意識はありました。もう半歩、もう1発、2発、ワン・ツー・スリーくらいまでは打てていたら、と今は思いますね」と、挑戦者は最後の猛攻が及ばなかったことを悔やんだ。
最終ラウンドのゴングが鳴り、「僕が勝ったなと確信しました」という牛久。
「前回の試合で僕が叫びすぎちゃって『オラァーッ!』みたいに目が変わるほど叫んでて、みっともないなと思って(苦笑)。すごい嬉しかったので一瞬叫ぼうと思ったけど、“ちょっと落ち着け自分”っていう(笑)」
2021年7月からDEEPと合わせて4度のタイトルマッチが連続した。
「一言で言うのはすごく難しいですけど、とにかく必死だったなって。今思うと、必死だったから、あっという間に過ぎちゃったという不思議な感じですね。でも毎回、この4試合はプレッシャーを感じていたので、そのプレッシャーが自分を強くしてくれたなって本当に感じます。プレッシャーに負けず、逃げずに自分を追い込んできたことがデカかった。練習は毎回毎回キツいんですけど。その追い込みを積み重ねていくと、試合前になった時に自信に変わるんですよ。表現が難しいですね。毎回毎回、限界まで追い込んでいると、“これだけやったんだからもう悔いはないって”と、それが一気に自信に変わるので」と、牛久は試合直前に「すべてピタッとはまった」と語っていた状況を語った。
試合後のリング上で、斎藤から「泣かないで、泣かないで、チャンピオンなんだから、もっと胸張って」と言われた。
「優しい方だと思いましたね。僕の中で斎藤選手はすごく尊敬していて、リスペクトできる本当にすごい選手」と、RIZINがなければ2度も拳を交えることがなかった第10代修斗世界フェザー級王者に敬意を示した。
一方の斎藤は、牛久との3度目の対戦について、「同じ相手に2回負けてるわけなんで、そんなに甘くはないと思います。もしやるんだったら自分が勝ち上がらないといけない」と、RIZIN&DEEP2冠王者との試合のために列に並ぶ必要があることを語っている。