約1年前に武尊と練習したときの前Bellator王者アーチュレッタ。TJディラショーと同門だ(C)Juan Archuleta
2022年4月23日(日本時間24日)、米国ハワイ・ホノルルのニール・S・ブレイズデル・センターにて、『Bellator 279』が開催され、バンタム級ワールドGPが開幕する(日本ではU-NEXTにてライブ配信)。
その1回戦で、負傷欠場した現Bellator世界バンタム級王者セルジオ・ペティスの代わりに緊急参戦し、強豪ラフェオン・ストッツ(米国)と対戦するフアン・アーチュレッタ(米国)に単独インタビューを試みた。
スペインのバスク地方に由来するアーチュレッタを姓に持ち、鉄のレコンキスタドールがトレードマークの前Bellator世界バンタム級王者は、ペティスとの試合で起きていた異変、敗戦を経て、優勝候補の1人であるストッツとの試合に向かう気持ちを、実直な言葉で語ってくれた。
日本とヒスパニックの文化を「通じるものがある」というアーチュレッタは、かつてともに練習した武尊について語り、そして難敵との試合を超えて、「決勝で堀口恭司と“聖地”さいたまスーパーアリーナで戦いたい」と、語った(※前篇からの続き)。
キョージは勝てていた試合だった。ペティスを賞賛すべきは「まったくパニックに陥ることなく、彼自身の戦い方を貫いた」こと
──さて、新しいブラケットでの勝ち上がり予想も伺いたいのですが、ご自身が含まれている側についてお聞きするのも何ですから、決勝まで当たらない反対側の勝ち上がり予想をお聞かせいただくことはできますか?
「まず、キョージは本当に素晴らしい選手だと思うんだよ、12月のタイトルマッチではずっとペティスのことを圧倒していて、結果として最後にKOされてしまったわけだけど、彼のとんでもない運動能力の高さ、MMAの技術力とその豊富さを見せつけられた。
そしてキョージと対戦するパッチー・ミックスもまた世界最高のファイターの一人だ。俺は彼を倒すことができたけど(※2020年9月に5R判定勝ち)、彼のグラップリングの能力はどんどん上がっていて何よりフィニッシュ力がある。
でもキョージのあのものすごいスピードだ。特にあの足。それからグラップリングについても、とにかく速い。そのスピードという彼の持ち味はちょっと遅くなってきてるのかなとも思ってはいるんだけど、とはいえしっかりと方法論を組み立てそれを実行する能力があるから、もしちゃんと距離を保って、スピードを活かして前に出るってことをやれたらキョージが勝つと思う。
それから、すごいスピードで上がってきたルーキーのマゴメド・マゴメドフ。彼はいまだにピョートル・ヤンを倒したことがあるってことばかり騒がれるけど間違いなくトップクラスの選手だ。ヒルvs. バルゾラはレスリングあるいは打撃でどちらが運動量で勝るかにかかっているだろうけど、自分としてはUFCからのニューカマーが勝ってマゴメドフとやるんじゃないかな。そしてその後に当たるマゴメドフはグラップリングがめちゃくちゃうまくて、ものすごい粘り強さがある」
──そして決勝は……。
「正直、決勝は俺とキョージになるだろうね」
──その決勝で当たると予想している堀口恭司選手、先ほども口にされていましたが、セルジオ・ペティス選手とのタイトルマッチを現地でどう見ていましたか?
「あの試合は、もし、キョージがちょっとでも、何て言うか、気を抜かずにディフェンスを上げていたら、勝てていた試合だったよね」
──ペティス選手は勝利したものの、堀口選手にテイクダウンされてもそのまま下でステイし、カーフキックも効かされているように感じました。決まり手のバックフィストは狙っていたとしても、それ頼みだとしたら、博打の要素もあったように感じます。
😱 @SergioPettis turns the tide with a spinning back fist KO out of NOWHERE!
— BellatorMMA (@BellatorMMA) December 4, 2021
👑The Bantamweight champ retains in spectacular fashion LIVE on @SHOsports. #Bellator272 pic.twitter.com/2KEQPRrlIR
「いや、とはいえ、だ。ペティスはもちろんあの動きをしっかりと練習で磨いて実践している。そういうものを繰り返して実行することが試合に臨むことなわけで、つまり試合が終わるまで、戦いの火は決して消えることはない。だから、何より俺がペティスを賞賛したいことが何かと言えば、彼が“まったくパニックに陥ることなく、彼自身の戦い方を貫いた”ということなんだ。
多くの人は、あの試合を、『UFC 117』のアンデウソン・シウバ vs. チェール・ソネン戦になぞらえるよね。あの試合、シウバは最終5ラウンドの終盤までずっとソネンにコントロールされて完全に漬けられていて、一発極めるかKOしない限りそのまま負けることが確実な状況だった。その最後の最後に、シウバは三角絞めからアームバーでソネンにタップさせた。“あれ、何だよ一体? 今、何が起こったんだ!?”って感じだっただろう? それと同じ。あの試合も、前回のペティス戦も、もう二度と目にすることはないだろう、やる方だって二度とできないだろうってくらいのMMAにおける歴史的瞬間のひとつだよ。
でも結果的にそうできるっていうのはね、そのためにペティスは冷静さを保ち続けて、とにかくやるべきことを実践し続けて試合を続行するってことができたからなんだよ。そうすることでまさしく映画のような美しいフィニッシュによって、圧巻の勝利を得たんだ。改めてキョージの方に目を向けてみると、やっぱりあのまましっかりとディシプリン(自制心)を守って、そして彼が攻撃で見せたのと同じようにディフェンスも上げていかなきゃいけなかった。そこが唯一欠落してしまった部分だ」
──フィニッシュそのものは起こるべくして起きたことであるし、何が起きてもおかしくないのがMMAという競技なのだと。
「全くその通り」