2022年3月12日(土)東京・後楽園ホール『KNOCK OUT 2022 vol.2』にて、KNOCK OUT-RED -57kg契約3分3R延長1Rで対戦する小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺)と大田拓真(新興ムエタイジム)のインタビューが主催者を通じて届いた。
小笠原はジュニアキックで活躍後、2011年7月にプロデビュー。2013年5月にプロ9戦目でREBELS-MUAYTHAIフライ級王座を獲得、2015年7月にはREBELS52.5kg級王座も手にした。2017年9月、ISKA K-1ルール世界バンタム級王座を獲得。2021年3月にはトーナメントを制してKNOCK OUT-REDスーパーバンタム級王者となった。サウスポーから放たれる左ストレート、左ミドルキックが得意。前戦は2021年11月に壱・センチャイジムを判定3-0に破り、初防衛に成功している。戦績は38勝(19KO)6敗1分。
大田は2019年は5戦全勝、S1ジャパントーナメントも制すなど飛躍の年となったが、2020年は2月大会でバンラングーンに判定負けして黒星スタート。しかし、9月にWBCムエタイ日本統一フェザー級王座の防衛に成功した。2021年1月にはRISEに初参戦し、RISEフェザー級王者・工藤政英に判定で敗れたが、9月にはIBFムエタイ世界ジュニアフェザー級王者・波賀宙也に判定勝ち。今年2月に国崇との対戦が決まっていたが、新型コロナウイルスの影響により欠場となり、今回が2022年初戦となる。戦績は19勝(5KO)6敗1分。
両者は2021年7月のKNOCK OUTで対戦が決まっていたが、大田が新型コロナウイルスの影響によって欠場となり、試合が中止になっていた。
小笠原瑛作「相手がどうというよりは、自分がどう動けるか」
──昨年、大田拓真戦が一度決まっていた時には、けっこう対策や準備はできていた状態でしたか?
「試合がなくなったのが2週間前ぐらいだったので、けっこうイメージして練習してました。それからけっこう期間が空いたので、もう一度映像を見直してイメージを固めました」
──現時点での相手の印象や警戒する点は?
「手堅い選手かなというイメージはありますね。ムエタイジムでタイ人の先生に教わってるのかなというのもあるので。そういう選手をどう倒していくかとか、倒し切れるかというのが今回のポイントという感じがします」
──だとすると、自分から仕掛けないとという感じですか?
「そういう部分もあるんですけど、やっぱり仕掛けつつも出させて倒すというか。今までは自分が出し続けて終わるというスタイルが多かったので、そのあたり、ここ1年ぐらいで自分が変えてきてるものを改めて使いながら、自分が先に出すだけじゃない部分も固めていけたらなと思います」
──なるほど。ルール面ではどうですか? ムエタイルールとKNOCK OUT-REDルールはまた違うと思いますが。
「KNOCK OUT-REDは完全なムエタイではないですからね。大田選手はムエタイに近い戦い方だし、5Rが得意かなという印象があるので、今回、自分としては『違うよ』というところは見せたいですね」
──KNOCK OUT-REDルールで自分がやってきたものを見せるという思いですか?
「たぶん、僕もタイに行ったら戦い方だったりペースだったりを変えないといけない部分はあると思うんですよ。でも僕はずっと『KNOCK OUT』に出場してきてチャンピオンにもなって、このルールの戦い方を作ってきたイメージはあるので、その意味でルール的にも、自分のホームリングで戦うというのは有利に働くのかなとは思います」
──あと、今回は57kg契約です。階級を上げての挑戦ということになりますが、これは以前から頭にはあったんでしょうか?
「55kgで自分の強さは証明できて、この階級で自分が追いたい相手は今『KNOCK OUT』にはいないので、そうなると、盛り上がっていて若いチャンピオンがいるフェザー級に上げて、そういう子たちと俺が絡めば、また『KNOCK OUT』も盛り上がるんじゃないかと。それにフェザー級でも自分の強さを証明できたら、他団体の選手を呼んだりとか、対抗戦をしたりとか、そういう幅は広がっていくなと思ったんですよね。自分のキャリア的なところ、知名度を上げるというところも考えて、ちょっと前から頭には入れてましたね。やっぱり、強いヤツとやらないと話題にもならないし、いつまでも守りに入った試合をしていたら上には行けないし、有名にもなれないじゃないですか。そういう意味で今年はちょっと階級を上げて挑戦したいなと。現役である以上、常に挑戦していきたいなと思っているので」
──フェザー級の体作りについてはどうですか?
「フィジカルは以前からやっていましたし、ジムでは自分より上の階級の選手とやっても負けない体はあるなと思っていたので、そこは問題ないかなと。ただ、55kgにも落とせるし、格闘家としての減量幅はいい感じだったので、これまでは55kgでやっていたんですけど、今回は階級への心配は特にないです」
──ではこの階級でいけるかどうかを試すのにも重要な一戦ですね。
「そうですね。この階級で自分がどこまでいけるのかとか、安本晴翔や龍聖といったチャンピオンたちと比べられる試合にはなるだろうなという感じですかね」
──それは、フェザー級で自分がどれだけ動けるかという点と、フェザー級の相手が自分にとってどうなのかという点と両面あると思うんですが、重視しているのは?
「相手がどうというよりは、自分がどう動けるかですかね。減量もそこまで激しくやる必要はなくなるので、そこでどこまで動けるかという。もちろん、フェザー級の体の大きさも気になる要素ではありますけど」
──ただ、階級を上げてどこまでやれるかを判断する試合としては、強い相手が来たなという印象があります。
「ですね。けっこういい相手というか、手強い相手だと思います。でも逆に言うと、この選手を相手に認められるような試合ができたら、この階級での自分の位置みたいなものも見せられると思うので、その意味では2022年一発目の相手が大田選手でよかったなとは思います」
──先ほど、フェザー級の選手というところで、安本選手と龍聖選手両方の名前を挙げました。小笠原選手はREDルールのチャンピオンですが、ここでREDとBLACK両方の名前を挙げたのは…?
「REDとBLACKという部分に関しては、本当に強い選手はどのルールでも対応できるというのもあるし、やっぱり『KNOCK OUT』を引っ張っていくとなると、ルール関係なく『KNOCK OUT』に出場してる選手たちが絡んでいくというのは絶対面白いと思うんですよね。で、この選手たちを倒すというのが一番、強さの証明になるとも思うので、自分の中でRED、BLACKを分けて考えるところはなくて、ある意味『フェザー級』という括りの中で考えて、両選手の名前を出したというところはあります。僕がBLACKルールの試合に挑戦することもあり得るし、どうにでもできると思うので」
──新しい挑戦は楽しみですか。
「はい。僕は若くもないけど、大ベテランというわけでもなくて、一番脂が乗ってる時期だと思うんですよ。実際調子もいいので、その時期での階級アップというところで、自分に対しての期待もあるし。そういう部分をお客さんにも見てほしいなというのはありますね」
──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「2021年後半は、チャンピオンとしてちょっと守りに入ってたかなというのもあるんですけど、2022年は『挑戦』を掲げて攻め続けるファイトをします。その中でも大人になった攻め方の小笠原瑛作になっていると思うので、『挑戦する小笠原瑛作』を見てほしいと思います!」
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大田拓真「このルールでも面白いんだよということを、この2人だったら見せられる」
──昨年から試合が決まったり流れたりが続きましたが、やっと試合に集中できるという状況なのでは?
「そうですね。ずっと流れちゃっていたので、追い込んでいたのに試合はできないというのがあったんですけど、逆にそれが続いたおかげでずっといい練習ができていたというのもあります。そこにちょうど小笠原戦のオファーをいただいたので、『これはやるしかないな』と思って、お願いしました」
──一昨年からコロナ禍の影響で大会が中止になったりもありました。今回も半年ぶりの試合になりますが、やはり試合が空くのはつらいですよね。
「弟(WBCムエタイ日本統一バンタム級王者・一航)やジムの選手たちは試合してましたからね。ツイッターとかでみんなが試合してるのを見ていて、『試合したいな』というのはありました」
──今回は小笠原瑛作選手との一戦です。昨年7月に一度決まっていた対戦ですが、あの時点で対策などはできていた?
「はい。だから今回は、あの時に練習していたことの延長線上で考えているという感じです」
──改めて、現時点での小笠原選手の印象や警戒する点は?
「うまくて何でもできるという印象ですね。警戒は……自分はもともと、『この選手はこれが強いからそこを警戒しよう』というのはなくて、全部を警戒しています」
──小笠原選手はスピードが代名詞のように言われていますが、そこについては?
「速いと思います。ただ、そこは映像だと実際のところは分からなくて、対面してみないとという感じなので、試合してみてどう感じるかですね」
──大田選手は5Rの試合が多いイメージがありますが、今回3Rの試合はどうですか?
「いえ、5Rはタイトルマッチぐらいで、最近は3Rの試合の方が多いですね。なのでそこは問題ないと思います」
──普段の練習では、5Rの戦い方を想定してはいないんですか?
「そうでもないですね。自分たちはけっこう相手に合わせるというか、向こうが1Rからくるならこっちも…と。相手が警戒してくるなら、しっかりこっちも見て作っていくという感じで、ラウンド数でこうしよう、ああしようというのはそんなにないです」
──ムエタイ色の強いジムで、実際ムエタイのタイトルも持っているのでそう見てしまいがちですが…。
「練習もスパーリング中心でガツガツやってますし、そうでもないんですけどね(笑)。まあ、自分はけっこうしっかり見て判断したいタイプではありますけど」
──小笠原選手は仕掛けも速いタイプですが、そこは?
「確かにそうですね。ただそこも、リング上でどんな感じなのか、というところですね。向こうがけっこう最初からくるのであれば、自分もやっていかないとなと。見てるだけじゃマズいので。そのへんも試合の展開によります」
──また今回は57kg契約での一戦です。小笠原選手は55kgの王者で、今回は階級を上げて臨む形になりますが、そこは気になりますか?
「いえ、特には。1階級ぐらいだったらパワーがそんなに違うということもないでしょうし。自分もアマチュアの頃とかプロデビューしたての頃は、階級が上でも『やっちゃえ!』って感じで対戦していて、試合でもそんなにパワー差を感じたことはないので。小笠原選手に対してパワーで有利とかは思ってないです」
──ご自身にとっての、この試合のテーマは何でしょう?
「首相撲もあってヒジありという、ムエタイに近いルールの試合だし、小笠原選手もこのルールをベースにやってきているので、ちょっとそれには負けたくないなっていう気持ちはあります。ベースが同じだからこそ、勝ちたいなという気持ちですね」
──『KNOCK OUT』のリングに乗り込むという点ではいかがでしょう?
「ムエタイに近いルールをやっているリングなので、ずっと出てみたいなと思ってました。強い選手もたくさんいますし、注目もされているので、今回このリングに上がれるのはけっこう楽しみにしています」
──継続参戦ということになると、『KNOCK OUT』のフェザー級は選手層も揃ってきている感じですが……。
「もし小笠原選手に勝って、スケジュールが合うのであればやらせていただきたいなというのはありますね。ヒジなしのBLACKルールでも全然抵抗ないですし」
──そうなんですか? これまでヒジなしの試合はほとんどないですよね?
「これまでは1回だけ(2021年1月のRISE)なんですけど、抵抗はないです。というか試合ができなすぎて、とにかく試合がしたいんですよ(笑)。今回もオファーをもらって、まず『出たい!』と思ったので。2月に試合をするはずで追い込みもできていたので、いつもよりは試合までの期間は少し短かったですけど、断っている余裕はないなという感じで。強い人とやらせてもらえるなら、誰とでもやりたいという気持ちが強いです」
──そこにつなげるためにも、今回の試合は重要ですね。勝ち方はどんなイメージを?
「もちろんKOもしたいんですけど、テクニックで圧倒したいという気持ちが強いです。今まで見てきて、小笠原選手はテクニックが冴えているので、それを封じ込められたら圧倒感が出るかなと思うので。その上で倒せたら、自分的にはすごくいい勝ち方だなと思います」
──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこですか?
「2人ともムエタイベースでやってきているので、このルールでも面白いんだよということを、この2人だったら見せられると思ってるんですよ。パンチでの倒し合いも面白いと思うんですけど、首相撲の技術や蹴り合いなどを楽しんでもらって、これも面白いと思ってもらえたらいいなと思います」