2022年2月5日(日本時間6日)に米国ラスベガスのUFC APEXにて「UFC Fight Night: Hermansson vs. Strickland」が開催された。 メインカードのウェルター級戦では、カザフスタンの“MMA遊牧民”シャフカト・ラフモノフが、ガイアナの強豪カールストン・ハリスに1R、戦慄のスピニングヒールキックからのパウンドでKO勝ちを決めた。
ラフモノフは、幼少時からボクシング、キックボクシング、柔道を習得。市場で荷物をかついで運搬する人夫として働きながら、2017年にウズベキスタンからカザフスタンに帰化、永住権を取得している。 格闘技は、試合のDVDを見て知り、のめり込んだという。
コンバットサンボでカザフスタン王者となると、アマチュアMMAでパンクレーションやWMMAAでも活躍。2014年10月の「M-1 Challenge 52」でプロデビューすると、196cmのリーチから繰り出される打撃と絞め技を武器に、この試合まで負け無しの14連勝。
2020年10月に無敗のM-1ウェルター級王者としてUFCに参戦、いきなり実力者アレックス・オリヴェイラにギロチンチョークで一本勝ちして周囲を驚かせると、続く2021年6月にはUFC8連勝の記録を持つミシェウ・プラゼレスにもリアネイキドチョークで一本勝ち。期待のプロスペクトとして注目されている。
カザフスタンのアルマトゥイのDARプロチームに所属し、試合前にはフロリダのサンフォードMMAで出稽古を敢行するなど、世界中をMMAノマド(遊牧民)として行き来している。
対するガイアナのカールストン・ハリスも17勝4敗(UFC2勝0敗)の注目選手。ブラジルでマーシオ・クロマド(※修斗で宇野薫や佐藤ルミナと対戦)からルタリーブリを学んだハリスは、修斗ブラジルから「UAE Warriors 15&EFC32」に出場。ONEで後にジェームズ・ナカシマに一本勝ちのザイード・イザガクマエフを相手に、2021年1月にアナコンダチョークで一本勝ちしている。
▼ウェルター級 5分3R〇シャフカト・ラフモノフ(カザフスタン)15勝0敗(UFC3勝0敗)170.5lbs/77.34kg[1R 4分10秒 KO] ※右スピニングヒールキック→パウンド×カールストン・ハリス(ガイアナ)17勝5敗(UFC2勝1敗)169lbs/76.66kg
1R、ともにオーソドックス構え。頭を振るハリスに、上体を立てるラフモノフは左ジャブから。ハリスは左インローを当てる。ラフモノフはワンツーの右がとらえる。
ハリスのジャブの打ち返しをスウェイでかわすラフモノフ。後ろ蹴りを腹に当てて左を当てて組む。左で差して組むがその崩しを凌ぐハリス。四つから内無双のハリス。ラフモノフの引き付けての投げを耐えたハリスが体を入れ替える。
金網に押し込み足を踏むハリスにラフモノフは内股! 投げられるハリスだがすぐに立つ。ハリスは左の蹴りを打ち込み片足立ちに。そこにラフモノフはカウンターの右のスピニングヒールキック!
後方にダウンしたハリスにパウンド! 足を効かせていたハリスだが、中腰からのパウンドが長いリーチでしっかり顔をとらえ、ハリスのアゴが上がり、レフェリーが間に入った。ラフモノフは勝利後、両手を“一丁上がり”とばかりに払って見せた。
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アジアからUFCランキング入りしている選手の動向は?
試合後、いつもの毛皮の帽子ウシャンカをかぶったラフモノフは母国の言葉で勝利を熱く語ると、英国人史上初のUFC世界王者マイケル・ビスピンのインタビューに「ファンの皆さんは、僕がいつもフィニッシュしてきたことをよく知っているでしょう。スピニングキックだって狙いを定めていたことだし、それ以外の、グラウンドを含めたあらゆる準備を整えてきてる。今は、15勝無敗になったことに神に感謝してる」と語った。
また、試合後の会見では、出稽古先のフロリダサンフォードMMAコーチのヘンリー・フーフトと母国DARコーチのバヤン・ザンガロフに感謝の言葉を述べ、次戦についてもランキング外の強豪を指名している。
「ヘンリー・フーフトは『君の方が優っているから、自分らしくいけ』とだけ言ってくれた。対戦相手はタフだけれども、世界一のチームで試合に臨んだから、自分は勝てると確信していた。今夜はヘンリーと、自分自身のコーチのバヤン・ザンガロフの戦略によるもの。トップを目指すためにハードなトレーニングをしているのだから、対戦相手がトップ10だろうがトップ15だろうが構うことはない。もしあえて誰か名前を挙げろというなら、ミシェル・ペレイラ(※4連勝中)だ。彼は僕のチームメイトのアンドレ・フィリョとやったからね(と言ってニヤリと笑う)。次は夏くらいだろうけど、あまり焦ってやりたくはない。チームメイトのほうがその点ではプロだから、まずは帰って、勝利の余韻に浸り彼らに任せて相談する」
また、ランキングについて問われると「タイトルを獲るためにやってきたのだから、トップ10とか15とかは関係ない。目指すところはあくまでタイトルだ」と、現在カマル・ウスマン(ナイジェリア)が持つベルトを目指していることを語った。
実はシャフカト・ラクフモノフの実妹のソラもMMAファイター(2勝1敗)。兄からは「そんなにやりたいならサポートする。ラクモノフの名に恥じぬように戦え」とアドバイスを送ったという。
大会前日には、日本の平良達郎(22歳)が、UFCフライ級に参戦を決め、アジア人男子初のUFC世界王者を目指すことを表明しているなか、果たして、誰がその栄冠を勝ち取るか。
女子ではジャン・ウェイリー(中国)が、2019年8月に東アジア人史上初のUFC世界王者に輝いている(※2021年4月に女子ストロー級王座陥落)が、現在のところ、男子でUFCランキング入りしているのは、下記4選手のみ。ここに、15戦無敗のラフモノフも名を連ねてくるだろう。そして同じUFCウェルター級にはサンフォードMMAで練習仲間の佐藤天もUFCとの契約更改を決めている。今後の動向に注目だ。
◆UFC男子アジア大陸選手ランカー
フェザー級4位ジョン・チャンソン(韓国・34歳)17勝6敗※4月9日「UFC 273」で王者ヴォルカノフスキーに挑戦
ライト級11位ハファエル・フィジエフ(キルギス・28歳)※2月19日にドスアンジョスと対戦
ウェルター級13位リー・ジンリャン(中国・33歳)18勝7敗※2021年10月にチマエフに一本負け
フライ級13位ス・ムダルジ(中国・26歳)14勝4敗※4月23日にケイプと対戦
バンタム級14位ソン・ヤドン(中国・24歳)18勝5敗1分1NC※3月12日にマルロン・モラエスと対戦