2022年1月10日(月・祝)、今成柔術主催の「IRE vol.6」が開催され、RIZINバンタム級トーナメントにも出場した倉本一真(修斗GYM東京)が、オープンフィンガーグローブより効く「掌底」でTKO勝利した。
ノーポイント&サブオンリー(絞めや関節技による一本決着)とグラウンドでの掌底有りのルールで、オーバータイム(延長戦)では、互いに、50/50かサドルロックの足関節の状態を選択して極めかエスケープを競う「今成コンバット柔術ルール」で行われた同大会。
セミファイナルでは、修斗・RIZINで活躍するMMAレスラーの倉本一真(修斗GYM東京)と、ピュアグラップラーの寒河江寿康(今成柔術)が対戦した。
倉本は、元グレコローマン60kg級全日本選手権3連覇。ジャーマンスープレックスの使い手で、修斗のケージMMAでも投げでTKO勝ちをマークしている。RIZINでは、2020年大晦日に中原太陽にサッカーボールキックでTKO勝ち後、2021年6月のバンタム級GPでアラン“ヒロ”ヤマニハに判定負けした。
ケージ使用の今大会で、いかに「投げて叩く」動きを、掌底ありの今成コンバット柔術ルールで見せるか。
対する寒河江は、天下一品の関節技を持つグラップラー。あえて立つ必要もなく、手足をからめに行くか。得意の足関節のみならず、腕十字&三角絞めと、どのポジションからでも極めに行くことが可能だ。寒河江は8月の「IRE」の-70キロトーナメントで優勝し、パウンドとも異なる掌底ありルールを経験済み。
投げのディフェンス、対策を練ってきてるであろう寒河江の関節技狙いに対し、倉本はいかにケージで潰して、パウンドのごとく掌底を叩いて、それを嫌ったところを投げられるか。Me,Weでの出稽古で山崎剛代表のもと、強豪グラップラーの米倉大貴や岩本健汰らとも練習を積んでおり、ケージ掌底ありのなかで易々とは極めさせないだろう。1R7分の中で、どちらが削り、どちらが極めをセットアップするか。
▼セミファイナル 63kg契約(前日計量)1R7分
○倉本一真(修斗GYM東京)
[1分58秒 TKO] ※ドクターストップ
×寒河江寿康(今成柔術)
スタンド打撃ありのMMAとは異なる前傾姿勢──レスリングの構えで向き合った倉本。寒河江もいきなり座らずにスタンドに挑む。
ケージに押し込んで、頭を寒河江の首下につけて固定させると、一瞬、右ヒザをマットつけてグラウンド状態(選手のどちらかの足の裏以外がマットについた状態)にして右手の手の底を寒河江の顔面に!
立っている寒河江は思わぬ打撃を喰らい顔をしかめる。すぐにレスリングの腕取りで、寒河江の左腕を両腕で掴み押し込み、今度はヒザを瞬時にマットに着いて左の掌底2発! アッパー掌底をもらった寒河江。
さらに腕取りで右肩で押し込み倒す倉本は、足を取りにくる寒河江にがぶり、サイドバックにつくと「足を触らせるな」という山崎代表の指示通り、足関節を防ぐために後方に置くと、寒河江は掌底を嫌ったか、すぐに立ち上がりを選択。
その首を抱え、引き落とす倉本は、片手で頭を押さえ、自身の頭で寒河江の腰を押さえつけコントロール。
亀の状態の寒河江を左手と頭だけで金網に釘付けにして空いた右手をアッパー気味にかち上げ、寒河江が頭を抱えるとさらに右で腰を抱いてサイドバックに。掌底を突いていく。
足を手繰れず前転してヒップアタックする寒河江は何とか足を効かせてガードに持ち込むが、そこで鼻血と右目を大きく腫らした寒河江にドクターチェック。
試合続行は不可能で、1分58秒、ドクターストップで倉本が勝利した。
ケージのなかで倉本は、「寒河江さんのおかげでいい試合が出来たと思います。掌底を練習してきたし、投げたかったんで、もうちょっと試合したかったです。また機会があれば。それと、僕はMMA選手なのでRIZIN、修斗で勝ち上がりたいと思います」と挨拶した。
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みんなはビンタですけど、自分のは痛いやつです
試合前、「素手の掌底は手の付け根を使えば、オープンフィンガーグローブのパウンドより効きますよ。顔がぺちゃんこになりますよ」と語っていた倉本。
試合後の本誌のインタビューでは、「僕は、このルールでも“MMA”をやろうと思って戦いました。絶対に相手の得意な足関節をやらせないように足は触らせない。レスリングでは得意な腕取りをして、がぶり、足関節を取られない形で叩く。掌底はハマればヤバいと思っていました」と、倉本のケージMMAを「今成コンバット柔術ルール」にアジャストして戦ったという。
セコンドの山崎剛代表も、「相手のアップの動きも見て、これは出来るなと思ったことをやってもらいました。スタンドレスリングでもサイドバックでも身体の位置を決めて崩し方がハマった。
ルールによって身体の位置は異なります。今回はグラウンドで殴れるけど蹴り上げは無かった。それによって頭をどこに置くかなどが異なるので、その構えは意識してやってきました」と、場面場面で、どこに頭や手足を置くか、を決めていたと語る。
「あとほかの選手の掌底を見て、倉本は違うのが打てると分かっていました」と、片ヒザを着いての掌底、さらにサイドバックでの上下からの掌底などが、練習してきたものだと明かした。
倉本も「みんなは“ビンタ”ですけど、自分のは痛いやつです」という。さらに、その先も倉本は用意していた。
「タイミングあれば投げてやろうと思っていて、相手も亀になっていたので投げようと思いましたが、その前に終わってしまって」と笑顔を覗かせる。
今後を問われ「僕はMMA選手なのでRIZIN、修斗で勝ち上がりたい」と答えた“投神”。“掌底王”の肩書きも加わった倉本の次なる試合はいつになるか。
なお、今大会のプロデューサーを務めた、グラップラーの高橋SUBMISSION雄己は、「寒河江さんは座り込まず立ち技勝負に行った。結果、そこでも打撃を食らった。グラウンドでも掌底であれだけ衝撃を与えられるんだと見ている人に伝えられたと思います。MMAの上手い人のパウンドともまた技術が異なる。掌底の打ち方をもっと研究できれば、このルールへの興味もさらに増してくると思います」と語っている。